2024シーズン明治安田J1リーグも残り2節。優勝は首位のヴィッセル神戸と2位のサンフレッチェ広島に絞られたが、一方の残留争いもサガン鳥栖しか決まっておらず混戦模様だ。
しかし陰では、各クラブが来2025シーズンへ向けて動き出している。ここでは監督人事にフォーカスし、既に始まっているシーズンオフの動きについて深堀りしたい。
2018年に就任以来7シーズンに渡って北海道コンサドーレ札幌の指揮官を務め、いきなりクラブ最高成績の4位、翌2019年にはルヴァン杯準Vなど、クラブをJ1に定着させただけでなく、高みに上らせたミハイロ・ペトロヴィッチ監督。
しかし今2024シーズン札幌は、35節終了時点で19位と、J2降格が現実味を帯びている。今季開幕戦をスコアレスドローで終えた後、5連敗を喫し、開幕ダッシュに失敗したこと、エースのFW鈴木武蔵がスランプに陥り、得点力不足に悩まされたことが響いた。
既にシーズン途中の5月に「集大成」として、今シーズン限りの退任を宣言しているとあって、2022年に就任した三上大勝代表取締役GMが、次期監督に誰を選ぶのかが焦点となっている。
来季、J2で戦うと仮定すると、J未経験の外国人監督を招聘するのはリスクが伴う。しかし、前任の四方田修平監督は横浜FCでチームを昇格に導こうとしていることから、現在フリーの日本人監督となろう。候補となるのは、今季栃木SCのヘッドコーチを途中解任されたものの、かつて札幌を指揮(2004-2006)し、J2経験も豊富な柳下正明氏あたりとなるのではないだろうか。
過去、大分トリニータ(2009)、町田ゼルビア(2011、2020/22)、FC東京(2012/13)、セレッソ大阪(2014)を指揮したランコ・ポポヴィッチ監督を招聘して2024シーズンに臨みながらも10月に解任し、ヘッドコーチを務めていた中後雅喜氏を監督に昇格させ、同時にコーチに羽田憲司氏、本山雅志氏、フットボールダイレクターに中田浩二氏を就任させる新体制を発表した鹿島アントラーズ。
中後監督初戦となった第34節(10月19日)のホーム(カシマサッカースタジアム)アビスパ福岡戦でスコアレスドローの船出はサポーターを不安にさせたが、次戦第35節(11月1日)の敵地(Uvanceとどろきスタジアム)の川崎フロンターレ戦で3-1の快勝を収め、来季のACLエリート出場権も十分に狙える状況だ。
しかし、中後監督の来季は保証されてはいない。川崎フロンターレの鬼木達監督の今季限りでの退任が10月16日に発表されると、すぐさまオファーを出したと報じられたのだ。それでも鹿島は優勝争い、川崎はACLエリートを戦っている最中のこの報道は、眉に唾を付けて受け取る必要がありそうだ。
ノルウェー人指揮官、ペア=マティアス・ヘグモ氏を招聘して臨んだ今2024シーズンだったが、8月25日時点で勝ち点35の13位と低迷し、同27日ヘグモ監督解任と、2023シーズンに浦和を指揮しACL優勝に導いたマチェイ・スコルジャ監督の復帰という“ウルトラC人事”に舵を切った浦和レッズ。
しかし、スコルジャ監督復帰後もチームの状態は上向かず、第31節のFC東京戦から第34節の東京ヴェルディ戦まで4連敗を喫するなど、第35節終了時点でJ1残留を決められないでいる。
成績不振に陥る度、監督交代を繰り返し、クビにした監督を呼び戻すことも一度や二度ではない浦和フロント(横山謙三氏、ホルガー・オジェック氏、堀孝史氏、大槻毅氏)。再びスコルジャ監督を切る可能性も高いだろう。
母国のポーランドでは、レギア・ワルシャワやレフ・ポズナンといった欧州CLにも出場経験のある名門クラブの監督を務めてきたスコルジャ監督。帰国したとしても次の仕事に困ることはなさそうだが、浦和はまたしても“監督ガチャ”を強いられ、迷走することになりそうだ。
2023年5月に辞任したネルシーニョ前監督の後を受け、ヘッドコーチから昇格した柏レイソルの井原正巳監督。同シーズンは、リーグ戦17位に終わりながらも降格枠「1」というレギュレーションに助けられ、天皇杯準Vという結果を残したことから続投となった。
しかし今季は開幕から低空飛行を続け、35節終了時点で、降格ラインの18位ジュビロ磐田との勝ち点差はわずか「4」。夏から解任説が浮上しては消える状況だったが、なんとか延命していた。その裏には井原監督を解任しようにも、内部昇格となれば柏OBでもあるヘッドコーチの栗澤僚一氏、コーチの大谷秀和氏、染谷悠太氏に白羽の矢が立つのだが、経験が絶対的に不足しているという事情もあるだろう。
いずれにせよ、井原監督の続投の可能性は低いとみる。
2018年、横浜F・マリノスの監督に就任したアンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム・ホットスパー)のヘッドコーチとして来日したピーター・クラモフスキー監督。
2020年、自身初の監督として清水エスパルスに入団するもJ1残留ギリギリの17位に低迷し1年で退任。2021年、J2モンテディオ山形の監督に就任したが、2023シーズン開幕2連勝の後の5連敗で解任。時を同じくしてアルベル・プッチ・オルトネダ監督を解任したFC東京の監督の座に収まる。
こうして見ると、監督としての能力以前にタイミングに恵まれた印象だ。2023シーズン11位という結果でクラモフスキー監督続投を決めたフロントにガッカリした東京サポーターも多かったはず。案の定、今季開幕ダッシュにも失敗し、中位あたりをウロウロしながらシーズンを終わろうとしている。サポーターから「フロントは本当に優勝する気があるのか」と言われても仕方のない人事だ。
既に今季限りでアビスパ福岡監督を退任する長谷部茂利氏にアプローチしているという噂がある。福岡が“エレベータークラブ”から脱し、タイトルまでもたらした長谷部監督ならば、若く勢いにある若手の多いFC東京をもう一段上にまで引き上げ、上位進出のみならず久しぶりのタイトル奪取も夢ではないだろう。
昨2023シーズン、J1昇格プレーオフで勝ち抜き、16季ぶりのJ1昇格を果たした東京ヴェルディ。下馬評を覆して早々にJ1残留とシーズン勝ち越しを確定させ、これほどまでに躍進するとは他サポーターは思ってもみなかっただろう。
リーグ戦初勝利は第6節の湘南ベルマーレ戦だったが、とにかく負けないサッカーで積み上げた引き分けの数は、35節終了時点で実に「12」。得失点差も「+1」という堅実さだ。序盤は、大量得点したかと思ったら次戦には大量失点するなど粗の目立つチームだったが、中盤以降はロースコアゲームをモノにするしぶとさを身に着けていく。
JFLの富士通川崎(1996)から、FC東京(2008-10、2016)、ヴァンフォーレ甲府(2012-14)、サンフレッチェ広島(2018-21)と、Jでの指導経験も豊富な城福浩監督に導かれ、有望な若手を中心に試合を追う毎に成長していった東京V。有力選手が引き抜きに遭う可能性もあるが、充実した下部組織から新たな才能が出てくるのがこのクラブの特長でもある。そして、その特長を生かす指揮官の続投こそが、東京V最大の“補強”といってもいいだろう。
町田ゼルビアが今季最大のサプライズを起こしたクラブであることに異論はないだろう。黒田剛監督は明確なゲームプランを持ち、それを選手に遂行させる能力はJ1随一だ。終盤に息切れしたものの、中盤戦までは首位を独走し、Jリーグ初の「J1初昇格即初優勝」という夢をサポーターに示した。
その言動によって、“嫌われキャラ”が定着してしまったきらいがあるものの、サッカーに対するビジョンと、選手の能力を発揮させる手腕は特筆に値する。
11月8日、来季続投が発表された。不安要素としては、J2時代から右腕として黒田監督をサポートしてきた金明輝ヘッドコーチに福岡の次期監督オファーが届き、「就任は決定的」とも報じられていることだ。
黒田監督が理想とするサッカーとは、「ボールを高い位置で奪い、最短距離でゴールへ向かう」というものだが、この考えに共鳴する指導者が果たしているのかどうか、難しい作業となる。加えて、ピッチ外の騒動によって、現在フリーの身であっても「このクラブとだけは関わりたくない」と考える指導者もいるだろう。黒田監督自身の指導力は疑うべくもないが、その戦術を選手に落とし込み、試合で遂行させるヘッドコーチの人選が、来季の町田の生命線と言える。
10月16日に、今季限りの退任が発表された川崎フロンターレの鬼木達監督。J1優勝4回(2017、2018、2020、2021)、ルヴァン杯優勝1回(2019)、天皇杯優勝2回(2020、2023)という黄金時代を築いただけあって、後任監督選びのハードルは自ずと上がってしまうことは致し方ないだろう。
所属選手が次々と欧州に渡ってしまいながらも、チーム力を大きく落とすことなく結果を残し続けたものの、さすがに今季の選手層で「優勝しろ」というのは酷な話だった。
チームは今、端境期にあり、その中からユース育ちでパリ五輪にも出場したDF高井幸大や、35節終了時点で15得点を記録している新エースのFW山田新といった新星も現れた。しかし、勝つことに慣れ過ぎたサポーターから見れば、中途半端な名前では満足できないだろう。
OBに目を転じれば、J3福島ユナイテッドを指揮し、昇格プレーオフ争いを演じている寺田周平監督や、S級ライセンスを取得したばかりのクラブのレジェンドである中村憲剛氏、さらには水面下で前アビスパ福岡の長谷部茂利監督を巡って、FC東京と争奪戦を繰り広げているという噂もある。2017年にフロント入りした竹内弘明GMにとって初めての監督選びとなるが、失敗が許されない大仕事とあって、胃が痛い日々を送っていることだろう。
今2024シーズンの7月、ハリー・キューウェル監督の解任に伴い、内部昇格の形で横浜F・マリノス監督に就任したジョン・ハッチンソン監督。しかしチームの調子が上向くことなく、2桁順位でシーズンを終えようとしている。ハッチンソン監督も今季限りでの退任が濃厚だ。
横浜FMでは、2015シーズンに就任したエリク・モンバエルツ監督以来、アンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム・ホットスパー監督)、ケヴィン・マスカット監督(現上海海港監督)、そしてキューウェル監督と、シティ・フットボール・グループに属しているメリットを生かした外国人監督の招聘が続いていることから、再びシティグループが推す攻撃的サッカーを志向する外国人が指揮する可能性が高いだろう。
一時は降格圏内にいたものの、終盤戦の驚異的な追い上げでJ1残留をほぼ確定させた湘南ベルマーレ。2021シーズンから指揮している山口智監督だが、長期政権である一方、毎年のように残留を争っている状況に、サポーターの“このままでいいのか”という思いも募っている。
元々、監督をコロコロ変えるクラブではなく、クラブ初タイトル(2018ルヴァン杯)をもたらした曺貴裁監督(現京都サンガ)に至っては、約8年(2019シーズン途中にパワハラ行為が発覚し退任)にも及んだ。監督選びにおいても、いい意味で身の丈に合った人選で、残留という現実的な目標に軸足を置いている印象がある湘南。気が付けば、7シーズン連続でJ1に居続けている。
山口監督自身、現役時代は湘南でプレーしたワケでもなく、以前に所属していたガンバ大阪(2016-20)でもヘッドコーチとして、当時の宮本恒靖監督(現日本サッカー協会会長)をサポートする立場だった。
残留を果たしたことで、与えられたタスクは果たした山口監督の続投可能性は高いだろう。そもそも大物監督を招聘しようにも、“先立つものがない”クラブでもある。来季も浮き沈みしながらも、しぶとく残留するようなチームとして存在感を示していくのではないか。
35節終了時点でJ1残留が決まらない状況だったアルビレックス新潟だが、ルヴァン杯準Vという好成績を残した松橋力蔵監督。J2だった2022シーズンに監督に就任し、優勝とJ1昇格に導いた上、タイトルに手が届くところまでチームを強化したことで、4年目突入は確実かと思われていた。
選手の特長を生かしたパスサッカーはサポーターを魅了し、フロントもその手腕を評価していたものの、松橋氏は今季限りでの退任を表明。クラブ側は慰留に努めるとしているが、既に複数のクラブが争奪戦を展開していると言われている。
監督が空席となれば新監督を探すことになるが、最も手っ取り早いのはJ2時代の2020/21シーズンに率いていたアルベル・プッチ・オルトネダ監督(新潟での登録名は「アルベルト」)の再就任だ。名門バルセロナの育成部門で若手育成に従事し、「新潟スタイル」と呼ばれるパスサッカーを持ち込んだのも、同監督の哲学によるものだ。J1昇格を惜しくも逃したものの、アルベル監督は翌シーズンFC東京の監督に就任。そのFC東京の監督も退任し、現在フリーの状態だ。「新潟スタイル」の継承に打って付けの人材と思われる。
2023シーズンにジュビロ磐田の監督に就任し、1年でJ1昇格に導いた横内昭展監督。しかし磐田は35節終了時点で1試合未消化ながら18位と、1年でのJ2降格が現実味を帯びている。
元々は福岡県出身で、マツダSCで現役を終え、サンフレッチェ広島でコーチ経験を積み、日本代表のコーチも歴任した後にジュビロ入りした横内監督。磐田の強化ダイレクターを務めるOBの藤田俊哉氏との繋がりで監督に就任したという経緯がある。しかし、この成績では続投する可能性は限りなく低いだろう。
大物OBが多い磐田だが、なぜか監督として戻ってくるケースが少なく、2014年から2019年まで監督を務めた名波浩監督くらいだ。2019シーズンの鈴木秀人監督、2021シーズンの服部年宏監督も暫定監督に過ぎず、“外様監督”が多い印象。服部氏は現在、J2昇格目前のFC今治監督であり、磐田のレジェンドでもある中山雅史氏もJ3アスルクラロ沼津の監督だ。フロントに何か問題でもあるのかと勘繰りたくなる。
次期監督を内部昇格させるとなれば、長野パルセイロ(2016)、アルビレックス新潟(2017)、SC相模原(2019-21)で監督を務めた、OBでもある三浦文丈ヘッドコーチが有力だが、前述した通りOB監督が少ないことから、外国人監督の招聘という線もあり得る。
名古屋グランパスは、長谷川健太監督就任3年目を迎えた今シーズン、いきなり3連敗スタートとなり、その後盛り返して一時は5位にまで順位を上げたが、夏場にまた失速。とにかく連勝と連敗を繰り返す安定感のない戦いぶりで、“例年通り”中位でフィニッシュとなった。
本来であれば、退任もやむなしの成績だが、ルヴァン杯優勝によって風向きが180度変わり、フロントが長谷川監督来季続投を明言し、4年目の指揮に挑むことが事実上決定している。
しかしながら、決してサポーターから支持されているワケではなく、毎年のように補強を繰り返しながらも3シーズンで獲得したのがルヴァン杯1つという結果には満足していない。そのルヴァン杯決勝も、退団が決まっているGKランゲラックの大活躍によるものだ。このタイトルだけで長谷川監督の続投を決めたことに、サポーターからは批判の声が上がっている。来季は采配に対してより一層、厳しい目が注がれることは必至だ。
京都サンガJ2時代の2021シーズンに監督に就任した曹貴裁監督。1年目で2位となり、1年でのJ1復帰を成し遂げ、2022、2023と残留。今2024シーズンも限られた戦力の中、一時は降格圏に落ち込みながらも夏場以降に盛り返し、J1残留を決定的にしている。
曹監督自身は京都OBではないものの、京都出身で府立洛北高校を卒業している上、引退後は監督業を目指すためドイツのケルン体育大学に留学した研究熱心な指導者だ。
続投となれば、来季5年目を迎えることになり、クラブ最長記録を更新することになる。湘南ベルマーレ監督時代(2012-19)にもクラブ最長記録を更新したものの、パワハラ行為によってS級ライセンス停止処分を受け監督の座を追われた過去がある。しかし、その手腕には一定の評価がなされていた。湘南にクラブ初のタイトル(2018ルヴァン杯)をもたらしたように、京都でも2002年天皇杯以来のタイトル奪取が期待される。
ガンバ大阪は、2023シーズンにクラブ初のスペイン人指揮官として、徳島ヴォルティス(2021-22)からダニエル・ポヤトス監督を招聘したものの、16位とギリギリの残留に終わり、その手腕に疑問の声が上がったがフロントは続投を決めた。
その期待に応えるように、今季まずまずの序盤戦を戦い、一時はACL出場圏内に顔を出すなど、昨年の汚名をそそいでみせたポヤトス監督。レアル・マドリードやエスパニョールの下部組織を指導した経験を生かし、生きのいい若手を抜擢する手腕も発揮し、伸びしろの期待できるチームに変貌を遂げた。
続投となれば、こうした若手の才能が一気に開花し、優勝争いするポテンシャルを持っているG大阪。スペイン人らしく“キレイなサッカーをし過ぎる”きらいがあるものの、それで勝利を重ねていけば、カウンター型のチームが上位を形成する現在のJ1において一石を投じることにも繋がる。
10月の段階で今季限りでの退任が発表されたセレッソ大阪の小菊昭雄監督。愛知学院大を卒業し、1998年にアルバイト契約で下部組織コーチとして指導者キャリアをスタートさせ、2021年8月にレヴィー・クルピ前監督の解任に伴い監督に就任した。4シーズンに渡りC大阪を指揮し、ルヴァン杯では2021年と2022年と2年連続で準Vに導いた。
今季はクラブ創設30周年という節目のシーズンでJ1初優勝を目指していたが、35節終了時点で8位と優勝には手が届かず、無冠に終わった。ちなみに小菊監督は来季J2を戦うサガン鳥栖の新監督に就任することが内定している。
C大阪の次期監督には、パリ五輪でU-23日本代表を率いた大岩剛監督の就任が決定的と報じられていたが、日本サッカー協会がロサンゼルス五輪を戦うU-23日本代表監督の続投をオファー。大岩監督もこれに応える形となった。
今後、もう1人の候補で、9月に豪州代表監督を辞任したグラハム・アーノルド監督を軸に進められると思われるが、1997~1998年までサンフレッチェ広島でプレーし、2014年には2か月で解任されたもののベガルタ仙台を指揮した知日派とあって、“大化け”する可能性も秘めている。
ヴィッセル神戸で過去2回「監督代行」を務め、3度目の監督就任も、2022シーズン途中に解任されたミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の後任としての就任だった吉田孝行監督。
2023年は開幕から指揮。「競争と共存」をテーマに置き、MFアンドレス・イニエスタ(2018-2023)を控えに回し、FW大迫勇也とFW武藤嘉紀の得点力を最大に発揮すべくハイプレスからのショートカウンターを軸としたサッカーに舵を切り、クラブ初のJ1優勝に導いた。
今季も開幕から上位をキープし、11月1日の第35節磐田戦(ノエビアスタジアム神戸/2-0)の勝利で遂に首位に立つ。35節終了時点で、2位のサンフレッチェ広島との勝ち点差は「2」と、デッドヒートを繰り広げているが、吉田監督の続投は既定路線だろう。
2022シーズンからサンフレッチェ広島の指揮を執り、就任初年度からルヴァン杯を制し、2年連続でJ1リーグ3位となりACL出場権(今季はACL2)を獲得したミヒャエル・スキッベ監督。そして今季は35節終了時点で、首位のヴィッセル神戸に肉薄する2位に位置している。
続投どころか長期政権も視野に入る辣腕ぶりで、一度はJ2降格も経験したミハイロ・ペトロヴィッチ元監督の6シーズン超えも夢ではないだろう。退任があるとすれば、欧州や中東クラブからの巨額オファーか、次期日本代表監督に就任する場合に限られるのではないだろうか。
2020シーズンにアビスパ福岡の監督に就任し、クラブ初のタイトル(2023年ルヴァン杯)をもたらし、クラブ最長の4年間に渡り指揮を執った長谷部茂利監督。早々にJ1残留を決めた一方で、10月31日に今季限りでの退任が発表され、早くも水面下では争奪戦が繰り広げられている。
そんな中、次期監督として報じられたのは、町田ゼルビアでヘッドコーチを務めている、元サガン鳥栖監督(2018、2019-2021)の金明輝氏。この報道は賛否両論を呼んだ。指導力には定評があるものの、鳥栖監督時代の2021年のパワハラ事件を引き合いに出し、反対の声が上がっているのだ。特に、最大のサポーターグループ「ウルトラオブリ」が公式Xで反対声明を出すなど異例の反応を見せ、この意見に賛同する声も多く寄せられている。
地理的にライバルでもある鳥栖にいたことも関係しているだろうが、紳士然とした長谷部監督から、ユース選手にまで暴力を振るっていた“暴君”が監督に就任することへのアレルギーが表面化しているのが現状だ。このまま金氏の監督就任を強行すれば、さらなる反発を招くのは必至だ。フロントは今、難しい選択に迫られている。
今季最速でJ2降格が決まってしまったサガン鳥栖。3シーズン目に突入した川井健太監督は攻撃的サッカーを志向したが、J1最低の64失点(35節終了時点)に苦しみ、中盤からは降格圏に沈み解任。後任にはテクニカルダイレクターを務めていた木谷公亮監督が就任したが、降格回避はならなかった。
しかし、降格決定直後のホーム(駅前不動産スタジアム)での町田ゼルビア戦(11月3日2-1)では意地を見せ、13試合ぶりの勝利を挙げただけではなく、これが木谷監督体制初勝利だった。
次期監督には、前セレッソ大阪の小菊昭雄監督の就任が内定している。J2に降格することで大幅な戦力減が予想されるが、アルバイトから叩き上げでC大阪の監督にまで上り詰めた小菊監督の腕の見せ所でもある。
しかし陰では、各クラブが来2025シーズンへ向けて動き出している。ここでは監督人事にフォーカスし、既に始まっているシーズンオフの動きについて深堀りしたい。

