高知ユナイテッドは、今2024シーズンJFL(日本フットボールリーグ)で2位となり、明治安田J3リーグで19位に終わったY.S.C.C.横浜との入れ替え戦に臨んでいる。12月1日に行われた第1戦は1-1で引き分け。
12月7日にニッパツ三ツ沢球技場で行われる第2戦に向け、大きな期待が寄せられている。

これに伴い高知は、JTB高知支店との共同企画として敵地である横浜までのバスツアーを計画した。しかし、参加者が最少施行人数の30人に満たず催行中止となったことが、12月4日に公式Xで発表された。

弾丸ツアーにも関わらず、往復3万円という強気な価格設定にも問題があるようにも思えるが(岡山駅乗り換えで新幹線を使っても往復約3万9,000円ほど)、募集締め切りを前に早々に中止発表したことで、よっぽど申し込みが少なかったのだろうと考えられる。たったの30人にも届かなかったことで、高知でのJ昇格の機運はどれほどのものなのだろうかと案じたくもなる。

ここではJ3昇格を目指す高知ユナイテッドが抱える問題について考察する。

J3昇格目指す高知ユナイテッドの前途多難。ホーム使えずアウェイツアー中止

平均入場者数は“作られた数字”

高知は今2024シーズン、Jリーグ入会の要件である「年間のホーム1試合平均入場者数2,000人」をクリアし、かつJFL2位となったことで入れ替え戦への参戦が認められた。

9月1日に春野総合運動公園陸上競技場で行われたJFL第18節ヴェルスパ大分戦(0-1)において、台風で試合日が前日から1日延期となったにも関わらず、クラブ史上最多動員数を更新する1万1,085人が来場したことが、最後になって効いた格好だ。

しかしながら、その内訳は当日券購入による来場者は約45%の5,034人、55%にあたる6,051人が前売りや無料招待券による来場者だった。昨2023シーズン、その前年の2022シーズンも平均1,000人を切っていたことを勘案すると、大量の招待券で集客していたと予想が付く。事実、次のホームゲームの9月15日の第20節ティアモ枚方戦(1-1)では2,233人と大きく観客動員数を落としていた。

今季、無料招待券のバラ撒きが常態化していたとすれば、Jリーグ入会要件を満たすための“ドーピング”であり、かつ自腹でチケット代金を払い、純粋に応援するサポーターに対する背信行為だ。さらに言えば、“タダ券慣れ”してしまった観客がリピーターとなる保証などどこにもない。
「カネを取るなら見に行かない」と考える方が自然だろう。

同様の集客作戦を実行し一時的なブームを起こしたものの、時の経過とともに急激な客離れを招いたケースはJリーグの歴史が証明している。今シーズンの平均入場者数は“作られた数字”なのだ。

J3昇格目指す高知ユナイテッドの前途多難。ホーム使えずアウェイツアー中止

ホームスタジアムの問題

昇格プレーオフに漕ぎ着けた高知だが、いきなり失態を起こす。12月1日の入れ替え戦第1戦で、ホームスタジアムの春野総合運動公園陸上競技場が使用出来ないことが判明したのだ。当日は304チーム2,548人が参加する、恒例のリレーマラソン大会が開催された。

入れ替え戦の日程はシーズン開幕前に伝えられていたはずで、高知側もそこに回る可能性があることは事前に分かっていたにも関わらず、スタジアムを所有する自治体側との日程調整すらしていなかったのは、フロントの怠慢としか言いようがないのではないか。そもそも入れ替え戦に食い込む可能性を、フロントが信じていなかったのかと突っ込まれても致し方ないだろう。

高知のフロントはナイターでの開催を模索したものの、照明照度がJリーグ既定の1800ルクスに遠く及ばない1000ルクスで、隣接する球技場も収容人数1,000人では問題外だ。結局、J3カマタマーレ讃岐のホームスタジアムであるPikaraスタジアムでの開催となり、約3,000人ものサポーターはホームゲームにも関わらず、100キロ以上の遠征を余儀なくされた。

仮に12月7日の第2戦でY.S.C.C.横浜を下し、J3入りを果たしたとしても、問題は先送りされたままだ。来シーズン開幕までに、照明照度はクリアできるのか。ナイター設備を増強するとして、スタジアム所有者の高知県に“おねだり”するのか。
はたまた、選手に真夏の酷暑下でのデーゲームを強いるのか。

しかしこの責任を全てクラブに被せるには少々酷だ。ハード・ソフト両面でJリーグ入りへの準備が整っているとは言えないこのクラブの参入を認めたのはJリーグ側だからだ。

「高知県にJリーグを」を旗印に大健闘した選手は称賛に値することは間違いない。だからこそ、フロントの数々の失態が際立ってしまうのだ。例え高知がJ3に昇格出来たとしても、そこがゴールではない、いわばスタートラインだ。Jリーグに居続けることは、Jリーグに参入するよりも難しい作業であることを、フロントは実感するだろう。

J3昇格目指す高知ユナイテッドの前途多難。ホーム使えずアウェイツアー中止

財政的な問題

「特例措置」を連発して、闇雲に拡大路線をひた走ってきたJリーグ。

将来的にJリーグ入りを目指して「Jリーグ百年構想クラブ」にも名を連ね、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)で優勝した奈良県の飛鳥FCも来季からのJFL入りを果たしたが、関西リーグで戦っていた当初から財政的問題を抱え、既に5,000万円もの負債を抱えていると噂されている。「飛鳥FC金鵄プロジェクト~奈良県中南和地域のサッカーの火を灯す~」と称したクラウドファンディングを試みるも、目標金額の100万円に遠く及ばない21万5,000円しか集まらなかった。

Jリーグ入会要件の「入会直前年度のJFLのリーグ戦におけるホームゲームの1試合平均入場者数が2,000人に到達し、かつ年間入場料収入が1,000万円に到達していること」と「短期的に資金難に陥る可能性が極めて低いと評価できる状態にあること」という項目が甘過ぎると指摘され、その結果、J2、J3クラブのほとんどが赤字体質のまま放置されているのだ。高知も入会審査の際、財務基準に不備があると指摘され、解決を求められている。


このままの状態で高知がJ3に昇格したとしても、多くのJ3クラブと同様に資金繰りに苦しむのは火を見るよりも明らかだ。無理やり背伸びした状態でJ入りを果たせたとしても、“素人並み”のチームオペレーションを見ると、前途多難だと断じざるを得ない。
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