全日程を終えた2024シーズンの明治安田Jリーグ。今年も数多くのスターが誕生した。
近年、活躍している若手Jリーガーは夏の欧州リーグ開幕前のタイミングで海外クラブへ移籍するケースが多く、移籍先で活躍すると日本代表に選出される割合は高い。

Jリーグから世界へ羽ばたいたプレーヤーとして、川崎フロンターレで異次元的なパフォーマンスを見せブライトン・ホーブ・アルビオン(イングランド1部)へ移籍したMF三笘薫や鹿島アントラーズ時代に国内で無類のフィジカルの強さと決定力を示しフェイエノールト(オランダ1部)へ移籍したFW上田綺世などが挙げられる。ここでは、筆者が今季ブレイクしたと感じる若手8選手の特徴や活躍を紹介していく(所属クラブ名は12月19日時点の情報に基づく)。

今季ブレイク!次代の日本代表を担う若手選手8傑【J1リーグ2024】

FW木村勇大(東京ヴェルディ)

1人目は、今シーズン京都サンガより東京ヴェルディに期限付きで加入したFW木村勇大を挙げたい。がっちりした体格を生かしたポストプレーやドリブル突破、更に両足どちらからでも高精度のシュートを放つことが出来るいわゆる“万能型FW”である。

小学生時代、東京Vやヴィッセル神戸の下部組織に所属し、関西学院大学4年次に特別指定選手として京都サンガに入団した木村。1年目の2022シーズンは公式戦7試合出場で1得点(YBCルヴァンカップ)、2年目となる2023シーズン途中で当時J2のツエーゲン金沢へ期限付きで移籍した。金沢でも公式戦10試合出場1得点となかなか思うような結果が出なかった。

2024シーズン、16年振りにJ1へと昇格した東京Vへ期限付きで移籍した木村は、開幕戦からスタメンに抜擢されると第2節の浦和レッズ戦で先制点をマーク。木村自身のJ1初ゴールでもあった。続く第3節セレッソ大阪戦でも2試合連続ゴールを挙げ、その後もコンスタントに得点を重ねると今シーズンは公式戦38試合に出場し11得点(リーグ戦10、天皇杯1)2アシスト(全てリーグ戦)をマークし、大飛躍を遂げた。この活躍を受け、東京Vは木村の完全移籍に向けた交渉を進めていることだろう。

今季ブレイク!次代の日本代表を担う若手選手8傑【J1リーグ2024】

DF濃野公人(鹿島アントラーズ)

2人目は名門・鹿島アントラーズで大卒の新人選手として31年ぶりに開幕スタメンを勝ち取ったDF濃野公人を挙げたい。学生時代からフォワードやトップ下など前線の攻撃的なポジションを主戦場としていたが、大学3年次に右サイドバックへとコンバート。
元フォワードの経験を活かした絶妙なポジショニングやオーバーラップにはサッカーIQの高さが窺える。

サイドバック歴が2年とは思えないほどの活躍で、今後更に経験を積めば、元日本代表で長年活躍したDF内田篤人氏のように世界を代表する右サイドバックへと成長するポテンシャルを持っている。

2024シーズンはJ1第32節の湘南ベルマーレ戦で右膝外側半月板損傷の怪我を負ってしまい、以降6試合を欠場したものの公式戦36試合に出場し9ゴールを挙げてJ1ベストイレブンに輝くなどルーキーイヤーにしてはこれ以上ない好成績を残している。まずは怪我の完治が優先だが、来季の更なる活躍も期待したい。

今季ブレイク!次代の日本代表を担う若手選手8傑【J1リーグ2024】

FW坂本一彩(ガンバ大阪)

3人目は、2022年の高校卒業と同時に当時在籍していたガンバ大阪ユースからトップチームに昇格したFW坂本一彩。チュニジア代表FWイッサム・ジェバリや元日本代表のFW宇佐美貴史ら前線にタレントを揃えるG大阪でプロ1年目から公式戦15試合1得点と活躍。2年目の2023シーズンはJ2ファジアーノ岡山へと期限付き移籍し、公式戦26試合出場4得点1アシストと着実にステップアップを遂げた。

