AFCアジアカップカタール2023(1月12日~2月10日)では準々決勝でイランに敗れ(2月3日1-2)、ベスト8で大会を終えたサッカー日本代表。結果もさることながら、グループリーグから毎試合の失点など課題も残る内容だったと言えよう。
そんな中話題となったのが、今アジアカップ中すべての試合でゴールを守ったGK鈴木彩艶についてだ。対応の難しいボールも多くあったが、はじいたボールを押し込まれるなどして失点に絡んでしまったことからさまざまな意見があがった。一方で、フィードからチャンスを演出するなど見せ場も作っており、個別の評価が難しかったことも確かだ。
しかし今回招集されたGKは、鈴木のほかに、前川黛也、野澤大志ブランドンと、A代表の経験値では少ない選手が多い。それだけに、今なお国内外で活躍を続ける他の選手たちを求める声が多く出ることも当然だろう。ここでは、今後のA代表における正GK争いで改めて注目したい選手たちを5名、アジアカップ招集外となった選手の中から紹介していく。
大迫敬介(サンフレッチェ広島)
アジアカップでは怪我により招集外となった大迫敬介は、今後も間違いなくA代表における守護神争いの中心となっていく存在だろう。2021年の東京五輪では谷晃生に正GKの座を譲ったが、その後は大迫が出場機会を増やし立場を逆転させた形だ。
当然所属するサンフレッチェ広島でも不動の守護神。2023シーズンは34試合に出場し、途中チームとしては失速もあったが3位フィニッシュに貢献していた。GKとしての能力はもちろん、現在A代表の特に守備陣はDF冨安健洋やDF板倉滉を筆頭に東京五輪世代が中心となっていることから同世代の大迫を重宝するのも頷ける。
とはいえ、アジアカップで正GKを任された鈴木彩艶をはじめ、今やGKも世代を問わず海外で活躍する選手が増えている。それだけに彼らが所属クラブで結果を残し続ければ、大迫と言えど守護神の座は必ずしも約束されたものとは言えない。
シュミット・ダニエル(ヘント/ベルギー)
2022FIFAワールドカップ(W杯)カタールの日本代表メンバーの1人であるシュミット・ダニエル。W杯後初の代表戦となったウルグアイ戦(2023年3月24日1-1)と続くコロンビア戦(同年3月28日1-2)でスタメン出場を果たし、それまで守護神を務めた権田修一に代わる存在として名乗りを挙げていた。
しかし、昨年所属していたベルギーのシント=トロイデンから他クラブへの移籍濃厚という状況にあったが、直前に破談。以降チームでの出場が遠ざかっていたこともあってか代表での出場機会も減少してしまっていた。今冬同じベルギーでDF渡辺剛も所属するヘントへの加入が決まり取り戻すも、この間代表では複数の候補がしのぎを削る状況となっており、シュミットも再び熾烈なポジション争いを勝ち抜かなければならなくなった。
とはいえ、国内外のクラブで豊富な経験を持つ32歳のシュミット。権田らが遠ざかっている中においては数少ないベテランのGKなだけに、今後もチームの支えとして代表の座を守り抜いてほしいものだ。
中村航輔(ポルティモネンセ/ポルトガル)
2023年6月、約2年ぶりに代表へ戻ってきた中村航輔。2021シーズンに海外挑戦を果たして以来しばらく出場機会を掴めずに苦労したが、2022-23シーズンからはポルティモネンセで正GKの座に就き柏レイソル時代から変わらないセービング力で最後の砦としての役割を果たしている。
久々の代表試合となった昨年6月のペルー戦(4-1)では、経験値も相まって頼もしさも増した姿を披露。残念ながら昨年9月のトルコ戦(4-2)で負傷して以降は代表活動から遠ざかっているが、間違いなく次のW杯における守護神候補の1人だ。
代表での出場はここまで8試合と意外に少ない中村だが、デビュー戦となったE-1サッカー選手権2017の北朝鮮戦(1-0)で好セーブを連発するなど印象的なプレーは多い。年齢的にも28歳とまさに脂の乗っている時期。
高丘陽平(バンクーバー・ホワイトキャップス/カナダ)
2023シーズンのJリーグ開幕直前に、現在所属するバンクーバー・ホワイトキャップスへの移籍が発表された高丘陽平。これまでA代表への招集はないが、代表での活躍が十分に期待できる選手の1人だ。
かつて所属していた横浜F・マリノスでは2022シーズン、リーグ戦全試合に出場し優勝に貢献。同年のベストイレブンにも選出された。卓越した足元の技術に正確なフィードも併せ持ち、セービン力だけでなく最後方から攻撃の起点としての働きも期待できる。また、ハイラインを敷くDFの背後をカバーできる守備範囲の広さも売りの1つ。ラインを高くすることも多い今の日本代表の戦術に合った特徴を持つことからも、招集されれば活躍は十分見込めるだろう。
バンクーバーへ移籍後も、加入初年度ながら多くの出場機会を得ておりチームからの信頼のほどもうかがえる。能力と国内外における実績から、今後代表での守護神争いに加わってほしい選手の1人であることは間違いない。
小島亨介(アルビレックス新潟)
昨2023年はリーグ30試合に出場し、最後方から久しぶりのJ1へ臨んだアルビレックス新潟を支えた小島享介。10月には残念ながら出場はなかったが日本代表にも選出され、クラブにおける活躍は間違いなく代表を率いる森保一監督に評価されていると言えよう。
高いセービング力はもちろん、足元の技術にも長け安定したビルドアップが可能なことは大きな武器。他の候補と比べてもなお魅力的に映るその武器が代表の舞台ではどう活きるのか、試してほしいと思うファンやサポーターは数多くいるだろう。
現状では、海外組はもちろん国内でもアジアカップメンバーに選出された前川黛也と比較して序列が低いのかもしれないが、クラブでの活躍を見れば早くA代表デビューをと望む声が聞こえても不思議はない。