カンボジア代表の実質監督を務めていた本田圭佑GM(ゼネラルマネージャー)の後任として、カンボジア代表の指揮官に就任したアルゼンチン人のフェリックス・ダルマス監督は、9月にホームで実施する国際親善試合の香港戦(9月7日)およびマカオ戦(9月11日)に向けたカンボジア代表メンバーを発表した。この中には、本田政権で冷遇されていた「カンボジアのメッシ」ことFWチャン・ワタナカ(29歳)が選出されている。

 鋭いドリブル突破と左足の正確なシュートを武器とするワタナカは、かつて東南アジアで最も恐れられたストライカーの一人だった。カンボジアの強豪ボーウング・ケットに所属した2012~2017年に驚異のハイペースでゴールを量産し、得点王2回と年間MVP3回に輝くと、2017シーズンにJ3藤枝MYFCに期限付き移籍し、史上初のカンボジア人Jリーガーとなった。

 しかし、藤枝では出場機会に恵まれず、わずか1試合の出場にとどまり、契約満了で退団。怪我などもあり、徐々にパフォーマンスを落としていき、その後はマレーシアリーグなどを経て、2019シーズンに古巣ボーウング・ケットに復帰。しかし、若手の突き上げなどもあり、この数年は代表から声がかかることがほとんどなくなっていた。

 代表での風向きが変わったのは、やはり指揮官の交代だ。

今年初めに本田GMが退くと、後任のフェリックス監督は初陣となった6月15日のバングラデシュ戦(0-1)で久々にワタナカを招集。1点ビハインドの後半から出場すると、果敢に攻める姿勢を見せて代表再定着に向けアピールした。

 また、今回の招集メンバー27人には、先日カタール2部アル・シャハニアへの期限付き移籍が決まったFWシェン・チャンテア(20歳)も選出されており、カンボジアのファンは新旧エースストライカーの競演に胸を高鳴らせている。