2023シーズン、クラブ初タイトルを獲得したアビスパ福岡には自慢の個がいる。背番号8を背負うMF紺野和也だ。
ここでは、ルヴァンカップ決勝で2アシストを記録し、クラブの戴冠に多大な貢献をしたドリブラーについて解説する。

紺野和也の来歴
法政大学時代に群を抜いた個をみせていたMF紺野和也。3年次の全日本大学サッカー選手権大会でベストMF賞を受賞すると、後に入団するFC東京だけでなくヴィッセル神戸や北海道コンサドーレ札幌などが獲得に動いていた。ただし、プロになってからの3シーズンは順風満帆ではなかった。1~2年目は合計12試合出場1得点。2年目を迎えた2021年3月には試合中に左膝前十字靭帯損傷の大怪我を負い、長期にわたってピッチを離れざるを得なかった。3年目の2022シーズンに出番を増やし、30試合出場2得点2アシストと数字を伸ばしたものの、スタメン出場は半分以下の13試合。選手としてより成長するため、アビスパ福岡への移籍を決断した。
福岡での1シーズンを終えた段階で、この決断は成功といえるだろう。右サイドハーフやシャドーの一角として主力を担い、29試合出場5得点4アシスト。

飛躍した福岡での2023シーズン
まずは単純に、紺野自身の成長が躍動理由の1つに挙げられる。攻守にハードワークが求められる福岡に移籍したことで、加入当初と比べて守備意識が高まり、自陣に戻って守備をする機会も増加。161cmの小ささを活かしてボールを奪う場面はよく見られる姿だ。また、長谷部茂利監督の存在も影響している。選手の特徴を活かすことに長けている監督であり、その秘訣は約束事の明確化だ。守備に一定の約束事があるのに対し、攻撃では選手に自由を与えている。紺野が得意のドリブルを遺憾なく発揮できているのは「しなければならないタスク」が多すぎないことと関係している。紺野に限らず、現在の福岡の選手には迷いがない。守備の強度さえ示せば、攻撃では好きなプレーを出せる。頭の中はクリアになり、その状態はプレーに表れている。
システムの変更もプラスに働いた。
実際に、昨季挙げた5得点のうち4得点はシャドーの位置に固定されて以降の第28節と第33節で2得点ずつ奪ったもの。なかでも第33節浦和レッズ戦での2得点は、どちらも序盤戦には見られなかった形だ。前半32分の同点弾は周囲と連動したハードワークで相手を追い込み、高い位置でボールを奪ったことで生まれた。後半17分に挙げた決勝点は、相手DFの背後へ飛び出してループシュートを決めたものだった。紺野はサッカー選手としては非常に小柄で、当然、空中戦で競り勝つことは難しい。一般的なサイドプレーヤーとして型にはめるサッカーであれば、ここまでの活躍は難しかっただろう。

新たな仲間との連携
2024シーズンに向け、福岡の攻撃陣は主力が入れ替わった。FW山岸祐也が名古屋グランパスに、FWルキアンが湘南ベルマーレに移籍したことで、昨季のチーム内得点ランキング1位と2位タイの得点源を失った。ルキアンと並んで得点ランキング2位タイだった紺野にかかる期待はより大きくなるが、既存の選手はもちろん新加入のFWナッシム・ベン・カリファやFW岩崎悠人らとの連携に自信を深めているようだ。
さらに、2024年1月22日には一般女性との結婚を発表。「これまで以上に責任と覚悟をもって頑張っていきたいと思います」とコメントしており、良き伴侶を得てモチベーションは高まっている。スペースが減少し独力を示す瞬間が少なくなった現代サッカーで、どんな相手にも果敢に仕掛ける紺野は一段と目を引く存在だ。北海道コンサドーレ札幌との開幕戦は2月24日14時キックオフ。ワクワクさせてくれるプレーを早く見たいものだ。