2022明治安田生命J2リーグにて、最高のスタートを切って首位につけていた横浜FCが、急激に勢いを失って正念場を迎えている。そしてこの低迷は、同クラブのエースFW小川航基の成績に連動しているかのようだ。

小川は開幕から10試合で10得点と爆発的な得点力を示し、J2得点ランキングの首位に浮上。現在もトップを維持するも、チームの不調と同じくして第11節から無得点が続いた。再びのゴールラッシュで小川はJ2得点王を目指し、また首位から転落してしまった横浜FCは復調なるだろうか。

横浜FC小川航基、J2得点王へ向けかかる期待。再びゴールラッシュなるか

2022シーズン最高のスタートと急ブレーキ

横浜FCは2022シーズン開幕から僅差の試合をものにし続け、開幕4連勝。10試合を8勝2分と駆け抜け、首位を快走した。その間、小川は3つの決勝ゴールを含め10得点と、この上ないほどの滑り出しに成功していた。

ところが4月23日の第11節から3戦連続ドローとなった横浜FCは、第14節ロアッソ熊本戦(5月4日)に0-1で敗れ今季初黒星を喫すると、それを含む4試合で1勝3敗。

一時は独走に近い形だった首位を明け渡してしまう。特に上位決戦となった第17節のアルビレックス新潟戦(5月21日)では0-3の完敗を喫した。

小川もまたチームの不調と時を同じくして得点が取れなくなった。3-4-2-1という横浜FCのシステムにおいて、1トップのプレーぶりは結果に直結する。守備の安定も欠かせないが、勝利を積み重ねていくために小川の活躍は極めて重要だ。

横浜FC小川航基、J2得点王へ向けかかる期待。再びゴールラッシュなるか

エースの得点で負のスパイラルを断ち切れるか

小川はここまで、第14節の熊本戦を除いた全ての試合にスタメン出場し、全試合に出場している。また得点のペースこそ落ちたものの、全ての試合でシュートを打てている。

紙一重の場面も作っている。決して、プレーが極端に悪くなったわけではない。

横浜FCのチームとして攻撃のバリエーションの乏しさは気にはなるが、サイドや後方の選手の突破力やクロスの精度をシンプルに使えているともいえる。ボールを持った選手はまず最前線の小川を見る意識があるため、1つ決められればもう一度量産体制に入る可能性は十分だ。

個々の軽率なミスや守備の強度不足によって失点が急激に増えていることもあるが、不調に陥っているからこそこういった失点が増加しているともいえる。負のスパイラルに陥るチームは多い。

これを断ち切るためにも、開幕直後のようにエースの得点で勝利し自信を取り戻したい。

横浜FCのFW陣は小川の他にも、サウス・ミネイロ、クレーべ、伊藤翔、渡邉千真などJ2屈指の陣容を誇る。その中でほぼ全試合にスタメン出場している小川は、四方田修平監督からの信頼が厚いことは間違いない。その信頼に応え、もう1つ階段を登りたいところだ。

横浜FC小川航基、J2得点王へ向けかかる期待。再びゴールラッシュなるか

アップダウンの繰り返しだったキャリア

小川のキャリアは、大幅なアップダウンの繰り返しだった。U-18世代から日本代表のエースであり続けたものの、2017年のU-20ワールドカップで、左ひざの前十字じん帯断裂および半月板損傷の怪我という大怪我を負ってしまう。

長期のリハビリを経て復帰し、2019年のトゥーロン国際大会ではメキシコやブラジルという強豪から得点。

さらにこの年には国内組で構成されたEAFF E-1サッカー選手権で初のフル代表に選出され、香港戦で3得点。ハットトリックを記録した。

ところが昨2021年は、所属先のジュビロ磐田で最終的にはJ2得点王に輝いたルキアン(現アビスパ福岡)にポジションを奪われ、小川はリーグ戦で1得点止まり。それが響いて、東京オリンピックのメンバー入りを逃している。

今2022シーズンからは心機一転、横浜FCという新天地でリーグ開幕から得点を重ねてきた。困難を乗り越えた小川はこんなところで終わる器ではないはずだ。

7試合無得点が続いたといえ、スタートダッシュによって得点ランキングトップに立っている。再び勢いに乗れば、J2得点王の最有力候補だといえる。

横浜FC小川航基、J2得点王へ向けかかる期待。再びゴールラッシュなるか

J2得点王で再び見えてくる日の丸

これまでにJ2得点王に輝いた日本人選手は7名。神野卓哉(当時大分トリニータ)、佐藤寿人(当時サンフレッチェ広島)、香川真司(当時セレッソ大阪)、ハーフナー・マイク(当時ヴァンフォーレ甲府)、豊田陽平(当時サガン鳥栖)、大黒将志(当時京都サンガ)、大前元紀(当時大宮アルディージャ)と錚々たる面々が名を連ねている。そして全員が、日本代表に選出された経験を持つ。

小川もすでに日本代表を経験しているとはいえ、まだ1試合のみだ。

小川が試合数を増やすチャンスは、まだまだある。着実に個々の強化が進む日本代表において、FWだけは主軸が定まっていないためだ。2列目に強力な選手を揃えているため、得点力に加え周りを使える選手が求められているがハマる選手がなかなか現れない。自らの得点はもちろんポストプレーも巧みな小川は、タイプとしては当てはまる。

J2で大きな活躍をみせたとしても、すぐに日本代表とはならないかもしれないが、候補の1人にはなるはずだ。日本人の大型FWは、前述した豊田など年齢を重ねてから大きく活躍するケースが多い。複数の苦しみを乗り越え心身ともに逞しくなった186cm、24歳の小川が、今季さらなる活躍をみせチームを昇格させられたとしたら。それをきっかけに「イメージしていたキャリア」へと近付けられるのではないだろうか。期待は高まるばかりだ。

なお、本記事執筆後のJ2第18節いわてグルージャ盛岡戦(5月25日)で、小川は8試合ぶりの得点を挙げた。結果は3-1で横浜FCが勝利している。