3年目となる今季は再びG大阪へ復帰し開幕戦でスタメンに抜擢されると、ボールを受けてから素早いターンで攻撃のビルドアップに貢献するなど前線からのプレスで攻撃の起点となるシーンが目立つように。公式戦43試合出場11ゴール(リーグ戦10、天皇杯1)1アシスト(リーグ戦)と飛躍したシーズンとなった。

今季を振り返ると、ゴール直前にフリーの坂本のもとにボールが転がるシーンが多く、“ゴール前の嗅覚”に優れていると言えるだろう。その姿は元日本代表のFW大黒将志氏を彷彿とさせる。来季も同程度以上の成績を残すことができれば、海外クラブからのオファーも殺到するであろう。

今季ブレイク!次代の日本代表を担う若手選手8傑【J1リーグ2024】

DF関根大輝(柏レイソル)

4人目は、主戦場とするサイドバックや高校までプレーしていたセンターバック、どちらのポジションも高いレベルでプレーできる現役大学生JリーガーのDF関根大輝。187センチの上背を生かした空中戦の強さや高校サッカーの名門静岡学園で培った足元の巧さが特徴だ。


今年4月のAFC(アジアサッカー連盟)U-23アジアカップやパリオリンピックのU-23代表メンバーに選出されており、いずれも過密な日程で大会が進行するなか、関根は豊富な運動量に加え当たり負けしないフィジカルの強さ、足元の技術力の高さを世界に見せつけた。そして10月には、JリーグやU-23日本代表での活躍が森保一監督の目に留まり、負傷選手の代替えでA代表初選出。11月にも追加召集されている。出場こそ叶わなかったが、A代表デビューする日はそう遠くないだろう。

今シーズンの柏では、積極的な攻撃参加や随所にチャンスを窺うシーンも多かったが、出場した公式戦32試合(リーグ31、天皇杯1)では得点・アシスト共にゼロ。守備面では前線に駆け上がるタイミングを誤り、相手選手と入れ替わってピンチを招くなど課題も多い。守備や得点、アシストと数字に残る活躍が出来れば更にワンランク上の選手になるだろう。

今季ブレイク!次代の日本代表を担う若手選手8傑【J1リーグ2024】

FW福田翔生(湘南ベルマーレ)

5人目には湘南ベルマーレからプロ4年目のFW福田翔生を挙げる。J3のFC今治やY.S.C.C.横浜を経て2023シーズンに湘南へと個人昇格を果たしている。相手の裏を取ることが出来るスピードに加え、当たり負けしないフィジカルの強さを兼ね備えている。相手を背負い無理にでも前を向くことが出来るなど、チームとしては心強いだろう。

プロ1年目となった2021シーズンの今治時代は、ウィングを主戦場としてJ3リーグ12試合出場ノーゴールノーアシスト。翌2022シーズンにYS横浜へ移籍すると、当時の星川敬監督の提案でセンターフォワードへとコンバート。
ウィング時代はボールを受けに行くポジショニングを取っていたが、コンバート後は、相手の背後を狙うなど意識を変えJ3リーグ21試合11得点とFWとして才能を開花させた。この活躍を受けて2023シーズンよりJ1の湘南へと移籍を果たした。

移籍初年度こそ公式戦11試合(リーグ戦10、天皇杯1)でノーゴールと結果が振るわなかったが、在籍2年目の今シーズンは公式戦38試合で11ゴール(リーグ戦10、ルヴァン杯1)4アシスト(リーグ戦)と覚醒。相手からのマークが厳しくなることが予想される来季に今季以上の活躍を見せられれば、昨夏ブラックバーン・ローバーズ(イングランド2部)に移籍したFW大橋祐紀のように海外クラブへとステップアップする日も遠くないはずだ。

