今季のJ3は、昨季の上位3クラブの昇格と入れ替えでJ2から降格となった栃木SC、鹿児島ユナイテッド、ザスパ群馬の3クラブが1年での復帰を目指す。また、昨季最下位となったいわてグルージャ盛岡に加えて、入れ替え戦を経てY.S.C.C.横浜がJFL(日本フットボールリーグ)へ降格となり、新たに栃木シティと高知ユナイテッドSCが参入。また違った顔ぶれの20チームで争われることとなった。
そんな新たなシーズンに向けて、この冬上位カテゴリーと同様J3でも積極的な補強の動きが見られた。J1やJ2の各クラブあるいはJ3のライバルクラブから選手を獲得し戦力アップを図ったクラブもある一方、残念ながら昨季までの主力が数多くチームを離れたクラブも出ている。ここでは、今季J3リーグを戦う20チームの中から、この冬の移籍により戦力ダウンが心配されるクラブを3つランキング形式で紹介していく。

3位:ザスパ群馬
主なOUT選手- GK櫛引政敏(レイラック滋賀へ完全移籍)
- DF酒井崇一(カターレ富山へ完全移籍)
- DF中塩大貴(SC相模原へ完全移籍)
- MF川上エドオジョン智慧(藤枝MYFCへ完全移籍)
- MF天笠泰輝(大分トリニータへ完全移籍)
- FW佐藤亮(愛媛FCへ完全移籍)
- FW川本梨誉(ブラウブリッツ秋田へ期限付き移籍)※昨季は清水エスパルスより期限付きで加入
- MF山内陸(ヴァンラーレ八戸より完全移籍)
- MF西村恭史(AC長野パルセイロより完全移籍)
- MF加々美登生(いわてグルージャ盛岡より完全移籍)
- FW青木翔太(ブラウブリッツ秋田より完全移籍)
- FW田中翔太(ガイナーレ鳥取より完全移籍)
失意のシーズンから立て直しを図りたい今季だが、残念ながら今冬抜けた選手たちの穴は大きい。2シーズン連続期限付き移籍で加入し、昨季も主力として21試合出場し3ゴール2アシストと結果も残したFW川本梨誉の移籍は致し方ないだろう。しかし、その他にも攻撃での働きが大きかった選手で言えば2023シーズン躍進の立役者であり左足のキックが魅力のFW佐藤亮や、推進力が武器のMF川上エドオジョン智慧が移籍。
また、守備面でも選手の流出が目立つ。中盤の刈り取り役であったMF天笠泰輝や最終ラインでもDF酒井崇一とDF中塩大貴を失った。ベテランGK櫛引政敏もチームを去り、今季はほぼ1からの立て直しを余儀なくされている。とはいえ、戦力流出の影響を和らげるだろう補強もできている。中盤に加わる選手ではMF山内陸、MF西村恭史、MF加々美登生の3名には特に注目したい。いずれも昨季チームの主軸を務め、積極的に得点にも絡める選手なだけに得点力不足の解消に向けても大きな補強と言えよう。前線にはガイナーレ鳥取よりFW田中翔太を獲得。昨季は途中出場も多いながら37試合に出場し8ゴールと得点力は折り紙付きであり、新たな得点源として重要な存在となるに違いない。
一昨年の躍進を支えた選手たちが多くチームを去ったことから戦力ダウンが心配なクラブ3位とした。その一方で、新戦力はなかなかに粒ぞろいであり、何より今季の群馬が身を置くJ3で直近のシーズンを戦い結果を残してきた選手が多いことは頼もしい。再起を図る群馬にとって勝負の年となる今季、新加入選手たちが輝けるかがチームの将来をも左右するのかもしれない。

2位:栃木SC
主なOUT選手- MF大森渚生(水戸ホーリーホックへ完全移籍)
- MF石田凌太郎(ブラウブリッツ秋田へ完全移籍)※昨季は名古屋グランパスより期限付きで加入
- MF森俊貴(栃木シティへ完全移籍)
- FW奥田晃也(水戸ホーリーホックへ完全移籍)
- FW大島康樹(ヴァンフォーレ甲府へ完全移籍)
- FW宮崎鴻(ベガルタ仙台へ完全移籍)
- FW南野遥海(期限付き移籍期間満了に伴いガンバ大阪へ復帰)
- MF大森博(徳島ヴォルティスより期限付き移籍)
- FW棚橋尭士(徳島ヴォルティスより期限付き移籍)
今季求められるものは当然1年でのJ2復帰。しかし、降格の影響もあってかこの冬は多くの主力選手がチームを離れた。特に攻撃陣の戦力流出は大きな痛手と言える。昨季期限付きで加入してチームトップの7ゴールを挙げたFW南野遥海が所属元へと戻り、同じく昨季の新戦力であるFW奥田晃也も移籍。さらに、長身のFW宮崎鴻や加入から6シーズンチームを支えたFW大島康樹もそれぞれJ2クラブへ移籍となっており、昨季の低迷要因の1つでもある得点力不足に拍車が掛かりかねない事態となった。
また、中盤でもサイドからのチャンスメイクが魅力のMF森俊貴らがチームを離れており、そもそものチャンスの数にも影響が出るであろう。もちろん新たに加わった選手もまた多数いる。中でも注目なのは徳島ヴォルティスより期限付きで加入のFW棚橋尭士の存在。昨季徳島では11試合出場で2ゴールをマークし、夏にSC相模原へ期限付き移籍すると5試合出場で3ゴールと出場試合数は決して多くない中で結果を出している。
前線には不安要素もある一方で、守備陣は選手の流出を最小限に留めており安定感が期待できる。

1位:アスルクラロ沼津
主なOUT選手- GK武者大夢(ロアッソ熊本へ完全移籍)
- DF附木雄也(カマタマーレ讃岐へ完全移籍)
- DF濱託巳(カターレ富山へ完全移籍)
- DF安在達弥(福島ユナイテッドへ完全移籍)
- MF持井響太(FC今治へ完全移籍)
- FW津久井匠海(水戸ホーリーホックへ完全移籍)
- FW和田育(FC大阪へ完全移籍)
- DF三原秀真(愛媛FCより完全移籍)
前線では、昨季11ゴールを挙げてチームトップスコアラーとなったFW和田育と次いで9ゴールをマークしたFW津久井匠海が移籍。重要な得点源を複数欠くこととなった。中盤では、昨季完全移籍へと移行して37試合とほぼ全試合に出場したFW持井響太が移籍。ゴールに直結するプレーが魅力の中心選手も失った。さらに守備陣では両サイドを担ったDF濱託巳とDF安在達弥に加え、センターバックのDF附木雄也と守護神のGK武者大夢も流出している。
主力選手の大半がチームを離れることとなった一方で、補強については現状ルーキーあるいは他クラブの若手選手の獲得が多くを占めており決して十分とは言えないことから、戦力ダウンが心配なクラブ1位とした。上位進出に向けて転機となりそうなシーズンから一転窮地に立たされた沼津が、今季残留したメンバーに新戦力を加えてどこまで上に食らいつけるか注目だ。