現地時間8月31日に行われたイングランド1部プレミアリーグの第3節、ブレントフォード対サウサンプトンの試合は3-1でホームチームのブレントフォードが勝利。敗れたアウェイチームのスコアラーとなったのは今夏に加入したDF菅原由勢だった。


リーグ戦開幕から3試合連続で先発出場し、3戦目で初めてフルタイムをピッチ上で過ごした菅原によるこの1点は、今シーズンのリーグ戦でサウサンプトンが手にした初の得点。そんなメモリアルな得点を記録した同選手は、データサイト『WhoScored.com』にてチーム内の最高評価「8.1」を受けている(ブレントフォード戦)。

ラッセル・マーティン監督率いるサウサンプトンは、開幕から3-5-2というフォーメーションを採用。菅原は2列目の右ワイド、いわゆる右のウイングバックで出場している。大外で高い位置や低い位置をとりながら、機を見てインサイドに移るなどしている。スタメンとして起用され続けている菅原の特徴とチーム状況についてスタッツを見ていこう。

菅原由勢が初得点もチームは連敗。英1部サウサンプトンの突出したスタッツとは…

プレミア初挑戦で好スタートの菅原

前述のデータサイトは菅原の特徴として、キーパスやクロスなどを「強み」、空中戦やタックルを「弱み」として挙げている。しかし3試合終了時点のタックル勝率は80%と好スタッツを残しており、守備的な役割を果たしているといえる。クロス供給の多さも目立ち、チーム内ではMFウィル・スモールボーンに次ぐ数を記録。成功率に関しては25%でスモールボーンを上回っている。

その他の特徴として、決定機創出の多さが挙げられる。現時点でのビッグチャンスクリエイトは2回。これはDFだけでなくMF、FWを差し置いてチーム内最多の数字を誇っている。
今夏に新加入し、イングランドの地で自身初のリーグに挑戦中のプレイヤーとしては、好発進といえるだろう。

菅原由勢が初得点もチームは連敗。英1部サウサンプトンの突出したスタッツとは…
菅原の攻守における健闘は確認できたが、今シーズンは昇格組としてプレミアリーグを戦うサウサンプトンは未だ勝利が無い。総得点もわずか1点に留まり、3戦全敗で勝ち点はゼロ。勝ち点ゼロはエバートン(現20位)も同じ状況だが、得失点差でサウサンプトンが降格圏内の19位となっている。

1年振りに戻ってきたプレミアリーグでは苦戦を強いられるということなのか。チームの現状をスタッツで確認すると気になる項目があった。サウサンプトンは第3節終了時点でマンチェスター・シティ(現1位)に次ぐパス数を記録している。1試合の平均パス数は「642」で、毎試合600本を超えている。この「600」という数字は、現時点での記録であり試合ごとに変化する前提ではあるが、実は驚異的な数である。

菅原由勢が初得点もチームは連敗。英1部サウサンプトンの突出したスタッツとは…

上位チームと並ぶパス数が示すものとは

昨シーズン、平均600本を超えるパス数を記録したのはシティとブライトン・アンド・ホーブ・アルビオンのわずか2チーム。一昨年はシティのみ、2021/22シーズンまで遡るとシティとリバプール、チェルシーの3チームだった。このことから、この数字は限られたチームだけが記録できる数値であることがわかる。


第1節のニューカッスル・ユナイテッド戦では、前半に退場者が出たため1人多いサウサンプトンの方が比較的パスを多く試行しやすい環境だったといえる。しかし、退場者が出なかった第2節以降も600本越えをマークし続けており、マーティン監督が多くのパスをつなぐスタイルを貫いていることがうかがえた。

パス数が多いことはボール保持時間の長さにつながる。シュートまで完結させることを意図しているとすれば、シュートを多く打つための手段としてパスを使っていると考えられる。シュートを打つ目的はゴールであり、多くのパスをつなぐチームは相手ゴールに迫るシーンが多いと推測される。

そこでパス数が多いチームはそれだけ得点も多いという仮説を立て、パスと得点の相関関係を検証した。その結果、直近の3シーズンで正の相関を確認することができた。つまり「ゴールが多いチームほどパスが多くなる」ということである。「相関関係」は一方が変化するともう一方も変化する状態を指すだけであり、それだけで2つの事象に因果関係があると判断できるものではない。そのため両記録を結びつけることは難しいが、複数のシーズンで同じ傾向があった。

菅原由勢が初得点もチームは連敗。英1部サウサンプトンの突出したスタッツとは…
しかしながら前述の通り今季サウサンプトンのゴール数はわずかに1で、現時点ではこれまでのシーズンの特徴から外れることになる。シュート数は「42」でリーグ7位と決して少ないわけではないが、決定機逸は「5」で10位となっており、それほど多いというわけでもない。
しかし一方で、比較的低い値を示していたのが「シュート正確性」だった。枠内シュート率「29%」はウェストハム・ユナイテッド、エバートンに次ぐワースト3位である。しかしウェストハムは「19%」で断トツの最下位だが、4ゴールを記録している。

繰り返しになるが、今シーズンはまだ始まったばかりで今後いかようにも変化があり得る。まずサウサンプトンに求められるのは枠内に飛ばすシュートとそれに伴うゴールだ。連続したシーズンで確認できたパスと得点の関係性について傾向をなぞり、最低でもプレミア残留を決めてもらいたいと願うファンは少なくないだろう。
編集部おすすめ