2023シーズン明治安田生命J1リーグ第4節の全9試合が、3月11~12日に各地で開催された。無敗チームが無くなり、ここまで3勝を挙げているヴィッセル神戸と名古屋グランパスが首位につけている。
なかでも第4節は、昨2022シーズンとは圧倒的に違う迫力のプレーを魅せたチームがある。鹿島アントラーズと0-0という結果になった、現在7位につけているアビスパ福岡だ。昨シーズンJ1リーグを14位で終えたチームだが、いったい今年は何が違うのか、紐解いてみたいと思う。

大幅な戦力補強は無し
2023シーズンに向け福岡は、放出人数が11名、対して補強人数は8名と、人数だけで比較すれば選手層を厚くできたとはいえない補強結果であった。むしろ、2022シーズンのチーム得点数第2位であるFWフアンマ・デルガドとMFジョルディ・クルークスの2選手を失ったことによる攻撃力低下は避けられない状況である。補強はMF井手口陽介(セルティック)やDF亀川諒史(横浜FC)、MF紺野和也(FC東京)らとなった。

好転ポイント1:両ウイングのプレーエリア
福岡のプレーエリアの違いが、2022シーズンと異なる点の1つであり好転した点と言えよう。最も顕著なのが、攻撃時における両ウイングの選手の立ち位置である。昨年は[4-4-2]のフォーメーションをメインに採用していたが、今季は[3-4-2-1]とし、両ウイングの役割を明確にした。

その結果、昨年は図①のエリアから始まっていた攻撃の組み立てが、今年は②の位置から組み立てられている。攻撃時にこの位置でウイングがボールを持つことで生まれるメリットは2つある。
1つ目は、攻撃時に人数を増やせること。第4節の鹿島戦では、右のMF湯澤聖人とMF小田逸稀が何度もペナルティーエリア付近まで侵入したシーンが見られた。2つ目は、守備の開始を自陣から遠い位置でスタートできること。
ただし、この戦術は両ウイングに対してかなりのランニングが求められるため、気温が上がるこれからのシーズンが正念場となるだろう。選手のターンオーバーをうまく使えるか、長谷部茂利監督の手腕が問われる。

好転ポイント2:守備のスタート位置
前述のように両ウイングが高い位置を取ることで、守備のスタート位置をより相手陣地の奥から始めることができていることが、2つ目の好転ポイントとして挙げられる。
この守備のスタート位置を上げるために重要な役割を担っているのは、FWルキアンとMF山岸祐也だ。この2人の守備意識が高くなったことで相手の攻撃コースを限定できており、フリーでロングボールを蹴らせるシーンも少なくなった。リーグ失点数2位タイを記録できている理由である。

鍵を握るMF湯澤とFWルキアン
福岡躍進の鍵を握る2名の選手としては、MF湯澤聖人とFWルキアンが挙げられる。
まずは、流通経済大学時代から体格を生かしたパワフルな守備が持ち味だった湯澤。プロ入り後は各チームでコンスタントに試合に出場を続け、ディフェンスとしてのイメージが先行しがちであったが、流通経済大学付属柏高校時代はサイドハーフであったように元々攻撃が好きな選手であり、プロ入り時のインタビューでは「縦を切られても、縦に行ける(縦へ突破できる)選手になりたい」と語っている。福岡で「攻撃も守備も起点は湯澤」といわれるように、彼の成長は縦へと進んでいく。
もう1人のキーマンFWルキアンは、今季で来日5年目となる2021シーズンのJ2得点王であるが、2022シーズンはわずか4得点と物足りない結果に終わった。福岡への移籍初年度ということでコンビネーション面での不足があったことも否めない。