北海道コンサドーレ札幌:ミハイロ・ペトロヴィッチ監督
評価:★☆☆☆☆/続投可能性:0%2018年に就任以来7シーズンに渡って北海道コンサドーレ札幌の指揮官を務め、いきなりクラブ最高成績の4位、翌2019年にはルヴァン杯準Vなど、クラブをJ1に定着させただけでなく、高みに上らせたミハイロ・ペトロヴィッチ監督。
しかし今2024シーズン札幌は、35節終了時点で19位と、J2降格が現実味を帯びている。今季開幕戦をスコアレスドローで終えた後、5連敗を喫し、開幕ダッシュに失敗したこと、エースのFW鈴木武蔵がスランプに陥り、得点力不足に悩まされたことが響いた。
既にシーズン途中の5月に「集大成」として、今シーズン限りの退任を宣言しているとあって、2022年に就任した三上大勝代表取締役GMが、次期監督に誰を選ぶのかが焦点となっている。
来季、J2で戦うと仮定すると、J未経験の外国人監督を招聘するのはリスクが伴う。しかし、前任の四方田修平監督は横浜FCでチームを昇格に導こうとしていることから、現在フリーの日本人監督となろう。候補となるのは、今季栃木SCのヘッドコーチを途中解任されたものの、かつて札幌を指揮(2004-2006)し、J2経験も豊富な柳下正明氏あたりとなるのではないだろうか。

