そんなシーズンを前に、各クラブは積極的な補強の動きを見せている。特に昨季惜しくも昇格を逃した上位勢を中心にその動きは顕著であり、J1クラブから完全移籍で選手を迎えたクラブも複数ある。ここでは、そんなJ2各クラブのなかでも今冬の補強で戦力アップに成功した6クラブについてランキング形式で紹介していく。

6位:ジェフユナイテッド千葉
主なIN選手- GK若原智哉(京都サンガより完全移籍)
- GKホセ・アウレリオ・スアレス(加入)※昨季まで徳島ヴォルティス所属
- DF河野貴志(ブラウブリッツ秋田より完全移籍)
- DF鳥海晃司(セレッソ大阪より完全移籍)
- FW石川大地(ロアッソ熊本より完全移籍)
- FWデリキ(アトレチコ・ゴイアニエンセより期限付き移籍)
- GK藤田和輝(期限付き移籍期間満了に伴いアルビレックス新潟へ復帰)
- DF佐々木翔悟(ガンバ大阪へ完全移籍)
- DF岡庭愁人(レノファ山口へ期限付き移籍)※昨季はFC東京より期限付きで加入
- FW小森飛絢(シント=トロイデンVVへ期限付き移籍)
「今季こそ昇格を」とさらにJ1への想いを強めたのは間違いないだろうが、今冬は主力の流出も多くあった。正確なフィードやロングシュートで見せ場を作ったDF佐々木翔悟や、精度の高いクロスからチャンスを量産していたDF岡庭愁人が移籍。さらに、大卒2年目にして昨季J2得点王に輝いたFW小森飛絢が海外挑戦と、攻守両面で大きな痛手と言える動きが見られた。
しかし、それでも千葉の今冬補強が成功と言える要因が新たに加わる頼もしい選手たちの存在。小森の抜けた最前線には、昨季ロアッソ熊本で10ゴールを挙げたFW石川大地が加入。2023シーズンには怪我で離脱するまでの17試合で9ゴールと得点力を爆発させており、早期にチームへフィットすれば昨季の小森超えも十分にあり得る。
失った戦力は大きいが、それを感じさせないほどの補強が叶った千葉。昇格に向けて、攻守ともにより安定感を持って戦える見通しが立ったと言えようことから戦力アップに成功したクラブ6位とした。

5位:ジュビロ磐田
主なIN選手- GK阿部航斗(アルビレックス新潟より完全移籍)
- DF江﨑巧朗(ロアッソ熊本より完全移籍)
- MF金子大毅(京都サンガより完全移籍)
- MF藤原健介(ギラヴァンツ北九州への期限付き移籍より復帰)
- MF為田大貴(セレッソ大阪より完全移籍)
- MF倍井謙(名古屋グランパスより期限付き移籍)
- FW佐藤凌我(アビスパ福岡より完全移籍)
- DF伊藤槙人(横浜FCへ完全移籍)
- DF高畑奎汰(V・ファーレン長崎へ完全移籍)
- DF鈴木海音(東京ヴェルディへ完全移籍)
- MF山田大記(引退)
- MF平川怜(東京ヴェルディへ完全移籍)
- FWジャーメイン良(サンフレッチェ広島へ完全移籍)
再び過酷なJ2リーグへ戻ってしまった磐田だが、求められるのは当然1年でのJ1復帰。しかし、降格の影響からか昨季のチームトップスコアラーであるFWジャーメイン良をはじめ、これからの磐田を支える活躍も期待されたDF高畑奎汰、MF平川怜といった若手が流出。頼れる背番号「10」MF山田大記も引退し、失った戦力が大きいことは誰の目にも明らかだろう。それでも、新加入選手たちの顔ぶれを見れば十分にプラスに転じたと言える。
守備陣にはアルビレックス新潟でGK小島亨介とポジションを争ったGK阿部航斗に、昨季ロアッソ熊本で全試合に出場したDF江﨑巧朗を迎えた。さらに中盤では、サイドでのチャンスメイクに期待のMF為田大貴とMF倍井謙に加え、中央でもパス捌きやボール奪取力に定評のあるMF金子大毅を獲得。
流出した選手たちを見ると、今季に向けて懸念もあるのは間違いない。しかし、新加入選手たちは軒並みJ1でスタメンとして活躍できるような選手ばかり。悔やまれる移籍がありながらも、充実した補強となったことから戦力アップに成功したクラブ5位とした。

4位:ベガルタ仙台
主なIN選手- DF井上詩音(名古屋グランパスより完全移籍)
- MF武田英寿(浦和レッズより完全移籍)
- FW宮崎鴻(栃木SCより完全移籍)
- FWグスタボ(SCラインドルフ・アルタッハより完全移籍)
- FW荒木駿太(町田ゼルビアより完全移籍)
- GK小畑裕馬(アビスパ福岡へ完全移籍)
- DF小出悠太(ヴァンフォーレ甲府へ完全移籍)
- FW中島元彦(期限付き移籍期間満了に伴いセレッソ大阪へ復帰)
今季こそ昇格を果たすべく冬の補強に注目が集まるなか、残念ながら得点源であったFW中島元彦が所属元であるセレッソ大阪へ復帰。加えて、守備の要であったDF小出悠太や生え抜きのGK小畑裕馬といった選手たちがチームを去ったが戦力流出は最小限に抑えられたと言っていい。その上で、新戦力には2023シーズンにルーキーながらヴァンフォーレ甲府で主力としてJ2を戦いAFCチャンピオンズリーグ2023/24にも出場したDF井上詩音や、左足での正確なキックが魅力のMF武田英寿といったJ2経験のある若手が加入。そして新たな得点源になり得る選手として、長身の屈強なFW宮崎鴻に豊富な運動量を誇るFW荒木駿太、さらに過去名古屋グランパスやロアッソ熊本でのプレー経験もあるFWグスタボを獲得。最前線にも強力な選手たちを迎えた。
チャンスメイクからゴールまで、幅広い役割を高いレベルでこなしていた中島がチームを去ったことは残念だが、各ポジションに楽しみな選手たちが加わった仙台。

