2023明治安田生命J1リーグ第20節の全9試合が、7月7日と8日に行われた。

同リーグ最下位の湘南ベルマーレは8日、敵地の三協フロンテア柏スタジアムで柏レイソル(17位)と対戦。

1-1の引き分けでこの試合を終えている。

同じくJ2降格の危機に瀕している柏から勝ち点1をもぎ取ったものの、直近のリーグ戦14試合勝ちなしと、苦境から抜け出せていない湘南。ここでは柏戦を振り返るとともに、同クラブがJ1残留に向けて改善すべき点を挙げていく。湘南が新布陣で臨んだこの試合の前半に焦点を当て、言及していきたい。

柏に上回られた湘南の守備。新布陣から見えた課題は【J1リーグ2023】

柏vs湘南:試合展開

前半27分、柏MF椎橋慧也の縦パスに反応したDFジエゴが敵陣左サイドを駆け上がると、ゴール前へクロスを送る。このボールにFW細谷真大が右足で合わせ、柏に先制点をもたらした。

後半開始以降、柏はミドルゾーンや自陣後方で守備ブロックを敷き、湘南の攻撃を受け止める。堅守速攻プランでの逃げ切りや追加点を狙ったが、同32分にDF立田悠悟が湘南FW大橋祐紀を倒してしまう。柏GK松本健太と1対1になりかけた大橋へのファウルが、決定的な得点機会の阻止と判定され、立田にはレッドカードが今村義朗主審より提示された。

第17節横浜F・マリノス戦と同じく、立田の退場で10人での戦いを余儀なくされた柏は、またしてもリードを守れず。

柏に上回られた湘南の守備。新布陣から見えた課題は【J1リーグ2023】

後半アディショナルタイム、湘南のMF小野瀬康介が右サイドへ浮き球を送ると、このボールに途中出場のMF阿部浩之がヘディングで反応。阿部のパスに敵陣ペナルティエリアへ攻め上がった湘南DF大野和成がヘディングで合わせ、同点ゴールを挙げた。

その後も湘南が攻勢を強めたが、勝ち越しゴールは生まれず。

J2降格の危機に瀕しているチーム同士の対決は、どちらも勝ち点3を逃す痛み分けに終わった。

柏に上回られた湘南の守備。新布陣から見えた課題は【J1リーグ2023】

湘南が敷いた新布陣

前半、湘南は[3-4-1-2]の布陣で柏に対抗。かねてより採用してきた[3-1-4-2]と比べ、3センターバックの手前を埋めやすいこの新布陣を敷くことで、自陣への撤退守備を強化する意図が窺えた。

湘南の山口智監督はこの試合終了後の会見(質疑応答)で、新布陣採用の意図を説明。やはり、今季のリーグ戦全試合で失点を喫している自軍の守備の強化が狙いだったようだ。

-形(布陣)を変えて試合に臨み、後半開始からは元の形([3-1-4-2])に戻したと思うが、前半うまくいった部分とうまくいかなかった部分は?

「90分のなかでのゲームプランなので、前半が悪かったから変えたということではありません。失点が多かったので中央(の人数)を多くして後ろが少し重くなるのは覚悟をしながら、あの形で挑みました。後半に関しては0-1だったということもありますし、攻撃のところで前半課題もたくさん出ていたので、それを引き出す策として形を変えました」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。一部省略・補正)

柏に上回られた湘南の守備。新布陣から見えた課題は【J1リーグ2023】

一瞬綻んだ湘南の守備

キックオフ直後から、湘南は[3-4-1-2]の新布陣を基調とするハイプレスを試みる。

FWタリクと大橋(2トップ)が柏のDF古賀太陽と立田(2センターバック)を捕捉したほか、2センターバック間へ降りてボールを受けようとした柏MF戸嶋祥郎を、湘南MF山田直輝が監視。ボールが柏の両サイドバック(MF土屋巧とジエゴ)に渡るやいなや、湘南の両ウイングバック(小野瀬とDF畑大雅)がそこにプレスをかけた。

この湘南のハイプレスに対し、基本布陣[4-2-3-1]の柏は長身FWフロートへのロングパスや、MF椎橋が味方センターバックとサイドバックの間へ降りる形で応戦。試合序盤こそ椎橋は湘南の右ウイングバック小野瀬のプレスに手を焼いたが、アウェイチームの一瞬の隙を突き、決定機を創出した。

柏の先制ゴールは、古賀とジエゴの間へ降りた椎橋の縦パスから生まれたもの。

このときの湘南は最終ラインを下げるタイミングが選手間で曖昧かつ不揃いだったほか、椎橋に対するFW大橋の寄せが遅れ、パスコースを塞げなかった。

センターバックとサイドバックの間へ降り、パスを捌こうとする相手MFに誰が寄せるのか。最終ラインの連係も然ることながら、湘南はこの点を早急に突き詰める必要があるだろう。失点するまでの守備は安定していただけに、悔やまれるワンシーンとなった。

柏に上回られた湘南の守備。新布陣から見えた課題は【J1リーグ2023】

不安定だった湘南の後方でのパスワーク

新布陣[3-4-1-2]の利点は、[3-1-4-2]と比べて3センターバックからのパスコースをより多く確保しやすいこと。[3-1-4-2]では中盤の底の選手を封じられた際のパスコースが乏しく、3センターバックの前に2人のMF(2ボランチ)を置くことでこの問題が改善されるかと思われたが、湘南はこのメリットを活かせなかった。

象徴的だったのが、湘南がGKソン・ボムグンからショートパスを繋いだ前半21分の場面。DF山本脩斗や大野がボールを保持した際、柏のFWフロートとMFマテウス・サヴィオ(左サイドハーフ)の間に湘南MF奥野耕平が立っていたが、ここにタイミング良くパスが供給されず。柏のハイプレスをいなすチャンスを逸してしまった。

ウイングバックがセンターバックとほぼ同列の位置や自陣後方の大外のレーンでパスを受け、相手のプレスの餌食となる湘南の悪癖は、今節を見る限り改善傾向にあると思われる。新布陣の採用により、自陣への撤退守備や後方からのパス回しはしやすくなっただけに、この利点を活かしたいところだ。

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