明治安田J3リーグにて、9月29日のギラヴァンツ北九州戦を3-1で制し、6月16日のAC長野パルセイロ戦(3-2)以来、実に14試合ぶりの勝利を挙げたいわてグルージャ盛岡。しかし翌30日、衝撃的ニュースが駆け巡った。
2024シーズンを以て、運営会社「株式会社いわてアスリートクラブ」代表取締役社長兼オーナー秋田豊氏の今季限りの退任が発表されたのだ。同氏は2020から2022シーズンまで同クラブで監督を務め、2021シーズンにはJ3で2位となりクラブ初のJ2昇格を成し遂げ(翌2022シーズンは最下位22位でJ3降格)、2023年からは監督業を離れて現職に就任している。2025シーズン以降のクラブ体制は未定だという。
2024シーズン残り8試合で19位のYSCC横浜と勝ち点7差の最下位(20位)に沈み、JFL(日本フットボールリーグ)自動降格が現実味を帯びてくるこのタイミングでの発表には、サポーターの間では様々な憶測が流れた。ここでは、盛岡がJFL降格後に待ち受ける悪夢を検証しよう。
秋田氏は、ホームゲームの日には自らスタジアム外のキッチンカーの厨房に自ら立ち、ファンサービスに努めるなどサポーターに愛されたキャラクターだったが、逆の見方をすれば“お飾りオーナー”だったともいえる。秋田氏がクラブを離れた後は、NOVAホールディングス主導で、運営を進めていくと目されている。
ところが、盛岡がJ3からJFL降格となると、経営環境もガラリと変わってくる。
現在、本拠地として使用しているいわぎんスタジアム(盛岡南公園球技場)は収容人員が7000人で、J2ライセンスを満たしていない。それでも新スタジアム建設へ向けての機運は高まっていなかった。
今季から採用されたJ3とJFLとの入れ替え制。
JFLに降格すると、チームに与えられるJリーグからの分配金や、スポンサー収入の大幅減額は必至だろう。J3はDAZNでの配信で放映権料もあるが、それもなくなる。当然ながら、クラブの財政状態は悪化するだろう。アマチュア混在リーグであるJFL降格によるサポーター離れも懸念される。
2023シーズン途中に盛岡に加入した元日本代表のDF西大伍は、開幕スタメン(2月25日カマタマーレ讃岐戦1-1)に名を連ね、前半8分には得点も記録した。しかし2022年の浦和レッズ所属時代には一般女性との妊娠中絶トラブル、さらに今年8月にはYouTubeで「J1のレベルが落ちていると感じる」と発言し炎上するなど、ピッチ外での話題が先行している印象がある。
もう1人の元日本代表選手で、2008-2010シーズンにはスコットランドのセルティックに所属したMF水野晃樹は、2024シーズンほとんど試合に絡めないまま(25節終了時点で出場時間は計66分)、9月29日に今季限りでの引退を発表した。
その穴を埋める補強が必須なのだが、JFLでは待遇やレベルがJリーグに比べて劣るため、移籍を希望する選手が続出するだろう。主力の流出は即チーム力の低下につながり、“ドロ沼”にハマり込む可能性もある。
16チームが所属する全国リーグであるJFLは、アマチュア混在といえどJリーグ昇格を目指す野心溢れるクラブも多く、実力が拮抗している厳しいリーグだ。盛岡はもちろん1年での再昇格を目指すことになろうが、JFLでも成績不振が続いてしまえば、さらに地域リーグへの降格というリスクも生じてくる。地域リーグまで降格してしまうとクラブの存続自体が危ぶまれ、サポーターはもちろん岩手県内のスポーツ熱への低下は避けられない。
第一、JFLに降格したとして、NOVAホールディングスが盛岡の事実上のオーナーであり続ける保証はどこにもないだろう。
同社は、英会話教室事業において、受講料を前金で支払ったにも関わらず授業が受けられないというトラブルが頻出し、結果、前身の株式会社ノヴァは2007年10月に439億円という巨額の負債を抱え倒産に陥った過去がある。投資会社の支援の下、再建を果たしたものの、赤字になると分かり切っているサッカークラブの経営を続けるメリットは同社にはなく、“損切り”される可能性もゼロではないのだ。
JFL降格に伴ってクラブの経営体制に対する批判や内部の混乱が生じ、フロントの責任問題や経営陣の入れ替えなどが考えられ、クラブの組織力やビジョンが揺らぐことにもなりかねない。
これらの要素が重なることで、JFL降格後にはクラブ運営がさらに厳しくなり、Jリーグ復帰への道のりが遠のき、最悪、解散という“悪夢”のような状況に陥るリスクが高まるだろう。
2024シーズンを以て、運営会社「株式会社いわてアスリートクラブ」代表取締役社長兼オーナー秋田豊氏の今季限りの退任が発表されたのだ。同氏は2020から2022シーズンまで同クラブで監督を務め、2021シーズンにはJ3で2位となりクラブ初のJ2昇格を成し遂げ(翌2022シーズンは最下位22位でJ3降格)、2023年からは監督業を離れて現職に就任している。2025シーズン以降のクラブ体制は未定だという。
2024シーズン残り8試合で19位のYSCC横浜と勝ち点7差の最下位(20位)に沈み、JFL(日本フットボールリーグ)自動降格が現実味を帯びてくるこのタイミングでの発表には、サポーターの間では様々な憶測が流れた。ここでは、盛岡がJFL降格後に待ち受ける悪夢を検証しよう。