鹿島アントラーズ:中後雅喜監督
評価:★★★★☆/続投可能性:60%過去、大分トリニータ(2009)、町田ゼルビア(2011、2020/22)、FC東京(2012/13)、セレッソ大阪(2014)を指揮したランコ・ポポヴィッチ監督を招聘して2024シーズンに臨みながらも10月に解任し、ヘッドコーチを務めていた中後雅喜氏を監督に昇格させ、同時にコーチに羽田憲司氏、本山雅志氏、フットボールダイレクターに中田浩二氏を就任させる新体制を発表した鹿島アントラーズ。
中後監督初戦となった第34節(10月19日)のホーム(カシマサッカースタジアム)アビスパ福岡戦でスコアレスドローの船出はサポーターを不安にさせたが、次戦第35節(11月1日)の敵地(Uvanceとどろきスタジアム)の川崎フロンターレ戦で3-1の快勝を収め、来季のACLエリート出場権も十分に狙える状況だ。
しかし、中後監督の来季は保証されてはいない。川崎フロンターレの鬼木達監督の今季限りでの退任が10月16日に発表されると、すぐさまオファーを出したと報じられたのだ。それでも鹿島は優勝争い、川崎はACLエリートを戦っている最中のこの報道は、眉に唾を付けて受け取る必要がありそうだ。
そもそも、鹿島が新体制を発表した際、小泉文明社長は「中長期的な視点に立った強化戦略」と語ったはず。そこに鬼木氏にオファーを出したとなれば、「あの言葉は何だったのか」と言われても仕方あるまい。

