2022/23シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝が6月11日(日本時間)に行われ、マンチェスター・シティがインテルに1-0で勝利した。
後半23分、シティのDFマヌエル・アカンジが敵陣までボールを運ぶと、ペナルティエリア右隅へ走ったMFベルナルド・シウバにパス。
ここではイスタンブール(トルコ)の地で繰り広げられた激闘を振り返るとともに、シティを苦しめたインテルの戦術を中心に解説する。
![激闘のCL決勝をプレイバック。マンCを苦しめたインテルの[5-2-3]](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FFOOTBALLTRIBE%252F57%252FFOOTBALLTRIBE_272915272915%252FFOOTBALLTRIBE_272915272915_2.jpg,quality=70,type=jpg)
停滞したマンCのビルドアップ
シティを率いるジョゼップ・グアルディオラ監督は、DFジョン・ストーンズをセンターバックではなく右サイドバックとして起用。GKエデルソンや最終ラインからのパス回しの際に、ストーンズが右サイドバックの位置から中盤に上がっていた。
シティの守備隊形は[4-2-3-1]もしくはMFケビン・デ・ブライネを最前線に組み込む[4-2-4]だったが、ストーンズの移動により攻撃時は[3-4-3]に隊形変化。ひし形の中盤の底にロドリ、右のインサイドハーフとしてストーンズが配置された。
基本布陣[3-1-4-2]のインテルのMFハカン・チャルハノール(インサイドハーフ)の背後や周辺にストーンズを立たせ、ここを起点に攻撃を組み立てようとしたものの、特に前半はグアルディオラ監督のこの目論見が裏目に。ストーンズを敵陣に立たせたことで、シティの後方の4人(アカンジ、DFルベン・ディアス、DFナタン・アケ、ロドリ)とアタッカー陣が間延び。[3-1-6]に近い隊形になってしまう場面が多く、ゆえにシティのパスワークが停滞した。
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周到だったインザーギ監督の準備
隊形変化を駆使したシティの攻撃に対する、インテルの守備は的確だった。
シティがGKエデルソンやアカンジ、ディアス、アケの3バックを起点にパスを回そうとするやいなや、インテルは[5-2-3]に隊形変化。エディン・ジェコとラウタロ・マルティネスの両FW(2トップ)と、MFニコロ・バレッラ(右インサイドハーフ)の計3人がシティの3バックの前に立ちはだかり、中央のパスコースを封鎖。シティのパス回しをサイドに誘導したうえで、デンゼル・ドゥンフリースとフェデリコ・ディマルコの両DFがシティの両サイドハーフ(シウバとMFジャック・グリーリッシュ)からのボール奪取を狙った。
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シティの3バックやロドリからの縦パスには、インテルのMFマルセロ・ブロゾビッチとチャルハノールが反応。この2人が自身の背後に立っているストーンズやMFイルカイ・ギュンドアンへのパスコースを塞ぎながら、ロドリに接近する場面も見られた。
象徴的だったのが、前半20分のインテルの攻撃シーン。ここではセンターサークル内でボールを保持したロドリに対し、ブロゾビッチがギュンドアンへのパスコースを塞ぎながら接近。ロドリのパスをシティにとっての右サイドへ誘導し、このボールをディマルコが回収すると、ここからインテルの速攻が始まった。最終的にはブロゾビッチが強烈なミドルシュートを放っている。
後半13分にもブロゾビッチとディマルコの素早い寄せにより、ロドリの横パスとシウバのバックパスを誘発。シウバからのパスをアカンジが後逸し、インテルのFWマルティネスがボールを奪うと、同選手がペナルティエリア内で相手GKエデルソンと対峙。インテルとしては物にしておきたいチャンスだった。
ブロゾビッチとチャルハノールが中盤を駆け巡り、球際での強さも誇示したことで、インテルの守備は強固なものに。シティの隊形変化やパスワークに対する、インテルのシモーネ・インザーギ監督の準備は周到だった。この点は称えられるべきだろう。
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悔やまれるインテルの守備エラー
インテルにとって悔やまれるのは、後半23分に自陣での守備が綻んだことだろう。
ここではインテル陣内でボールを受けたアカンジに対する、マルティネスの守備が遅れている。これに加えチャルハノールの左サイドへのスライドも遅れており、ゆえにアカンジからシウバへのパスコースを塞げなかった。
シウバがペナルティエリアへ侵入したことで、ブロゾビッチとチャルハノールが懸命に自陣ゴール前まで下がったものの、これによりインテルの最終ラインの手前ががら空きに。シティのゴールは、このスペースにロドリが走り込んだことで生まれている。それまで攻めあぐねていたシティにとって、値千金の得点となった。
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ゴセンスが奮闘も及ばず
途中出場のDFロビン・ゴセンスがインザーギ監督の起用に応え、後半終了間際にチャンスメイク。同43分に敵陣ペナルティエリアにおけるシウバとの競り合いを制すると、ブロゾビッチのクロスにヘディングで反応し、味方FWロメル・ルカク(途中出場)にパスを送る。ゴセンスのパスに反応したルカクがヘディングシュートを放ったものの、GKエデルソンに阻まれた。
アディショナルタイムにもゴセンスがコーナーキックからヘディングシュートを放ったが、これもエデルソンの好セーブによりゴールとはならず。13シーズンぶりのCL制覇というインテルの野望は、ブラジル代表GKによって打ち砕かれた。
優勝を逃したとはいえ、インテルが欧州屈指の攻撃力を誇るシティをあと一歩のところまで追いつめた事実は、今後も語り継がれるべきだろう。誇り高きネッラズーリ(黒と青)の来シーズンの飛躍に期待したい。