ヴィッセル神戸の初優勝で幕を閉じた2023明治安田生命J1リーグ。1993年に10クラブでスタートしたJリーグも30周年を迎え、現在は3部制で60クラブが所属するリーグへと成長した。
ここでは、そんな白熱のJ1リーグにおいて、特に印象に残った逆転劇10試合を紹介する。

第2節:川崎フロンターレVS鹿島アントラーズ(2-1)
「意地の終盤連続ゴール」
2月17日の開幕戦で、2022シーズン王者である横浜F・マリノスとの直接対決に敗れた川崎フロンターレ。連敗を避けたい第2節だったが、鹿島アントラーズに開始早々の先制点を許す厳しいゲームとなった。さらに後半終盤にはDF山村和也の退場もあり数的不利と絶体絶命の状況に追い込まれる。
しかし、そこで抜群の存在感を見せたのがMF家長昭博だった。セットプレーの流れの中で終了間際の同点ゴールを演出すると、後半アディショナルタイムにはPKを自ら沈めてついに逆転。逆境を跳ね返す活躍でチームに今季初勝利をもたらした。

第5節:アビスパ福岡VS湘南ベルマーレ(2-1)
「千両役者、山岸祐也」
開幕から2勝1分1敗とまずまずの滑り出しでシーズン序盤を過ごすアビスパ福岡は、第5節で湘南ベルマーレと対戦。前半は互いにスコアレスと拮抗した展開となった。しかし、後半なかばに先制点を献上。その後もなかなか得点が奪えず後半アディショナルタイムまでは1点ビハインドの状態が続いた。
しかし、昨季も2桁ゴールでチームを救ったFW山岸祐也が最終盤に湘南へ牙を剥く。まずは見事なボレーで同点とすると、立て続けに狙いすましたミドルシュートで逆転ゴールをマーク。

第6節:川崎フロンターレVS北海道コンサドーレ札幌(4-3)
「壮絶な打ち合い」
第6節、北海道コンサドーレ札幌と川崎フロンターレの1戦は、2023シーズンの中でも屈指の激しい打ち合いとなった。先制に成功したのは札幌。その後30分までに互いが1点ずつ得点する激しい展開となる中、前半終了間際には川崎が立て続けに2点を挙げ逆転に成功した。
ところが後半の序盤、福岡にゴールを許し同点に戻されてしまう。そこから終盤までは互いにゴールを割らせない展開となったが、途中出場したMF瀬川祐輔のゴールで川崎が再び勝ち越しに成功。開始直後から2度のビハインドと後半に入ってからの同点ゴールに屈せず、終盤のゴールで勝ち点3を取り切る川崎の意地が見られたゲームだったと言えよう。

第8節:アルビレックス新潟VSアビスパ福岡(3-2)
「伊藤涼太郎劇場」
今季、6シーズンぶりにJ1へと復帰したアルビレックス新潟。開幕直後こそ4戦負けなしと好調だったが、第5節以降は勝利がないまま第8節のアビスパ福岡戦を迎えた。この日も序盤から流れを福岡に渡す展開となってしまう。早い時間にPKを与え先制を許すと、前半のうちにセットプレーで2点目も献上。苦しい展開で前半戦を終える。
なんとしても早く点差を縮めたい新潟は、今シーズン前半のJリーグを湧かせた司令塔MF伊藤涼太郎が本領を発揮。後半開始早々に鮮やかなフリーキックで1点差に迫ると、アディショナルタイムにはミドルシュートとこぼれ球を押し込むゴールで遂に逆転。

第11節:浦和レッズVSサンフレッチェ広島(2-1)
「アジア王者の底力」
3戦負けなしでホームにサンフレッチェ広島を迎えた第11節の浦和レッズ。好調の勢いに乗っていきたいところだったが、前半をスコアレスで折り返すと後半開始早々に先制を許してしまう。ゲームはそのまま進行。後半も終盤に差し掛かかるころ、ゲームを動かしたのがチームの主軸へと成長したMF伊藤敦樹だった。
まずはエリア内冷静なラストパスでキャプテンDF酒井宏樹のゴールをお膳立てすると、後半アディショナルタイムには同じくエリア内冷静なフィニッシュで逆転ゴールをマーク。劣勢を跳ね返す底力を見せる勝利となった。

