今2022シーズンも佳境を迎え、全34節中第29節を終えた明治安田生命J1リーグ。サポーターの声援が戻る試合もある中、優勝争い、ACL出場権獲得争い、降格争いと各クラブは熾烈な順位争いを演じている。
一方で、今シーズンのJ1リーグで個々に目覚ましい活躍を続けているのが、個人残留(降格したクラブからJ1クラブに移籍)している選手たちだ。昨2021シーズンは、4チーム降格というレギュレーションの中、J2に降格したチームの主力選手たちの去就は大きく冬の移籍を賑わせた。
ここでは、移籍による個人残留を選び、2022シーズンJ1リーグで大いに活躍する選手たちを5名紹介していく。

西村拓真(ベガルタ仙台→横浜F・マリノス)
若くして海外移籍(2018-2020)も経験しているFW西村拓真。昨2021シーズンはベガルタ仙台でチームトップとなる6得点を上げ、リーグワーストの得点数だったチームなだけに大きな存在感を放っていた。その攻撃面での高い評価もあってか、今2022シーズンは王者への返り咲きを狙う横浜F・マリノスへ完全移籍で加入。横浜FMでは確かな実績と高い人気を誇るマルコス・ジュニオールと同ポジションで比較されながらも、定位置を確保している。
もちろん、攻撃面での活躍は期待通り。特に得点はここまで9得点とチーム2位の数字であり、リーグでも上位につける得点王候補の1人となっている。加えて7月には日本代表にも初選出され、EAFF E-1選手権でも3試合で2得点を上げ持ち前の攻撃センスを見せつけた。現在25歳とまだまだこれからが楽しみな西村。今シーズン残り試合の活躍次第では、再び海外挑戦のチャンス獲得も十分ありうる。

藤田譲瑠チマ(徳島ヴォルティス→横浜F・マリノス)
間違いなく2022シーズン大躍進を果たしているMF藤田譲瑠チマ。徳島ヴォルティスに在籍していた昨シーズンまでも対人強度において高い評価があった。加えて今シーズンはゲームメイクやキャプテンシーといった面でも、大いに成長を見せている。横浜FMに加入以降は、流石は優勝を争うチームと言うべきか、選手層の厚さもあり必ずしもスタメンを確約されているわけではない。
しかし、その中にあってなお出場機会を確保していることから、確実に評価を高めていることも事実だ。その証拠に、6月に行われたU-23アジアカップではキャプテンとして試合に出場し、日本の3位に貢献。さらに7月にはフル代表にも初招集されるなどしている。J1リーグも終盤を迎える中、上位につける横浜FM。若く勢いもある藤田が優勝のキーマンとなるのは間違いないだろう。

岩尾憲(徳島ヴォルティス→浦和レッズ)
2016年から籍を置いた徳島ヴォルティスを離れ、今シーズンレンタル移籍で浦和レッズへ加入したMF岩尾憲。現在浦和を率いるリカルド・ロドリゲス監督とは、徳島時代(2017-2020)にも苦楽を共にした仲だ。当然監督のサッカーに対する理解度も高く、懐刀としてここまで多くの試合でスタメン出場を果たしている。プレイメーカーとしても極めて重要な役割を果たしており、ここまでアシストも6つ記録。まぎれもなく浦和の柱として躍動中だ。
浦和はリーグ戦でこそ思うような順位にいるわけではない。しかし、ACLでは決勝進出を果たしており悲願の優勝まであと1つと迫っている。レンタル移籍という立ち位置ではあるが、個人としてもチームとしても充実している岩尾。レンタル期間終了後の去就も含めて、残りのシーズン注目度の高い選手の1人だ。

松尾佑介(横浜FC→浦和レッズ)
元々は浦和レッズ下部組織出身のMF松尾佑介。仙台大学(2016-2019)と横浜FC(2019-2021)での武者修行を経て、満を持して浦和に戻った今シーズン、その貢献度はかなり高いものとなっている。加入当初は左サイドでのプレーが主となるとも思われたが、最前線での起用も多くチャンスシーンに多く絡む活躍を見せている。得点、アシストともに抜きん出た数字ではないが、持ち前のスピードとドリブル突破を生かしたプレーは浦和の攻撃に間違いなくプラスの要素を加えていると言えるだろう。
そんな村尾は、意外にもここまで日本代表には縁がない。しかし人材不足ともいわれる左サイドの適正を持ち、さらに最前線での起用も可能となれば、今後無視できない存在へとなっていくに違いない。まだ25歳とこれからさらに脂の乗る年齢なだけに、今以上の活躍を期待をしてしまう。

上福元直人(徳島ヴォルティス→京都サンガ)
徳島ヴォルティス(2020-2021)からの移籍先として、12年ぶりにJ1リーグを戦う京都サンガを選んだGK上福元直人。日本人選手の中でも屈指のシュートストップ能力に加えて、相手のロングボールへの適切な飛び出しなど守備範囲の広さが魅力のGKだ。
久々のJ1を戦う今シーズンの京都だが、残念ながら目標は残留という順位にいる。しかしだからこそ経験豊富なベテラン選手であり、ゴールを守る最後の砦でもある上福元の出来が、チームに与える影響は大きい。シーズンも終盤戦を迎える中、あと何度スーパーセーブが見られるのか、また、そのセービングでチームを残留へと導けるのか注目したい。