このシーズン終盤の3試合では今季出場機会の少なかった選手たちにもチャンスが多く与えられた。昇格や優勝のかかる大一番に最終節と、重要なゲームでそれまでなかなか見せ場のなかった選手たちを起用できた意味は大きい。もちろん、所属する大半の選手についてその去就は現時点で不明だが、ラスト3節から改めて選手層の厚さを見せつけたことは確かだ。ここでは、そんなシーズン終盤の3戦で出場機会を掴んで見せ場を作り、来季以降は定位置確保にも期待がかかる選手について紹介していく。

来季の守護神候補筆頭:沖悠哉
今季清水の新戦力の1人であり、2020~2021シーズンには若くして鹿島アントラーズの守護神も務めたGK沖悠哉。日本代表としても多くの経験を持つGK権田修一を前にリーグ戦ではなかなか出番を得られずにいたが、第36節の栃木SC戦で移籍後のリーグ戦初となるスタメン出場を果たした。J1昇格のかかる大一番となった栃木戦では、ゲーム最終盤に味方との交錯でボールを落としピンチを招くも周囲のカバーに救われてクリーンシートで昇格という目標達成に貢献。続く優勝のかかった第37節のいわきFC戦では、特に前半相手にチャンスを多く作られた中で好セーブを連発し最後までゴールを割らせず2試合連続となる無失点勝利の立役者となった。
今季出場はこの2試合のみとなったが、限られた機会で確かな存在感を放った沖。今季限りで権田の退団が決定していることもあり、チームにおける重要性は極めて高い。

新たなチームの心臓に:成岡輝瑠
今季清水のボランチ2枚は、下部組織出身のMF宮本航汰と開幕前に鹿島アントラーズから期限付きで加入したMF中村亮太朗、そして夏に町田ゼルビアから期限付きで加わったMF宇野禅斗と主にこの3選手が務めた。そんな中、MF成岡輝瑠はシーズン終盤の第37節と第38節で出番を得た。第37節いわき戦はゲーム終盤わずかな時間のみの出場となったが、続く最終節のロアッソ熊本戦では先発出場。相手にボールを握られる時間も多くあった中で、好プレーを数多く見せていた。守備では鋭いチェックからのパスカットや前線での素早い切り替えで相手の出足を封じ、攻撃では敵陣深くで自ら仕掛けてゴールに迫るなどゲーム最終盤に交代するまで積極的なプレーを披露。シーズン最終節で大きな存在感を放った。
来季に向けて、中村に宇野と期限付きで加入していた選手の活躍が大きかったボランチは彼らの去就次第で戦力ダウンの懸念もある。しかし、最終節で見せた成岡の活躍ぶりはそんな懸念を十分に軽減させるものだったと言える。また、仮に彼らがそのままチームに残留したとしても、ポジションを奪うに足る力を示したとも言えよう。まだ22歳と伸びしろもたっぷりな成岡。

さらなる進化に期待:郡司璃来
第102回全国高校サッカー選手権大会における得点王の実績を引っ提げて、今季清水へ加入した高卒ルーキーのFW郡司璃来。リーグ戦では7試合に出場し、ゴールこそ挙げられなかったが推進力やパンチ力のあるシュートなど印象的なプレーも数多く見られた。シーズン終盤の3試合のうち、第37節のいわき戦で途中出場。続けて最終節の熊本戦には第7節以来となる先発出場を果たしている。いわき戦ではクロスを頭で合わせてゴールへ迫るなど見せ場を作り、熊本戦では相手に持たれる時間も長い展開の中でサイドの突破や反転から鋭いシュートを放つなど持ち味を出していた。
今季清水の最前線では、FW北川航也がゴールにアシストと大車輪の活躍を見せた。また、圧倒的な高さと強さを誇るFWドウグラス・タンキや夏に加入したFWアブドゥル=アジズ・ヤクブといった選手たちも個々に活躍を見せており、彼らの去就にもよるが郡司にとって来季も定位置確保は容易ではないだろう。それでも、そのプレーぶりから出番が来るごとにゴールへの期待感は増している。来季はJ1でどんなプレーを見せてくれるのか、郡司の成長から目が離せない。

虎視眈々とスタメンの座を狙う選手たち
ラスト3試合で出場機会を得た選手はまだ多くいる。最終節でデビューを飾ったGK猪越は、ゲーム序盤ボールを落とす危ない場面もあったがその後は安定したプレーを披露し無失点で勝利に貢献している。同じく最終節では、昨季ファジアーノ岡山へ武者修行に出ていたMF川谷凪や第22節以降に一時期スタメン出場も続いたDF高木践にも出番があった。来季は3年ぶりにJ1の舞台で戦う清水。ラスト3戦で見せ場を作った選手たちはポジションを掴むことができるのか、今冬の動向や新たな補強も含めて今から楽しみだ。