今季ブレイク!次代の日本代表を担う若手選手8傑【J1リーグ2024】

MF田中聡(湘南ベルマーレ)

6人目は同じく湘南のMF田中聡。特徴はなんといっても「守備強度の高さ」ではないだろうか。今シーズンも相手選手とのイーブンなボールをものの見事にマイボールにしてきた。短所である戦術理解度が上がれば、同クラブOBで現在リバプール(イングランド1部)で活躍するMF遠藤航のように更に大化けする可能性は高い。

今シーズンは持ち前の守備強度の高さからデュエルを制し、相手の攻撃チャンスをことごとく潰してきた。さらに今季は公式戦36試合出場5ゴール4アシスト(全てリーグ戦)と数字でも結果を残した。

しかし見つかった課題も多い。田中が務めるボランチは中盤に位置し攻守の要となるため、いわゆるチームの心臓的な存在だ。前線やサイドでプレーするポジションとは異なり、ある程度どっしりと構えている必要がある。
持ち前の瞬発力を生かし広範囲に顔を出してきた田中だが、その結果ボールが相手に渡ってしまったケースもある。その際、広大なスペースが生じ、いくつものピンチを招いてしまうシーンも見受けられた。カバーに行くか否かを瞬時に判断する能力が身に付けば、チームとしても守備のリスクヘッジが可能である。弱冠22歳の田中。来季更なる飛躍を遂げることが出来るのか、そのプレーに一層注目が集まる。

今季ブレイク!次代の日本代表を担う若手選手8傑【J1リーグ2024】

FW山田新(川崎フロンターレ)

7人目には2024シーズンJリーグ優秀選手賞に輝いたFW山田新を挙げる。スピードとパワーを兼ね備えたパワフルなドリブル突破が特徴の山田。空いたスペースに向かい勢いよくゴールに迫る姿は“人間ブルドーザー”とも称されている。そんな山田に付いた異名が『シン・ヤマダ』。言わずと知れた人気特撮映画『シン・ゴジラ』をイメージしたものであり、ゴジラのような突破力を持つことから名づけられた。試合会場で『シン・ヤマダ』と描かれたゲートフラッグを目撃したファンやサポーターも多いだろう。

プロ1年目の2023年は公式戦42試合に出場し6ゴール(リーグ戦4、天皇杯1、ルヴァン杯1)3アシスト(リーグ戦2、天皇杯1)とまずまずの結果に。プロ2年目の今シーズンは公式戦51試合出場21ゴール(リーグ戦19、天皇杯1、ACL1)、4アシスト(リーグ戦3、ACL1)と成長を遂げている。


今シーズンのJ1得点ランキングでは19ゴール3位の成績を残した山田。海外クラブからも熱視線が送られていることだろう。

今季ブレイク!次代の日本代表を担う若手選手8傑【J1リーグ2024】

DF高井幸大(川崎フロンターレ)

8人目は今シーズンのJリーグベストヤングプレイヤー賞に輝き、怪我人続出の川崎ディフェンス陣を救ったニューカマーDF高井幸大。身長192センチと強靭なフィジカルを持ち合わせており、対人には絶対の自信を持っている。更にディフェンダーながら足元の技術も高く万能型DFと言えるだろう。

今シーズン、開幕スタメンを勝ち取った高井だが徐々に出番が減少。しかし、リーグ戦が進むにつれ出場機会を伸ばし、出場した試合では持ち前のフィジカルを生かして今季得点王のFWアンデルソン・ロペス(横浜F・マリノス)やFWジャーメイン良(ジュビロ磐田)など、得点ランキング上位のFW選手が相手でも当たり負けないプレーを披露。更に最終ラインでボールを持った時の落ち着きぶりはベテランの域に達している。

海外クラブからの関心も高いと思われ、順調にいけば来夏ビッグオファーが提示されてもおかしくはなさそうだ。
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