第17節:横浜F・マリノスVS柏レイソル(4-3)
「不死鳥、宮市亮」
第17節の横浜F・マリノスは、ホームで柏レイソルと対戦。幸先良く先制し、一時は同点とされるも前半終了間際に再びゴールを挙げ1点リードで折り返す。しかし、後半に入るとペースは柏に。早々に振り出しに戻されるとさらに追加点も許し逆転されてしまう。
だが、相手に退場者が出たこともあり再び攻撃陣が火を噴く。後半アディショナルタイムにエースFWアンデルソン・ロペスのゴールで同点とすると、さらに終了間際には怪我から復帰して間もないFW宮市亮のゴールで逆転。幾多の怪我から不死鳥の如く蘇ってきた宮市のゴールで、昨2022シーズン王者の意地を見せた。

第23節:サンフレッチェ広島VS浦和レッズ(2-1)
「1戦目の借りを返す後半AT弾」
6試合勝利から遠ざかっていたサンフレッチェ広島は、第23節で今季の1戦目(第11節1-2)で逆転負けを喫している浦和レッズと対戦。この日も先制を許すなど嫌な雰囲気が漂うゲームとなった。しかし、夏の新加入選手の1人、FW加藤陸次樹が加入後初ゴールを挙げてゲームを振り出しに戻すことに成功。
その後もDF塩谷司のミドルシュートなどでチャンスを作りながらゲームを進めた広島。最後は途中出場したFWナッシム・ベン・カリファが豪快なゴールで逆転に成功した。今季1戦目の借りを返す逆転劇で7試合ぶりの勝利を挙げた。

第28節:FC東京VSサガン鳥栖(3-2)
「若きニューヒーロー」
4試合勝利がない中でサガン鳥栖との第28節を迎えたFC東京。この日も早い時間に先制点を奪われ、さらに前半のうちに追加点も許す厳しい試合展開となった。しかし、後半開始早々にFWアダイウトンのゴールで1点差に迫ると、立て続けに2点目も挙げてゲームを振り出しに戻す。
そして迎えた後半終了間際、今季ルーキーイヤーながらも多くの出場機会を得ていたMF俵積田晃太に待望の瞬間が訪れる。逆サイドからの崩しの場面、キーパーのこぼしたボールを丁寧に押し込みゴール。自身にとって嬉しいJリーグ初ゴールは、チームを5試合ぶりの勝利に導く価値のある逆転ゴールとなった。

第29節:サガン鳥栖VS京都サンガ(3-2)
「後半ATからの逆転勝利」
実に8試合もの間勝利のなかったサガン鳥栖は、第29節で京都サンガと対戦。前節(FC東京戦2-3)同様に幸先良く先制するも、前半のうちに追いつかれ後半の早い時間に逆転を許す難しいゲーム展開となった。
しかし、終了間際に相手DFアピアタウィア久の退場で数的優位に立つと再びゲームが動き始める。

第32節:アビスパ福岡VSガンバ大阪(2-1)
「帰ってきたストライカー」
YBCルヴァンカップで初優勝した勢いのまま、リーグ戦での連敗脱出を狙う第32節のアビスパ福岡。しかし、序盤に先制点を許すとそのまま前半戦を折り返す展開に。それでも後半に入ると試合を一変させ、今季の好調ぶりをみせた。
まずは後半開始直後のゴールで同点に追いつくと、クロスなどでゴールに迫り決定機を多く作った。そして迎えた終了間際、怪我の影響もあり戦線を離脱していたFWルキアンのゴールで遂に逆転成功。帰ってきたストライカーがわずかな時間で結果を残し、チームに劇的勝利をもたらした。