浦和レッズ:マチェイ・スコルジャ監督
評価:★★☆☆☆/続投可能性:50%ノルウェー人指揮官、ペア=マティアス・ヘグモ氏を招聘して臨んだ今2024シーズンだったが、8月25日時点で勝ち点35の13位と低迷し、同27日ヘグモ監督解任と、2023シーズンに浦和を指揮しACL優勝に導いたマチェイ・スコルジャ監督の復帰という“ウルトラC人事”に舵を切った浦和レッズ。
しかし、スコルジャ監督復帰後もチームの状態は上向かず、第31節のFC東京戦から第34節の東京ヴェルディ戦まで4連敗を喫するなど、第35節終了時点でJ1残留を決められないでいる。
成績不振に陥る度、監督交代を繰り返し、クビにした監督を呼び戻すことも一度や二度ではない浦和フロント(横山謙三氏、ホルガー・オジェック氏、堀孝史氏、大槻毅氏)。再びスコルジャ監督を切る可能性も高いだろう。
母国のポーランドでは、レギア・ワルシャワやレフ・ポズナンといった欧州CLにも出場経験のある名門クラブの監督を務めてきたスコルジャ監督。帰国したとしても次の仕事に困ることはなさそうだが、浦和はまたしても“監督ガチャ”を強いられ、迷走することになりそうだ。