3位:モンテディオ山形
主なIN選手- GKトーマス・ヒュワード=ベル(ウェスタン・ユナイテッドより加入)
- MF吉尾海夏(横浜F・マリノスより完全移籍)
- MF野嶽寛也(鹿児島ユナイテッドより完全移籍)
- MF中村亮太朗(鹿島アントラーズより完全移籍)
- MF田中渉(鹿児島ユナイテッドへの期限付き移籍より復帰)
- FWベカ・ミケルタゼ(光州FCより加入)
- GK後藤雅明(V・ファーレン長崎へ完全移籍)
まず大きいのは主力のほとんどがチームに残留した点。昨冬は新戦力に期待の選手を数多く迎えた一方で、攻守ともに柱と呼ぶべき選手を複数失っていたが、今冬チームを離れた主力はほぼGK後藤雅明のみ。もちろん加入以降プレーオフ進出にも大きく貢献してきた守護神が昇格を争うライバルでもあるV・ファーレン長崎に移籍したことは痛手だが、上位を狙う他クラブと比較して流出が少ないことは大いに評価できる。新守護神候補に元オーストラリアU-23代表のGKトーマス・ヒュワード・ベルを獲得。さらに中盤には、昨季清水エスパルスのJ2優勝にも貢献したMF中村亮太朗や鹿児島ユナイテッド生え抜きのMF野嶽寛也、昨年は韓国の済州ユナイテッドFCへ武者修行に出ていたMF吉尾海夏と注目選手を複数加えた。また、鹿児島への期限付き移籍から復帰のMF田中渉も昨季は33試合出場とシーズンを通してJ2で主軸を務めており、山形で成長ぶりを見られるのが楽しみな存在だ。そして最前線には昨年のAFCチャンピオンズリーグエリート2024/25のリーグステージ横浜F・マリノス戦で1ゴール1アシストと存在感を見せたFWベカ・ミケルタゼを補強している。
シーズン前半戦の過ごし方が課題の山形にとって、選手の流出を最小限に抑えられたことは確かなプラス要素。

2位:RB大宮アルディージャ
主なIN選手- DFガブリエウ(横浜FCより完全移籍)
- MF安光将作(カターレ富山より完全移籍)
- MF谷内田哲平(京都サンガより完全移籍)
- FW豊川雄太(京都サンガより完全移籍)
- FWカプリーニ(横浜FCより完全移籍)
- MF泉澤仁(FC岐阜へ完全移籍)
J2復帰初年度となる今季、大宮は昨季J3を圧倒した勢いを活かしJ1まで駆け上がると言わんばかりに積極的な補強に動いている。注目したいのは横浜FCより加入の2名の外国籍選手。DFガブリエウは長身を活かした空中戦の強さが武器で、守備のみならずセットプレーの場面など攻撃面でも大いに貢献できる。FWカプリーニは突破力や強烈なミドルシュートから得点に関わる働きが可能だ。
もちろん、日本の新戦力も大いに期待できる選手ばかり。京都サンガより加入したFW豊川雄太の得点力やMF谷内田哲平の質の高いパス、さらにカターレ富山をJ2昇格に導いたMF安光将作も加え中盤から前の選手層は数段増した。残念ながらベテランのMF泉澤仁などチームを離れた選手もいるが、一方で昨季期限付きで加入し大宮を支えたFW杉本健勇やMF泉柊椰といった選手が完全移籍へ移行となり残留している。大きな戦力を失うことなく充実の補強が実現したことから、戦力アップに成功したクラブ2位とした。

1位:V・ファーレン長崎
主なIN選手- GK後藤雅明(モンテディオ山形より完全移籍)
- DF高畑奎汰(ジュビロ磐田より完全移籍)
- DFエドゥアルド(横浜F・マリノスより完全移籍)
- MF山口蛍(ヴィッセル神戸より完全移籍)
- GK若原智哉(ジェフユナイテッド千葉へ完全移籍)※昨季は京都サンガより期限付きで加入
- DF田中隼人(期限付き移籍期間満了に伴い柏レイソルへ復帰)
- MF秋野央樹(アビスパ福岡へ完全移籍)
あと一歩のところで涙を飲んだシーズンを終え、今冬はどこよりも積極的かつ効果的な補強に動いた。特に話題となったのが、昨季J1を制したヴィッセル神戸の主将MF山口蛍の加入だ。能力、経験はもちろん新たな精神的支柱としての働きにも期待大な頼もしい戦力が加わった。さらに、守備陣では新守護神候補としてGK後藤雅明を獲得。昨季までモンテディオ山形を3年連続のプレーオフ進出へと導いたJ2で確かな実績を誇る選手の獲得に成功している。
また、過去に川崎フロンターレや横浜F・マリノスでJ1優勝を経験しているDFエドゥアルドや2023シーズンに大分トリニータで活躍し昨季はジュビロ磐田でJ1を経験したDF高畑奎汰も加え、守備陣はより分厚くなった。昨季の躍進を支えたMFマテウス・ジェズスら強力な外国籍選手もその多くがチームに残留。一部MF秋野央樹ら主力選手の流出はあったが、概ねプラスの要素のみと言える補強が叶ったことから、戦力アップに成功したクラブ1位とした。注目の新戦力たちが、前年及ばなかった“あと1歩”を詰める存在となれるか。昇格の大本命の1つとして長崎のさらなる躍進に期待したい。