クラブ運営を進めていくのはNOVA?
そもそも盛岡の筆頭株主は、過半数の株式を保有するNOVAホールディングス株式会社だ。学習塾や英会話学校をはじめ、デサイン会社や飲食チェーンなど、その事業は多岐に渡り、バスケットボールプロリーグのBリーグ「広島ドラゴンフライズ」の運営にも携わるなど、スポーツビジネスにも熱心な企業だ。秋田氏は、ホームゲームの日には自らスタジアム外のキッチンカーの厨房に自ら立ち、ファンサービスに努めるなどサポーターに愛されたキャラクターだったが、逆の見方をすれば“お飾りオーナー”だったともいえる。秋田氏がクラブを離れた後は、NOVAホールディングス主導で、運営を進めていくと目されている。
ところが、盛岡がJ3からJFL降格となると、経営環境もガラリと変わってくる。

JFL降格の場合の悪夢1:財政悪化
盛岡は、2021年にJ2に昇格した際、2025年6月までにJリーグにスタジアム基準を満たす整備計画書を提出し「特例措置」が適用されたことで、2031シーズン前までにスタジアムを建設する義務を負うことになっていた。現在、本拠地として使用しているいわぎんスタジアム(盛岡南公園球技場)は収容人員が7000人で、J2ライセンスを満たしていない。それでも新スタジアム建設へ向けての機運は高まっていなかった。
今季から採用されたJ3とJFLとの入れ替え制。
その第1号となる可能性が高まっている盛岡。それが現実となれば悪影響は計り知れない。
JFLに降格すると、チームに与えられるJリーグからの分配金や、スポンサー収入の大幅減額は必至だろう。J3はDAZNでの配信で放映権料もあるが、それもなくなる。当然ながら、クラブの財政状態は悪化するだろう。アマチュア混在リーグであるJFL降格によるサポーター離れも懸念される。

JFL降格の場合の悪夢2:主力選手の流出
加えて、JFL降格の暁には、主力選手の流出も避けられない。2023シーズン途中に盛岡に加入した元日本代表のDF西大伍は、開幕スタメン(2月25日カマタマーレ讃岐戦1-1)に名を連ね、前半8分には得点も記録した。しかし2022年の浦和レッズ所属時代には一般女性との妊娠中絶トラブル、さらに今年8月にはYouTubeで「J1のレベルが落ちていると感じる」と発言し炎上するなど、ピッチ外での話題が先行している印象がある。
もう1人の元日本代表選手で、2008-2010シーズンにはスコットランドのセルティックに所属したMF水野晃樹は、2024シーズンほとんど試合に絡めないまま(25節終了時点で出場時間は計66分)、9月29日に今季限りでの引退を発表した。
その穴を埋める補強が必須なのだが、JFLでは待遇やレベルがJリーグに比べて劣るため、移籍を希望する選手が続出するだろう。主力の流出は即チーム力の低下につながり、“ドロ沼”にハマり込む可能性もある。

JFL降格の場合の悪夢3:観客数の減少
さらにJFLはテレビ中継もネット配信もなく注目度が下がり、観客数の減少が避けられない。熱心なコアサポーターは別として、ライトファンの岩手県民からの関心は薄れ、サッカー熱も低下するだろう。観客数の減少は収益の減少に直結し、チームの士気低下を招くという悪循環に陥ることは必至だ。
16チームが所属する全国リーグであるJFLは、アマチュア混在といえどJリーグ昇格を目指す野心溢れるクラブも多く、実力が拮抗している厳しいリーグだ。盛岡はもちろん1年での再昇格を目指すことになろうが、JFLでも成績不振が続いてしまえば、さらに地域リーグへの降格というリスクも生じてくる。地域リーグまで降格してしまうとクラブの存続自体が危ぶまれ、サポーターはもちろん岩手県内のスポーツ熱への低下は避けられない。
第一、JFLに降格したとして、NOVAホールディングスが盛岡の事実上のオーナーであり続ける保証はどこにもないだろう。
同社は、英会話教室事業において、受講料を前金で支払ったにも関わらず授業が受けられないというトラブルが頻出し、結果、前身の株式会社ノヴァは2007年10月に439億円という巨額の負債を抱え倒産に陥った過去がある。投資会社の支援の下、再建を果たしたものの、赤字になると分かり切っているサッカークラブの経営を続けるメリットは同社にはなく、“損切り”される可能性もゼロではないのだ。
JFL降格に伴ってクラブの経営体制に対する批判や内部の混乱が生じ、フロントの責任問題や経営陣の入れ替えなどが考えられ、クラブの組織力やビジョンが揺らぐことにもなりかねない。
これらの要素が重なることで、JFL降格後にはクラブ運営がさらに厳しくなり、Jリーグ復帰への道のりが遠のき、最悪、解散という“悪夢”のような状況に陥るリスクが高まるだろう。
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