9月3日、茨城県立カシマサッカースタジアムで行われた明治安田生命J1リーグ第28節の鹿島アントラーズVS浦和レッズ(2-2)は、対照的な両チームによる1戦となった。

ホーム鹿島(現在4位)の近況としては、8月8日にレネ・ヴァイラー前監督の退任を受けて、岩政大樹監督が就任。

監督交代後はリーグ戦を1勝1敗1引き分けと、なんとも言えない結果を共にしている。

一方の浦和は、リーグ順位こそ中位(現在9位)ではあるが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)で勝ち上がり、8月25日に行われた準決勝では全北現代モータース(韓国)を相手にPK戦の末の劇的な勝利で勢いに乗っている。

ここでは同試合の内容を、J1王者になることを視野に入れる鹿島の視点から細かく見ていこう。

J1リーグ第28節、鹿島VS浦和【試合分析】鹿島は王者になれる?

立ち上がりから鹿島の良さと悪さ

同試合では前半2分早々に、鹿島のMF樋口雄太によるシュート。さらに前半5分、浦和のMF松尾祐介によるシュートと、両チームによるシュートがあった。立ち上がりから早速、鹿島の今2022シーズンの良さと悪さがでたシーンとなった。

鹿島の良さとは樋口のシュート時に見られた「コートをワイドに使った攻撃」であり、悪さとは浦和の松尾のシュート時に見られた「ディフェンス陣の脆さ」である。随所に見られる、この良さと悪さにまつわるシーンを解説したい。

J1リーグ第28節、鹿島VS浦和【試合分析】鹿島は王者になれる?

鹿島の王道「コートをワイドに使った攻撃」

前半15分、MFアルトゥール・カイキによって鹿島が先制点を挙げる。そのシーンが上図である。

MF和泉竜司とDF安西幸輝による左サイドで時間を作るプレー、その間ゴール前にFW鈴木優磨とMF仲間隼斗はクロスに対して、走りこむ準備を行っていた。和泉と安西でサイドの上図①エリアを獲得することで、樋口がボールを受けるスペースを空けることと、浦和ディフェンスラインをより下げる効果がある。樋口がボールを受ける前に鈴木と仲間が上図②のスペースを取りに行く。この動きによって、カイキは上図③のスペースを取りに行くことができる。

当然、浦和ディフェンス陣は②のスペースを消しに行かなくては行かず、③のスペースカバーが遅れたことでカイキのゴールが生まれた。

この形は鹿島の王道の攻撃パターンといえる。非常に完成度が高く、鈴木と仲間のランニングは素晴らしいものだ。

J1リーグ第28節、鹿島VS浦和【試合分析】鹿島は王者になれる?

鹿島の弱点「ディフェンス陣の脆さ」

それは前半21分、浦和のDF岩波拓也のシュートから見られた。鹿島は浦和より人数が揃っている(自陣のいる人数が浦和より多い)状態にも関わらず、ボール保持者に対してアプローチ(ディフェンスをするために相手に寄せること)ができていない。

当然、岩波にとって、このゾーンはシュートレンジである。結果として、岩波に寄せ切ることができず、シュートを打たれてしまった。このディフェンスラインの重さこそ、今シーズン鹿島が勝ちきれない、失点数がリーグ戦上位10チームのなかで1番多い(現時点36)要因の1つかもしれない。

J1リーグ第28節、鹿島VS浦和【試合分析】鹿島は王者になれる?

そして上図は、前半29分、松尾による浦和1点目のシーンだ。

鹿島は、浦和MF関根貴大によるペナルティーエリア内への侵入を許す。この時、両チームのペナルティーエリア内にいる選手の人数(鹿島ゴールキーパー除く)だが、鹿島7人に対して浦和5人であった。もちろん、この状況を作った関根の個人技は素晴らしい。

しかし鹿島の選手たちは、これに対してボールを奪いにいくのではなく、シュートのコースを切ることに留まっていた。

また他の鹿島選手たちは浦和選手を捕まえ切れていない。このような状況では、松尾はフリーでボールを受けることができ、MF岩尾憲からのパスを決めることは難しいことではなくなる。

J1リーグ第28節、鹿島VS浦和【試合分析】鹿島は王者になれる?

失点数を減らさないとチャンピオンにはなれない

同試合の結果は2-2の引き分け。2022シーズンの鹿島は、勝ちきれないゲームが多い。それは失点数が理由の1つである。今シーズンJ1リーグにおいて無失点で勝利したゲームは6試合。他は勝利しているものの、失点を喫している。得点数はリーグ4位と好調だけに、失点数を減らすことが今後試合に勝っていく上で1つのポイントになるのは間違いない。

失点数を減らすために策を打つのか、はたまた失点数を上回るためにより攻撃を強化するのか。岩政監督の手腕が見どころである。

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