柏レイソル:井原正巳監督
評価:★☆☆☆☆/続投可能性:20%2023年5月に辞任したネルシーニョ前監督の後を受け、ヘッドコーチから昇格した柏レイソルの井原正巳監督。同シーズンは、リーグ戦17位に終わりながらも降格枠「1」というレギュレーションに助けられ、天皇杯準Vという結果を残したことから続投となった。
しかし今季は開幕から低空飛行を続け、35節終了時点で、降格ラインの18位ジュビロ磐田との勝ち点差はわずか「4」。夏から解任説が浮上しては消える状況だったが、なんとか延命していた。その裏には井原監督を解任しようにも、内部昇格となれば柏OBでもあるヘッドコーチの栗澤僚一氏、コーチの大谷秀和氏、染谷悠太氏に白羽の矢が立つのだが、経験が絶対的に不足しているという事情もあるだろう。
いずれにせよ、井原監督の続投の可能性は低いとみる。
次期監督に話を移せば、ネルシーニョ監督の再々登板は、74歳という年齢からも難しいだろう。新たな外国人監督を探すか、栗澤ヘッドの昇格か、あるいはかつて京都サンガ(2017/18)を率いた経験のある布部陽功GMの現場復帰という可能性もある。

FC東京:ピーター・クラモフスキー監督
評価:★★☆☆☆/続投可能性:10%2018年、横浜F・マリノスの監督に就任したアンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム・ホットスパー)のヘッドコーチとして来日したピーター・クラモフスキー監督。
2020年、自身初の監督として清水エスパルスに入団するもJ1残留ギリギリの17位に低迷し1年で退任。2021年、J2モンテディオ山形の監督に就任したが、2023シーズン開幕2連勝の後の5連敗で解任。時を同じくしてアルベル・プッチ・オルトネダ監督を解任したFC東京の監督の座に収まる。
こうして見ると、監督としての能力以前にタイミングに恵まれた印象だ。2023シーズン11位という結果でクラモフスキー監督続投を決めたフロントにガッカリした東京サポーターも多かったはず。案の定、今季開幕ダッシュにも失敗し、中位あたりをウロウロしながらシーズンを終わろうとしている。サポーターから「フロントは本当に優勝する気があるのか」と言われても仕方のない人事だ。
既に今季限りでアビスパ福岡監督を退任する長谷部茂利氏にアプローチしているという噂がある。福岡が“エレベータークラブ”から脱し、タイトルまでもたらした長谷部監督ならば、若く勢いにある若手の多いFC東京をもう一段上にまで引き上げ、上位進出のみならず久しぶりのタイトル奪取も夢ではないだろう。

