イングランド、プレミアリーグの試合を欠かさずチェックをしているサポーターならば、この10月11月の試合で一度は目にしたことがあるであろう「赤いポピーの花」。選手のユニフォームや、試合開始前のモニター映像、サポーターの横断幕など、さまざまな場面で登場している。

現在、同リーグ公式ホームページの「Poppy」というセクションをチェックすると、この赤いポピー入りのユニフォームのオークションが開催(11月12月)されている。今2022/23シーズン全クラブの各試合出場メンバーの着用済サイン入りユニフォームを競り合って購入できる訳だが、リアルタイムで金額は変わり、どのユニフォームがどれほどの最高金額になるかも未知数だ。

しかし、なぜ赤いポピー入りのユニフォームだけが、オークションにかけられるのだろうか?その謎と内容に迫ってみよう!

現在200万円超え!プレミアリーグユニフォームのオークション背景とは?

リメンブランス・デーの象徴

先に少しだけ歴史の話になるが、1914年に開戦となった第一次世界大戦は、1918年11月11日11時に終戦した。その後、毎年11月11日は「リメンブランス・デー(Remembrance Day)」とされ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、南アフリカ等の国々、その他アメリカやフランス、ドイツなどで追悼式が行われている。

終戦と同時刻の11時には、プレミアリーグのスタジアムは勿論、英国内のスーパーマーケットなどの店舗も含め、公共施設内などすべての場所で黙祷が捧げられる。その際、赤いポピーの花が英国を含むフランス・カナダなどいくつかの国々で追悼のシンボルとされ、リメンブランス・デーを含む数週間、亡くなった軍人や元軍人達の家族に対し、様々な場所に赤いポピーの花飾りが設置される。

過去10年間5億円以上の寄付に

2012年からはプレミアリーグでも、選手を含め関係者も、赤いポピーの花が施されたシャツやユニフォームを着用するようになった。そのポピー入りユニフォームは、試合後に選手達が直筆サインをしてオークション販売される。売上金はロイヤル・ブリティッシュ・リージョンという慈善団体を通して、英国王立軍団などの支援活動に寄付される仕組みだ。

プレミアリーグによると、過去10年間のオークションの総額は約335万ポンド(日本円で約5億4940万円 ※1ポンド164円換算)にものぼる。第一世界大戦の出来事が赤いポピーの花と共に語り継がれ、スポーツ界にも大きな影響を残している。

現在200万円超え!プレミアリーグユニフォームのオークション背景とは?

なぜ赤いポピーの花?

ところでなぜ「赤いポピーの花」なのか。その背景には、カナダ出身の医師ジョン・マクレー(マクレー中佐)という人物の存在があった。マクレー中佐は第一世界大戦中の1915年、フランス北部近辺(フランデレン地域)で友人を亡くした直後、戦火によって多くの畑や田園が破滅的な状態となり、その荒れ果てた土壌を見つめた時に、可憐に咲き乱れる赤いポピーの花を発見する。

マクレー中佐はその時に感じた想いを『フランダースの野に』というタイトルで詩に書き上げた(日本でも非常に有名になった詩集)。

数年後、その詩に感銘を受けたアメリカ人女性教授のモイナ・マイケルが、戦争の追悼シンボルを赤いポピーの花にしようと決意。同時期にフランス人女性教師アンナ・ゲランもまた、アメリカ・フランス・英国で赤いポピーを追悼のシンボルとして活用し促進することを呼びかけ、11月11日のリメンブランス・デーに多くの人々がポピーを身に着けることを推進したという。

現在200万円超え!プレミアリーグユニフォームのオークション背景とは?

現時点200万円越えのユニフォーム!

そんなオークションにかけられるポピーのユニフォームの最大の価値は、直筆サインが入ることもそうだが、全て選手が実際に着用をした物ということ。そのため、例えば試合中にスライディングして付いたピッチの土、相手チーム選手との衝突で擦れた跡など、選手の魂がまだ生きたままのユニフォームだということだ。

オークションは11、12月の2ヶ月間開催されており、プレミアリーグ公式ページで新規追加されたユニフォームや落札価格の変動をリアルタイムで確認することができる。お好みの試合から選んでも良し、その時の落札価格で選んでも良し。全世界からのアクセスがありライバルは非常に多いが、一生に一度の自分への褒美として、そして追悼の気持ちと共に落札に挑戦してみるのはいかがだろうか。

オークションの価格変動を見ていると、日本円で400円代からスタートし、ものの数分で数十万円まで跳ね上がる。全てがそうとは限らないが、動きをチェックするだけでも非常に興味深い。現時点(11月13日16:30時点)トッテナム・ホットスパーFWハリー・ケインのユニフォームは、200万円を大幅に上回る価格(2,194,335円)を叩き出している。

12月26日まで休止期間となるプレミアリーグだが、W杯を楽しみながらも続くユニフォームオークションを是非チェックしてみよう!

編集部おすすめ