サッカー日本代表は11月11日、2022FIFAワールドカップカタールのアジア最終予選でベトナム代表と対戦。スコアは1-0で勝利した。
試合の2日前、9日に合流予定だった欧州組の11人の日本代表選手達。しかしチャーター便のトラブルに見舞われ、給油地のロシアで約10時間の足止めを食らったのである。本来ならば約15時間で着くところを、今回はプラス10時間。選手によっては移動時間が丸1日を超え、その面々は前日練習のみで試合に挑まなければならなかった。それを考えると、満足はできなくとも納得できる結果だったのではないだろうか。
スターティングメンバー、試合内容
10月のオーストラリア戦に引き続き、日本は4-3-3のシステムでこの試合に入った。GKは権田修一(清水)。DFは右から最終予選初出場の山根視来(川崎フロンターレ)に、吉田麻也(サンプドリア)、冨安健洋(アーセナル)、長友佑都(FC東京)。MFはアンカーの位置に遠藤航(シュツットガルト)、インサイドハーフに守田英正(サンタクララ)と田中碧(デュッセルドルフ)。
オーストラリア戦との最大の違いは、中盤左に入った守田のポジショニングだった。ビルドアップ時に左サイドの引いた位置に入り、SBの長友を押し出す。本来その場所にいる南野がやや中央に寄ることで、左サイドで数的優位を作りボールを落ち着かせることに成功。システム上は中盤の右、試合中はトップ下にも近いポジションを取っていた田中碧は相手の間に立つことでボールを引き出していく。左サイドで組み立てて右サイドへと展開することで、圧倒的なスピードを持つ伊東が前方にスペースのある状態でボールを受けられていた。
ベトナム代表は5-3-2のシステムで、長いボールを使い2トップにボールを集めようとしていた。しかし歴代の日本代表でもNo.1の安定感を誇るCBコンビの吉田、冨安がシャットアウト。グラウンダーのパスで繋ごうとしてきた場合には中盤の3人、特に遠藤の鋭い読みで自由にさせず。前半17分に生まれた1点にとどまってしまったが、出場した選手たちはしっかりと役割をこなした。

改善すべき点
とはいえ、最大の懸念材料は払拭されていない。森保一監督の選手起用における柔軟性の無さは、この試合でも露呈してしまった。海外組のコンディションに不安があったのだから、国内組をもう少し起用するなりベンチに入れるという手もあったはずだが、結局のところは山根を除いていつものメンバー、いつもの選手起用。
17日に行われるオマーン戦までを見据えての起用法だと思いたいが、だとするとコンディション的にも相手の実力的にも逆ではなかったか。ベトナム戦は選手達の頑張りで乗り切った。だが、チームマネジメント、そして変化に乏しいことによる代表人気という点で、いまだに不安感は拭えていない。
採点(及第点5.5)寸評
GK:12:権田修一:採点5.5
仕事は多くなかったが、ボールが来た際には冷静に対応。ベトナム代表に隙を見せなかった。
DF:2:山根視来:採点6.0
最終予選初出場。序盤は固さも見られたが、時間の経過とともに安定。積極的な攻め上がりで攻撃にも関与し、大きなチャンスをしっかりといかした。
DF:5:長友佑都(62分OUT)採点5.5
守田が左に流れてきたことで高い位置取りが可能に。ただ、リーグ戦でやや不安定さが目立っていたためか、ポジショニングの割に卒のないプレーに終始した印象。
DF:16:冨安健洋:採点6.5
ベトナムのロングボールに適切に対応。弾くだけでなく味方に繋ぐこともできていた。ビルドアップ時には積極的にくさびを打ち込み、攻撃のきっかけを作った。
DF:22:吉田麻也:採点6.5
冨安と共に高さと強さで上回り、ベトナムの攻撃を封じた。コンディションには不安もあったはずだが、それを感じさせず。頼れるキャプテンだ。
MF:6:遠藤航:採点6.5
中盤が3人でも不安を感じさせないのは彼の存在が大きい。球際の強さ、読みの鋭さでカウンターを狙うベトナム代表を自由にさせず。
MF:10:南野拓実(62分OUT):採点6.0
先制点の場面では荒れた芝にも冷静かつ正確なパスでアシストを記録。大きな仕事をした。だが、それ以外ではやや存在感が希薄だった。
MF:13:守田英正(87分OUT):採点6.5
この試合の戦術上のキーマン。コンディションに大きな不安を抱えた試合で、左サイドに流れてボールを落ち着かせた。その分狙われることもあったが、デュエルの部分でも怯むことなく戦った。
MF:14:伊東純也:採点7.0[MAN OF THE MATCH]
圧倒的なスピードで右サイドを制圧。先制点の場面ではスプリントでマークを外し、貴重な先制点を決めてみせた。2点目かと思われた場面でも個のスキルと豪快なシュートでネットを揺らす。試合後に足を気にしていたことが気がかり。
MF:17:田中碧(74分OUT):採点6.0
細かなポジショニングの修正を繰り返しボールを引き出し続けた。攻守の切り替えも速かったが、セットプレーのキッカーとしては改善の余地あり。
FW:15:大迫勇也(74分OUT):採点5.5
先制点に繋がったポストプレーはさすがだが明らかに本調子ではなく、本来のキープ力からは遠かった。復帰したばかりということを考えると責めるのは酷か。
途中出場
MF:18:浅野拓磨(62分IN):採点6.0
交代直後は中央で受けロストする場面もあったが、その後は何度も背後のスペースを突き、ベトナム代表を苦しめた。以前よりもプレーの幅が広がっており、確かな成長を示した。
DF:20:中山雄太(62分IN):採点6.0
クロスの精度は欠いたが、裏に抜ける浅野を狙ったボールは正確。リードしている状況での投入だったが、守備だけでなく攻撃にもしっかりと関わる。
MF :7:柴崎岳(74分IN):採点6.0
安定したプレーを見せ、抑えの効いた惜しいミドルシュートを放つ。キッカーとしても、一定の可能性を感じさせるボールを供給した。
FW:11:古橋亨梧(74分IN):5.5
スピードと守備時の豊富な運動量で惜しい形を演出したが、自身としては決定的な仕事はできず。連携が向上すれば間違いなくもっとやれる選手だが。
MF:8:原口元気(87分IN):採点なし
サイドも中盤もできる貴重な存在。スコアを動かすことなく、しっかりと試合を終わらせた。
監督:森保一:5.5
試合としてはエンタメ性は低かったが、ピッチ外のアクシデントにも冷静に対処。スコアこそ1-0だが、危なげなく最大のノルマであった勝ち点3を獲得した。課題は試合が始まる前の部分。