東京ヴェルディ:城福浩監督
評価:★★★★★/続投可能性:90%昨2023シーズン、J1昇格プレーオフで勝ち抜き、16季ぶりのJ1昇格を果たした東京ヴェルディ。下馬評を覆して早々にJ1残留とシーズン勝ち越しを確定させ、これほどまでに躍進するとは他サポーターは思ってもみなかっただろう。
昇格組としては、どうしても町田の快進撃に目を奪われがちだが、東京Vも賞賛に値する成績を残している。
リーグ戦初勝利は第6節の湘南ベルマーレ戦だったが、とにかく負けないサッカーで積み上げた引き分けの数は、35節終了時点で実に「12」。得失点差も「+1」という堅実さだ。序盤は、大量得点したかと思ったら次戦には大量失点するなど粗の目立つチームだったが、中盤以降はロースコアゲームをモノにするしぶとさを身に着けていく。
JFLの富士通川崎(1996)から、FC東京(2008-10、2016)、ヴァンフォーレ甲府(2012-14)、サンフレッチェ広島(2018-21)と、Jでの指導経験も豊富な城福浩監督に導かれ、有望な若手を中心に試合を追う毎に成長していった東京V。有力選手が引き抜きに遭う可能性もあるが、充実した下部組織から新たな才能が出てくるのがこのクラブの特長でもある。そして、その特長を生かす指揮官の続投こそが、東京V最大の“補強”といってもいいだろう。

町田ゼルビア:黒田剛監督
評価:★★★★★/続投可能性:100%町田ゼルビアが今季最大のサプライズを起こしたクラブであることに異論はないだろう。黒田剛監督は明確なゲームプランを持ち、それを選手に遂行させる能力はJ1随一だ。終盤に息切れしたものの、中盤戦までは首位を独走し、Jリーグ初の「J1初昇格即初優勝」という夢をサポーターに示した。
その言動によって、“嫌われキャラ”が定着してしまったきらいがあるものの、サッカーに対するビジョンと、選手の能力を発揮させる手腕は特筆に値する。
11月8日、来季続投が発表された。不安要素としては、J2時代から右腕として黒田監督をサポートしてきた金明輝ヘッドコーチに福岡の次期監督オファーが届き、「就任は決定的」とも報じられていることだ。
仮に金ヘッドが流出となれば、Jでの経験のあるヘッドコーチを新たに招聘する必要に迫られる。
黒田監督が理想とするサッカーとは、「ボールを高い位置で奪い、最短距離でゴールへ向かう」というものだが、この考えに共鳴する指導者が果たしているのかどうか、難しい作業となる。加えて、ピッチ外の騒動によって、現在フリーの身であっても「このクラブとだけは関わりたくない」と考える指導者もいるだろう。黒田監督自身の指導力は疑うべくもないが、その戦術を選手に落とし込み、試合で遂行させるヘッドコーチの人選が、来季の町田の生命線と言える。

川崎フロンターレ:鬼木達監督
評価:★★☆☆☆/続投可能性:0%10月16日に、今季限りの退任が発表された川崎フロンターレの鬼木達監督。J1優勝4回(2017、2018、2020、2021)、ルヴァン杯優勝1回(2019)、天皇杯優勝2回(2020、2023)という黄金時代を築いただけあって、後任監督選びのハードルは自ずと上がってしまうことは致し方ないだろう。
所属選手が次々と欧州に渡ってしまいながらも、チーム力を大きく落とすことなく結果を残し続けたものの、さすがに今季の選手層で「優勝しろ」というのは酷な話だった。
チームは今、端境期にあり、その中からユース育ちでパリ五輪にも出場したDF高井幸大や、35節終了時点で15得点を記録している新エースのFW山田新といった新星も現れた。しかし、勝つことに慣れ過ぎたサポーターから見れば、中途半端な名前では満足できないだろう。
OBに目を転じれば、J3福島ユナイテッドを指揮し、昇格プレーオフ争いを演じている寺田周平監督や、S級ライセンスを取得したばかりのクラブのレジェンドである中村憲剛氏、さらには水面下で前アビスパ福岡の長谷部茂利監督を巡って、FC東京と争奪戦を繰り広げているという噂もある。2017年にフロント入りした竹内弘明GMにとって初めての監督選びとなるが、失敗が許されない大仕事とあって、胃が痛い日々を送っていることだろう。

横浜F・マリノス:ジョン・ハッチンソン監督
評価:★★☆☆☆/続投可能性:10%今2024シーズンの7月、ハリー・キューウェル監督の解任に伴い、内部昇格の形で横浜F・マリノス監督に就任したジョン・ハッチンソン監督。しかしチームの調子が上向くことなく、2桁順位でシーズンを終えようとしている。ハッチンソン監督も今季限りでの退任が濃厚だ。
横浜FMでは、2015シーズンに就任したエリク・モンバエルツ監督以来、アンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム・ホットスパー監督)、ケヴィン・マスカット監督(現上海海港監督)、そしてキューウェル監督と、シティ・フットボール・グループに属しているメリットを生かした外国人監督の招聘が続いていることから、再びシティグループが推す攻撃的サッカーを志向する外国人が指揮する可能性が高いだろう。

湘南ベルマーレ:山口智監督
評価:★★★☆☆/続投可能性:80%一時は降格圏内にいたものの、終盤戦の驚異的な追い上げでJ1残留をほぼ確定させた湘南ベルマーレ。2021シーズンから指揮している山口智監督だが、長期政権である一方、毎年のように残留を争っている状況に、サポーターの“このままでいいのか”という思いも募っている。
元々、監督をコロコロ変えるクラブではなく、クラブ初タイトル(2018ルヴァン杯)をもたらした曺貴裁監督(現京都サンガ)に至っては、約8年(2019シーズン途中にパワハラ行為が発覚し退任)にも及んだ。監督選びにおいても、いい意味で身の丈に合った人選で、残留という現実的な目標に軸足を置いている印象がある湘南。気が付けば、7シーズン連続でJ1に居続けている。
山口監督自身、現役時代は湘南でプレーしたワケでもなく、以前に所属していたガンバ大阪(2016-20)でもヘッドコーチとして、当時の宮本恒靖監督(現日本サッカー協会会長)をサポートする立場だった。
残留を果たしたことで、与えられたタスクは果たした山口監督の続投可能性は高いだろう。そもそも大物監督を招聘しようにも、“先立つものがない”クラブでもある。来季も浮き沈みしながらも、しぶとく残留するようなチームとして存在感を示していくのではないか。

