同試合には9,000人以上が詰めかけ課題とされていた観客動員数もクリアし、JFL参入からわずか1年でJ3リーグ昇格を決めた栃木シティ。今後Jリーグで戦って行くためには何が必要なのか。ここではJ3で戦う栃木シティについて紹介するとともに来季に向けた課題を検証して行く。

栃木シティの歴史
栃木シティは1947年に創設された日立栃木サッカー部が前身となる。2010年にチーム名を栃木ウーヴァFCに変更し、2017年まではJFLで戦うも関東リーグへ降格。2019年からは関東1部リーグで戦うこととなる。2020年、2022年と関東リーグを優勝。2023年にはシーズンを2位で終えるも、全国地域サッカーチャンピオンズリーグで優勝しJFLへ復帰する。そして迎えた2024年、JFL昇格1年目ながら優勝という結果でJリーグ参入を決めた。

全員で点を取るサッカー
JFLへの昇格からわずか1年での優勝、そしてJリーグ参入となった栃木シティ。その強さの秘訣は何だったのだろうか。JFLの順位表を見てみると18勝7分4敗(第29節終了時)で勝点61、2位高知ユナイテッドの勝点54とは実に勝点差が7となっている。さらに得点数はリーグトップの63。内訳を見ると、チーム内得点王はFW吉田篤志の12得点、以下FW藤原拓海9得点、FW田中パウロ淳一6点、FW鈴木国友5点、MF岡庭裕貴、MF関野元弥などが4得点と続く。
現在はFWアーリング・ハーランドという圧倒的なストライカーを有するシティだが、ハーランド加入前の2020年から2022年には、MFフィル・フォーデン、FWリヤド・マフレズ(現アル・アハリ)、MFケビン・デ・ブライネ、FWラヒーム・スターリング(現アーセナル)、MFベルナルド・シウバなど中盤から前線に掛けての選手が全て得点できるスタイルでチームとしての底力を見せてきた。
同じ戦い方というとさすがに違うかもしれないが、チーム全員で点を取るサッカーは栃木シティの強さの秘訣だと言えるのではないだろうか。

来季J3で戦うために必要なものとは?
圧倒的なストライカーがいなくとも得点を重ね、JFLを制した栃木シティだが、来季の戦いの舞台がJ3となると状況は変わって来るだろう。今季の戦いを見てやや気になる点は失点の多さだ。第29節終了時までの失点は35、1試合当たりの失点数は1.21失点と高い。他のクラブと失点数を比較すると2位高知ユナイテッドが22。9位ラインメール青森と7位Hondaがいずれも26。3位レイラック滋賀が27と、いずれも20点台である。
優勝した栃木シティの失点数は他のクラブと比べるとやや高い傾向にあり、守備の改善は今後の課題ではないだろうか。J3の現時点の得点ランキングトップは、FC今治のFWマルクス・ヴィニシウス(19ゴール)と圧倒的な得点力が見られる。
他にもJ1やJ2でプレー経験のある選手がJ3にも所属しており、その他の若手選手の中にも多彩な攻撃センスや得点力のある選手が在籍している。
また、来季に向けてのチーム作りにも注目したい。J3で戦うにはそれなりに実績や経験のある選手が必要になることは明らかだが、そのような選手を獲得できるだけの資金力が栃木シティにあるかという疑問もある。資金力のあるチームが必ずしも強く結果を残すとは言い切れないが、やはり少なからずとも来季の成績に影響を与えるだろう。
2023年のJ3の人件費は鹿児島ユナイテッドや愛媛FC、ギラヴァンツ北九州などが約2億円。人件費の一番少ないY.S.C.C.横浜でも1億1300万円となっている。

ついに栃木ダービーがJリーグで実現
栃木シティのJリーグ参入により、栃木県には栃木SCと栃木シティという2つのJリーグクラブが共存することとなった。今2024シーズンJ2リーグで戦ってきた栃木SCは、既に来季からのJ3降格が決定しており、両チームはJ3の舞台で激突することとなる。栃木県には矢板中央高校、佐野日大高校などの高校サッカー強豪校があり、サッカーは盛んな地だ。筆者は過去に一度だけ栃木県を訪れた事があるが、その日は浦和レッズの試合が開催されていたようで、宇都宮駅から電車に乗ると途中で多くの浦和サポーターが乗車してきたのを覚えている。
また、宇都宮駅周辺には栃木SCのポスターなどが掲示されており、九州在住の筆者からすると栃木県を含む首都圏のサッカーの盛り上がりには少し驚いた。同じ栃木県内の宇都宮市と栃木市をホームタウンとする栃木ダービーは来季大きな盛り上がりを見せることだろう。
2025シーズンからカテゴリーを1つ上げ、J3という新たな舞台に挑戦する栃木シティ。チームとしては守備面や資金面などの課題はあるが、栃木県2つ目のクラブとしてJリーグ入会を確定させた彼らの戦いに期待したい。