7月20日に開幕した2023FIFA女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア&ニュージーランド大会は、8月12日になでしこジャパン(日本女子代表)のスウェーデン戦(0-2)を含む準々決勝の熱き戦いを終えた。初めて準々決勝へと進んだコロンビアも、イングランド戦で惜しくも敗退(1-2)となった。
参加32カ国中、準決勝のステージへと駆け上がったのはスペイン(FIFAランキング6位)、スウェーデン(同3位)、イングランド(同4位)、オーストラリア(同10位)の4カ国。現状のFIFAランキング上位に相当する顔ぶれが並んでいる。日本(同11位)とコロンビア(同25位)含め、FIFAランクを覆す「W杯マジック」を目にすることは叶わなかった。
準決勝は、日本時間15日17:00にスペインVSスウェーデン、16日19:00にイングランドVSオーストラリアの試合がそれぞれ行われる。ここでは、準決勝での注目国とそのポイントを紹介しよう。
グループステージでなでしこジャパンに敗北を喫したスペイン(0-4)と、準々決勝で日本を制したスウェーデン(2-1)は、どちらが勝利の切符を手に入れるのか?2022年のヨーロッパチャンピオンであるイングランドを、開催国オーストラリアが抑え込むことは出来るのか?

準決勝1戦目:スペインVSスウェーデン
スペインのここまでの戦績
- グループステージ:コスタリカ戦3-0、ザンビア戦5-0、日本戦0-4
- ノックアウトステージ:スイス戦5-1、オランダ戦2-1
スウェーデンのここまでの戦績
- グループステージ:南アフリカ戦2-1、イタリア戦5-0、アルゼンチン戦2-0
- ノックアウトステージ:アメリカ戦0-0(PK5-4)、日本戦2-1
注目:日本に敗れたスペインと、日本が破られたスウェーデン
スウェーデンはここまで一度も負けなしで駆け上がっており、僅かなチャンスも逃さない粘り強さとスピードが武器。なでしこジャパンがその波に呑まれる姿は記憶に新しいが、準決勝の舞台ではスペインが試合全体を自分たちのペースに持って行けるかがポイントになりそうであり、スペインに期待したい。
スペインは、スウェーデンの抜け目ない攻撃に素早く対処し、強固な守備の隙を見つけてチャンスを作れるか。また、最も避けたいのは、スウェーデンの攻撃から防御することに集中しすぎて結果的にPK戦へと勝負を持ち越す展開。スウェーデンの守護神GKゼチラ・ムショビッチ(チェルシー)のセービング力の高さを考えてもPK戦は回避したいところだ。

準決勝2戦目:イングランドVSオーストラリア
イングランドのここまでの戦績
- グループステージ:ハイチ戦1-0、デンマーク戦1-0、中国戦6-1
- ノックアウトステージ:ナイジェリア戦0-0(PK4-2)、コロンビア戦2-1
オーストラリアのここまでの戦績
- グループステージ:アイルランド戦1-0、ナイジェリア戦2-3、カナダ戦4-0
- ノックアウトステージ:デンマーク戦2-0、フランス戦0-0(PK7-6)
注目:ベストメンバーではない欧州王者イングランド
2022年のUEFA欧州女子選手権(ユーロ)でドイツを破り、ヨーロッパチャンピオンとして今W杯の舞台に立っているイングランド。しかし、ユーロ優勝時に活躍した主要選手MFリア・ウィリアムソン(アーセナル)、FWフラン・カービー(チェルシー)、FWベス・ミード(アーセナル)の3名は怪我のためメンバーから外れ、明らかに万全ではないスタートであった。
その上、今大会デンマーク戦では、MFキーラ・ウォルシュ(バルセロナ)が怪我で途中退場。またナイジェリア戦ではキープレイヤーであるFWローレン・ジェームズ(チェルシー)がレッドカードにより退場と波瀾続き。
実は大会約3か月前、4月12日に行われた国際親善試合で、イングランドはオーストラリアに0-2で敗れている。オーストラリアには女子サッカー界のスーパースターFWサム・カー(チェルシー)がおり、この強豪相手にどんな戦略で再戦に挑むのかが見どころだ。

W杯チャンピオンは単なる「優勝国」ではない
いよいよ8月20日には、スペイン、スウェーデン、イングランド、オーストラリアの中から、最新の世界チャンピオンが決まる。ここで優勝する国は、単に「W杯王者」という肩書きだけに留まらず、女子サッカーをさまざまな角度から世界中に広めるインフルエンサーとしての役割も担うことになるだろう。
国によって課題や状況は異なるものの、サッカー業界にも性別にまつわる問題はまだ多く、平等な環境が当たり前になるまで、しばらく時間を要するだろう。新しいW杯チャンピオンを先頭に、女子サッカー界の活躍と発展が、世界にどんなムーブメントを起こしてくれるのか期待したい。