アルビレックス新潟:松橋力蔵監督
評価:★★★☆☆/続投可能性:0%35節終了時点でJ1残留が決まらない状況だったアルビレックス新潟だが、ルヴァン杯準Vという好成績を残した松橋力蔵監督。J2だった2022シーズンに監督に就任し、優勝とJ1昇格に導いた上、タイトルに手が届くところまでチームを強化したことで、4年目突入は確実かと思われていた。
選手の特長を生かしたパスサッカーはサポーターを魅了し、フロントもその手腕を評価していたものの、松橋氏は今季限りでの退任を表明。クラブ側は慰留に努めるとしているが、既に複数のクラブが争奪戦を展開していると言われている。
監督が空席となれば新監督を探すことになるが、最も手っ取り早いのはJ2時代の2020/21シーズンに率いていたアルベル・プッチ・オルトネダ監督(新潟での登録名は「アルベルト」)の再就任だ。名門バルセロナの育成部門で若手育成に従事し、「新潟スタイル」と呼ばれるパスサッカーを持ち込んだのも、同監督の哲学によるものだ。J1昇格を惜しくも逃したものの、アルベル監督は翌シーズンFC東京の監督に就任。そのFC東京の監督も退任し、現在フリーの状態だ。「新潟スタイル」の継承に打って付けの人材と思われる。

ジュビロ磐田:横内昭展監督
評価:★☆☆☆☆/続投可能性:10%2023シーズンにジュビロ磐田の監督に就任し、1年でJ1昇格に導いた横内昭展監督。しかし磐田は35節終了時点で1試合未消化ながら18位と、1年でのJ2降格が現実味を帯びている。
元々は福岡県出身で、マツダSCで現役を終え、サンフレッチェ広島でコーチ経験を積み、日本代表のコーチも歴任した後にジュビロ入りした横内監督。磐田の強化ダイレクターを務めるOBの藤田俊哉氏との繋がりで監督に就任したという経緯がある。しかし、この成績では続投する可能性は限りなく低いだろう。
大物OBが多い磐田だが、なぜか監督として戻ってくるケースが少なく、2014年から2019年まで監督を務めた名波浩監督くらいだ。2019シーズンの鈴木秀人監督、2021シーズンの服部年宏監督も暫定監督に過ぎず、“外様監督”が多い印象。服部氏は現在、J2昇格目前のFC今治監督であり、磐田のレジェンドでもある中山雅史氏もJ3アスルクラロ沼津の監督だ。フロントに何か問題でもあるのかと勘繰りたくなる。
次期監督を内部昇格させるとなれば、長野パルセイロ(2016)、アルビレックス新潟(2017)、SC相模原(2019-21)で監督を務めた、OBでもある三浦文丈ヘッドコーチが有力だが、前述した通りOB監督が少ないことから、外国人監督の招聘という線もあり得る。

名古屋グランパス:長谷川健太監督
評価:★★☆☆☆/続投可能性:100%名古屋グランパスは、長谷川健太監督就任3年目を迎えた今シーズン、いきなり3連敗スタートとなり、その後盛り返して一時は5位にまで順位を上げたが、夏場にまた失速。とにかく連勝と連敗を繰り返す安定感のない戦いぶりで、“例年通り”中位でフィニッシュとなった。
本来であれば、退任もやむなしの成績だが、ルヴァン杯優勝によって風向きが180度変わり、フロントが長谷川監督来季続投を明言し、4年目の指揮に挑むことが事実上決定している。
しかしながら、決してサポーターから支持されているワケではなく、毎年のように補強を繰り返しながらも3シーズンで獲得したのがルヴァン杯1つという結果には満足していない。そのルヴァン杯決勝も、退団が決まっているGKランゲラックの大活躍によるものだ。このタイトルだけで長谷川監督の続投を決めたことに、サポーターからは批判の声が上がっている。来季は采配に対してより一層、厳しい目が注がれることは必至だ。

京都サンガ:曹貴裁監督
評価:★★★☆☆/続投可能性:80%京都サンガJ2時代の2021シーズンに監督に就任した曹貴裁監督。1年目で2位となり、1年でのJ1復帰を成し遂げ、2022、2023と残留。今2024シーズンも限られた戦力の中、一時は降格圏に落ち込みながらも夏場以降に盛り返し、J1残留を決定的にしている。
曹監督自身は京都OBではないものの、京都出身で府立洛北高校を卒業している上、引退後は監督業を目指すためドイツのケルン体育大学に留学した研究熱心な指導者だ。
続投となれば、来季5年目を迎えることになり、クラブ最長記録を更新することになる。湘南ベルマーレ監督時代(2012-19)にもクラブ最長記録を更新したものの、パワハラ行為によってS級ライセンス停止処分を受け監督の座を追われた過去がある。しかし、その手腕には一定の評価がなされていた。湘南にクラブ初のタイトル(2018ルヴァン杯)をもたらしたように、京都でも2002年天皇杯以来のタイトル奪取が期待される。

