プレミアリーグ、トッテナム・ホットスパーに所属するDFエリック・ダイアー。かつて同クラブを率いたマウリシオ・ポチェッティーノ監督に激しさを求められるフットボールを表現していく中で実力を発揮し、イングランド代表に選出されるまで上り詰めた。
そんなダイアーだが、見た目からも分かるように「アニキ的存在」としても親しまれていること、また実はリバプールファンに好かれている背景などはご存知だろうか。ダイアーにまつわるハートフルなエピソードを3つご紹介したい。

ピッチ外のアクシデントに冷静に対応
2021年10月18日プレミアリーグ第8節、ニューカッスル対トッテナム。ニューカッスルの新オーナーがクラブ買収後セント・ジェームズ・パークに初めて顔を出したこの試合で、スタンドにいた観客が突然倒れ試合が一時中断される事態が起こった。
"Early CPR and chest compressions, and early defibrillation is what saved this man."
— Sky News (@SkyNews) October 18, 2021
Dr Tom Prichard describes the moment he helped to save a fan who suffered a cardiac arrest during Newcastle's game against Tottenham on Sunday.
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トッテナムDFセルヒオ・レギロンがいち早くスタンドの一部始終を主審に報告。スタジアムが騒然となる中、ダイアーはピッチ外にいるスタッフに自動体外式除細動器(AED)を持ち込むよう働きかけ、スタッフは倒れた観客の元へピッチを横断しながら向かった。
彼らの適切な行動が功を奏し、スタンドで倒れた観客は見事に意識を取り戻した。周囲への配慮を忘れないレギロンやダイアー含め、ピッチにいたメンバー全員に賛辞の声が上がっている。

マン・オブ・ザ・マッチはトイレ!?
2020年9月30日カラバオ・カップ第4ラウンド、トッテナム対チェルシー。ロンドンに拠点を置くクラブ同士の重要な試合でダイアーはとんでもない行動に出る。試合は19分にティモ・ヴェルナーによってチェルシーが先制。巻き返しを図りたいホームチームだったが、スタートから出場していたダイアーは後半途中に突然ピッチから離れトイレへと向かった。
なんとお腹を壊したのであった。
Jose Mourinho was NOT happy when Eric Dier ran to the toilet during the match
— Goal (@goal) September 29, 2020
So he ran after him! #TOTCHE
@DAZN_CA pic.twitter.com/WBaEn2hK11
ダイアーがトイレ中、チェルシーには決定機が訪れたもののシュートは枠外へ。何とか先制点以上の失点と、自身の失禁を無事免れることができた。私たちの想像を裏切るような豪快な行動ができるというのもアニキに求められる人物像なのかもしれない。試合はPK戦の末、トッテナムが勝利を収めた。

すべてのイングランド人が望んだタックル
2018年10月16日UEFAネーションズリーグ第4節、スペイン対イングランド。イングランド代表としてスタメン出場を果たしたダイアーは男気溢れる行動に出る。前半12分相手陣内でボールを保持するスペイン代表セルヒオ・ラモスに対して、数メートル先から猛ダッシュで向かい強烈なスライディングを仕掛けたのだった。もちろん正当なタックルとは言えず、イエローカードをもらいスタジアムは大ブーイングに包まれた。
しかし、この単なる悪質な愚行とも言えるかもしれないプレーに対して、不思議なことに「よくやった。清々しい」とファンは大いにダイアーを称賛したのだ。
Therefore three years to the day since Eric Dier's tackle on Sergio Ramos pic.twitter.com/R6OPW9UIHD
— Michael Hincks (@MichaelHincks) October 15, 2021
この試合の数ヶ月前に行われた2017/18チャンピオンズリーグ決勝。リバプールは14年ぶりとなるビッグイヤー獲得に向けてレアル・マドリードとの対峙に意気込むも、試合は思わぬ形で劣勢に立たされる。前半30分にチームのエースであるモハメド・サラーが負傷退場したのだ。
その負傷の要因がセルヒオ・ラモスのラフプレーだった。ボールを追うサラーの右腕をラモスがロックし、そのままサラーはピッチに倒れ込んでしまった。肩を痛めてピッチを去るサラーの目は涙に溢れていた。もしラモスの悪質なプレーがなければリバプールは勝利していたかもしれないと、リバプールファンのラモスに対する因縁が生まれたのだった。
そんな背景があった中、ダイアーの豪快なラモスへのスライディングはリバプールファンの報われない想いを一変してくれるようなプレーだったのだ。決して褒めることはできないものだが、ウィットに富んだ国民性を映し出すイギリス人にとってはたまらない出来事となった。