サッカーは時代と共に戦術のトレンドが変化する。近年では、年々スペースが減少している。
Jリーグも例外ではなく、ディフェンダー(DF)の本来サイドを守備するサイドバック(SB)や中央を守備するセンターバック(CB)に位置する選手のクオリティ(攻撃への関与)が、チームの順位に直結するようになっている。
ここでは、守備の能力はもちろん、攻撃においても大きな役割を果たすサイドバック(あるいはウイングバック)をピックアップ。明治安田生命J1リーグにおける期待の5名を紹介しよう。日本代表経験のない選手から選出しており、いずれも2022FIFAワールドカップ・カタール(カタールW杯)後の代表選出の可能性を秘める選手たちだ。

飯野七聖(ヴィッセル神戸)
2022シーズン前半戦はサガン鳥栖、後半戦はヴィッセル神戸でプレーするMF飯野七聖。ウイングバック、サイドバックをこなし、サイドで圧倒的な存在感を放っている。スプリント回数(時速24km以上で1秒以上走った回数)は636回でリーグ7位を記録。また記録こそされないが長い距離のスプリントも印象的。2019年、国士舘大学からJ3時代のザスパクサツ群馬に加入しスタートしたプロでのキャリアは、ついにJ1においても注目を集めるまでになった。積極的に右サイドを駆け上がるプレースタイルのように、神戸のJ1残留に貢献、そして日本代表という大舞台まで駆け上がるか。

山原怜音(清水エスパルス)
リーグ屈指のキックの精度を持つ清水エスパルスDF山原怜音。2022シーズンJ1第30節終了時点で7アシストを記録。

佐々木旭(川崎フロンターレ)
川崎フロンターレのDF佐々木旭。インターセプト(相手との接触なくボール奪取)数が12回と、リーグ7位。DFとしては、元日本代表DF酒井高徳(ヴィッセル神戸)に次ぐ回数を記録している。ここまで19試合出場(スタメンは17試合)と今回挙げた選手の中では最も少なく、出場数に比例し数字も伸びそうだ。J1・J2の複数クラブが争奪戦を繰り広げた180cmの高さを持つ大卒1年目のサイドバックであり、優勝争い真っ只中にある川崎のチーム内でも確固たる地位を築きつつある。

白井康介(京都サンガ)
J1昇格1年目で、現在懸命に残留争いを戦っている京都サンガ。曺貴裁(チョウ・キジェ)監督のもと1歩も引かないアグレッシブなサッカーを展開しており、1試合平均のスプリント回数(190回)はサガン鳥栖に次ぐリーグ2位。そのなかでもDF白井康介はチームトップ、リーグ3位のスプリント回数(743回)を記録。クロス数もチームトップでリーグ7位(91本)と、右サイドの急先鋒となっている。

志知孝明(アビスパ福岡)
上述の白井康介を上回る、リーグ6位のクロス数(92本)を記録しているのが、アビスパ福岡DF志知孝明。チームが強固な守備ブロックから縦に速い攻撃を志向するため、守備の時間が長い。そのため目立つ機会が多い選手ではないが、その他のスタッツでも安定した数字を記録している。タックル数はリーグ16位タイ(61回)ボール回収数はリーグ34位タイ(77回)。残留争いのタフな試合が続くなか、志知の1対1の強さ、そして終盤に対面する相手を凌駕する豊富なスタミナは、福岡の戦術に欠かせない。

藤井智也(サンフレッチェ広島)
厳密にはウイングバックだが、サイドを語る上で欠かせないサンフレッチェ広島MF藤井智也。リーグトップのスプリント回数を誇り、第30節終了時点で829回。2位の岩崎悠人(サガン鳥栖)に30回以上の差をつけている。またドリブル回数も133回で、こちらもトップ。2位の金子(北海道コンサドーレ札幌)に30回もの差をつける。立命館大学時代に関西学生サッカーリーグ1部でアシスト王とベストイレブンを獲得するなど一気に頭角を現し、プロ2年目。50m5秒台の俊足とスタミナを併せ持ち、広島らしさを体現できる選手だ。