明治安田生命J1リーグ第32節、川崎フロンターレ対清水エスパルスの試合が10月8日に行われた。
川崎(現2位)は主力数名を欠くなか、強力な攻撃陣を持つ清水をホーム等々力陸上競技場に迎え入れ逆転優勝に向けて。
川崎は先制するも、攻撃陣のポジショニングが良く組織された清水に逆転を許す。勝利への望みを繋いだのは、76分MF山村和也のヘディング弾。続く78分も山村が起点となりFW小林悠のゴールへ繋いだ。劇的な川崎の逆転勝利(3-2)に終わった同試合の印象的なシーンを振り返る。

圧力を前からかける川崎
試合開始ともに、清水に対して前線から圧力をかけ続ける川崎。3分、清水のDF原輝綺に対して、川崎FWマルシーニョがチャージ。そこからFW遠藤大弥へつなぎ、FW小林悠のシュート。清水GK権田修一にセーブされたものの、引く気配を一切見せない川崎の姿勢が見られた。

攻撃陣のポジショニングが輝く清水
27分に川崎の先制点を許したものの、清水は攻撃陣のポジショニングが良く組織されていた。それを象徴するのが49分MF白崎凌兵のゴール。FWカルリーニョス・ジュニオのボール奪取の瞬間、すぐさまFW北川航也がセンターから左サイドのワイドへポジションを取り直す。センターではFWチアゴ・サンタナとMF中山克広がポジションを取ることで、川崎のDF谷口彰悟と登里享平は、北川とカルリーニョスまでカバーをすることができない。
上図①のスペースを北川とカルリーニョスが取ることで、②のスペースをチアゴと白崎、中山が使えるようにした。

そうすることで、③のスペースが空く。白崎は③の空いたスペースに軽々侵入することができる。ここまでスピードダウンせずに、攻撃をやりきると川崎も戻りきることができず、MFジョアン・シミッチもお手上げであった。

勝利へ望みをつないだ山村和也のヘディング弾
56分に清水がカルリーニョスのゴールで逆転。川崎に暗雲が立ちこみはじめたが、それを晴れさせたのが76分のMF山村和也のゴールだ。
高校時代から将来を期待され、流通経済大学時代にはA代表に選出されるなど順調な選手生活であった山村。しかし、プロになってからは怪我やポジション争いに苦しみ、満足できる結果を残せていない時期もあった。2019年に川崎加入以降試合出場数はそこまで多くはないが、なくてはならない選手に成長し、豊富な運動量とポゼッション能力でチームを支えている。そんな苦労人が長身と体の強さを活かしたヘディング。思わず解説者も「うぉぉ」と唸るほどのゴールであった。

執念の逆転弾の起点も山村和也
川崎の逆転は78分。川崎の強みであるサイドでの組み立てによる攻撃。FW知念慶が深くに侵入することで、清水ディフェンス陣も自陣方向へ戻る動きをとる。
上図④のスペースでボールを受けると、山村には一番遠くのマルシーニョのランニングと⑤のスペースまでが見えている。マルシーニョも相手にアプローチを受けながらもボールを繋ぎ、小林まで繋いだ。山村のポゼッション能力とパス技術、マルシーニョと小林の泥臭さが生んだ執念の逆転ゴールであった。

川崎の奇跡を信じる者はいるか?
試合前に鬼木達監督が選手たちにこう語った。「奇跡を信じることが大事で、自分たちが信じないとサポーターもついてきてくれない」
試合後のコメントで小林も次のように語った。「自分たちで可能性をなくすのはやりたくなかった」
川崎は選手だけではなく、フロントやサポーター、関係者全員が可能性を信じていることだろう。川崎に残された試合数は3。2022シーズンはどんなフィナーレが待っているか楽しみだ。