ガンバ大阪:ダニエル・ポヤトス監督
評価:★★★★☆/続投可能性:70%ガンバ大阪は、2023シーズンにクラブ初のスペイン人指揮官として、徳島ヴォルティス(2021-22)からダニエル・ポヤトス監督を招聘したものの、16位とギリギリの残留に終わり、その手腕に疑問の声が上がったがフロントは続投を決めた。
その期待に応えるように、今季まずまずの序盤戦を戦い、一時はACL出場圏内に顔を出すなど、昨年の汚名をそそいでみせたポヤトス監督。レアル・マドリードやエスパニョールの下部組織を指導した経験を生かし、生きのいい若手を抜擢する手腕も発揮し、伸びしろの期待できるチームに変貌を遂げた。
続投となれば、こうした若手の才能が一気に開花し、優勝争いするポテンシャルを持っているG大阪。スペイン人らしく“キレイなサッカーをし過ぎる”きらいがあるものの、それで勝利を重ねていけば、カウンター型のチームが上位を形成する現在のJ1において一石を投じることにも繋がる。

セレッソ大阪:小菊昭雄監督
評価:★★☆☆☆/続投可能性:0%10月の段階で今季限りでの退任が発表されたセレッソ大阪の小菊昭雄監督。愛知学院大を卒業し、1998年にアルバイト契約で下部組織コーチとして指導者キャリアをスタートさせ、2021年8月にレヴィー・クルピ前監督の解任に伴い監督に就任した。4シーズンに渡りC大阪を指揮し、ルヴァン杯では2021年と2022年と2年連続で準Vに導いた。
今季はクラブ創設30周年という節目のシーズンでJ1初優勝を目指していたが、35節終了時点で8位と優勝には手が届かず、無冠に終わった。ちなみに小菊監督は来季J2を戦うサガン鳥栖の新監督に就任することが内定している。
C大阪の次期監督には、パリ五輪でU-23日本代表を率いた大岩剛監督の就任が決定的と報じられていたが、日本サッカー協会がロサンゼルス五輪を戦うU-23日本代表監督の続投をオファー。大岩監督もこれに応える形となった。
今後、もう1人の候補で、9月に豪州代表監督を辞任したグラハム・アーノルド監督を軸に進められると思われるが、1997~1998年までサンフレッチェ広島でプレーし、2014年には2か月で解任されたもののベガルタ仙台を指揮した知日派とあって、“大化け”する可能性も秘めている。

ヴィッセル神戸:吉田孝行監督
評価:★★★★★/続投可能性:90%ヴィッセル神戸で過去2回「監督代行」を務め、3度目の監督就任も、2022シーズン途中に解任されたミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の後任としての就任だった吉田孝行監督。
2023年は開幕から指揮。「競争と共存」をテーマに置き、MFアンドレス・イニエスタ(2018-2023)を控えに回し、FW大迫勇也とFW武藤嘉紀の得点力を最大に発揮すべくハイプレスからのショートカウンターを軸としたサッカーに舵を切り、クラブ初のJ1優勝に導いた。
今季も開幕から上位をキープし、11月1日の第35節磐田戦(ノエビアスタジアム神戸/2-0)の勝利で遂に首位に立つ。35節終了時点で、2位のサンフレッチェ広島との勝ち点差は「2」と、デッドヒートを繰り広げているが、吉田監督の続投は既定路線だろう。

サンフレッチェ広島:ミヒャエル・スキッベ監督
評価:★★★★★/続投可能性:90%2022シーズンからサンフレッチェ広島の指揮を執り、就任初年度からルヴァン杯を制し、2年連続でJ1リーグ3位となりACL出場権(今季はACL2)を獲得したミヒャエル・スキッベ監督。そして今季は35節終了時点で、首位のヴィッセル神戸に肉薄する2位に位置している。
続投どころか長期政権も視野に入る辣腕ぶりで、一度はJ2降格も経験したミハイロ・ペトロヴィッチ元監督の6シーズン超えも夢ではないだろう。退任があるとすれば、欧州や中東クラブからの巨額オファーか、次期日本代表監督に就任する場合に限られるのではないだろうか。

アビスパ福岡:長谷部茂利監督
評価:★★★★☆/続投可能性:0%2020シーズンにアビスパ福岡の監督に就任し、クラブ初のタイトル(2023年ルヴァン杯)をもたらし、クラブ最長の4年間に渡り指揮を執った長谷部茂利監督。早々にJ1残留を決めた一方で、10月31日に今季限りでの退任が発表され、早くも水面下では争奪戦が繰り広げられている。
そんな中、次期監督として報じられたのは、町田ゼルビアでヘッドコーチを務めている、元サガン鳥栖監督(2018、2019-2021)の金明輝氏。この報道は賛否両論を呼んだ。指導力には定評があるものの、鳥栖監督時代の2021年のパワハラ事件を引き合いに出し、反対の声が上がっているのだ。特に、最大のサポーターグループ「ウルトラオブリ」が公式Xで反対声明を出すなど異例の反応を見せ、この意見に賛同する声も多く寄せられている。
地理的にライバルでもある鳥栖にいたことも関係しているだろうが、紳士然とした長谷部監督から、ユース選手にまで暴力を振るっていた“暴君”が監督に就任することへのアレルギーが表面化しているのが現状だ。このまま金氏の監督就任を強行すれば、さらなる反発を招くのは必至だ。フロントは今、難しい選択に迫られている。

サガン鳥栖:木谷公亮監督
評価:★☆☆☆☆/続投可能性:0%今季最速でJ2降格が決まってしまったサガン鳥栖。3シーズン目に突入した川井健太監督は攻撃的サッカーを志向したが、J1最低の64失点(35節終了時点)に苦しみ、中盤からは降格圏に沈み解任。後任にはテクニカルダイレクターを務めていた木谷公亮監督が就任したが、降格回避はならなかった。
しかし、降格決定直後のホーム(駅前不動産スタジアム)での町田ゼルビア戦(11月3日2-1)では意地を見せ、13試合ぶりの勝利を挙げただけではなく、これが木谷監督体制初勝利だった。
次期監督には、前セレッソ大阪の小菊昭雄監督の就任が内定している。J2に降格することで大幅な戦力減が予想されるが、アルバイトから叩き上げでC大阪の監督にまで上り詰めた小菊監督の腕の見せ所でもある。
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