ロナウドは四半世紀を迎えようというプロキャリアの中で、高いパフォーマンスを発揮し続けるためにポジションをコンバートし、プレースタイルを大きく変貌させてきたのである。ロナウドがどのように進化をとげてきたのか、変遷を一緒に追ってみよう。
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デビュー当時は生粋のウインガー
ところで「ロナウドのポジションは?」と聞かれたら、なんと答えるだろうか。「フォワード」あるいは「センターフォワード」と答える人が多いだろう。両方とも正解だ。しかし、それは現在のポジションであり、デビュー当時は生粋のウインガーだった。2002年8月に17歳で母国ポルトガルのスポルティングCPでプロデビューし、翌2003/04シーズンにマンチェスター・ユナイテッドに加入したロナウド。当時ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督は十代の若手ながら即戦力であることを断言し、開幕のボルトン戦で途中出場を果たした。
プレミアリーグでデビュー当時のロナウドは、テクニックとスピードには秀でているが、タックルされると弾き飛ばされることが多かった。イングランドのフィジカルコンタクトの基準はポルトガルと大きく異なっている。ポルトガルではファウルになるようなタックルでも、簡単に倒れるとイングランドでは審判が流す傾向があった。
ロナウドが多用していたシザーズ(またぐフェイント)は、タックルされると身体のバランスを崩しやすいため、対策として使用頻度を減らした。そして、シーズンを追うごとに体つきが大きくなり、持ち前の突破力が生きるようになった。
フィジカルが大きな特徴であるプレミアリーグでキャリアの初期にプレーしたことが、ロナウドの身体的な形成に大きな影響を及ぼしたといっていいだろう。成長するなかで年々、得点数を上乗せしていった。ウインガーとしてのロナウドはユナイテッド(2003-2009)で完成をみた。

転機になったレアル・マドリード入団
次に所属したスペインのレアル・マドリード時代(2009-2018)は、ロナウドにとってプレースタイルの転換期となり、年齢的にもピークを迎えた。マドリードに入団初期はウインガーで、サイドから中央に切り込んでいって得点するシーンが多かった。次第にゴール前に入り得点を狙うストライカーの動きを織り交ぜるようになり、ヘディングシュートも増えた。これが得点が増えた要因だろう。ウインガーだったのが、次第にセンターフォワードでプレーするようになったのだ。
イタリアのユベントス(2018-2021)加入時には、完全にセンターフォワードに変貌していた。

憧れフィーゴとの違い
ロナウドが目標にした選手の1人に同じくポルトガル出身のMFルイス・フィーゴ(2009年引退)がいる。2人は世代が異なるが、スポルティングのアカデミー出身で、レアル・マドリードやポルトガル代表でプレーしたという共通点がある。フィーゴのポルトガル代表での通算出場試合数は127試合は、2016年にロナウドに更新されるまで歴代最多記録だった。2人ともドリブルを得意とするウインガーだ。フィーゴが相手DFの微妙な重心の逆をギリギリのタイミングで突いていくことに長けている一方で、ロナウドは自らのフェイントで相手の重心を崩していく傾向がある。
フィーゴはシザーズを使ってもせいぜい1回で、2回使うことはまれだ。懐深くにボールを持ち間合いを詰めながら何気なくスルスルと相手の間を抜けていく。一方で、ロナウドはアクションが大きくアクロバティックでファンにも分かりやすい。
生涯ウインガーだったフィーゴが身長180cm体重75kgだったのに対して、ロナウドは187cm85kg。身体が大きいというのは、センターフォワードの適性の1つだ。必ずしも長身の必要はないが、味方が苦し紛れに前線に蹴り込んだボールに競り勝ってくれるとチームにとっては有り難いのだ。また、身体が分厚く手足が長いと、相手DFを背負ってポストプレーをする際にボールが奪われにくい。
つまり、ロナウドは一流のウインガーでありながら、センターフォワードとしての適性も兼ね備えていたのだ。

ベテランになりセンターフォワードとしての才能が進化
ウインガーは、主戦場であるサイドを上下運動し1対1の局面で相手の裏に突破していくプレーが多いため、ある程度の走力が求められる。加齢に伴い俊敏性が衰えるのに応じて、ロナウドは身体的な強さを獲得した。プレーエリアがゴールに近い分、生来の得点センスが生かされてさらに得点力が増し、センターフォワードとしての才能を進化させた。そしてポルトガル代表でのポジションも、ウイングからセンターフォワードに移行。こうしてロナウドは全面的なコンバートに成功したのだった。