福田は2013年に鹿屋体育大学在学中にJ1サガン鳥栖に特別指定選手として登録され、2015年に正式入団。J1湘南ベルマーレに移籍する前年の2019年までは主将も務めた。私生活では2016年、福岡を拠点に活躍するローカルタレント大戸千絵氏と結婚し、2人の子どももいる。しかし、「5年ぶり2度目の女性トラブル」という見出しで報じられたように、福田の女癖の悪さは、サッカー界では有名だった。
ここでは、福田のトラブルの詳細を追うと共に、特にプロ野球界と比較して明らかな差がある日本サッカー界のスキャンダル対応と現状について考察する。

福田の再三の女性トラブル
2020年11月、湘南に所属していた福田はチームの後輩の妻に「パンツちょうだい」などといった卑猥な内容のLINEを送り、その後輩選手がクラブに被害を訴えた。その1週間後、福田はJ2アルビレックス新潟へ移籍を余儀なくされた。当時、この件とは別に、アルビレックス新潟のFWファビオ(2022年引退)による酒気帯び運転や、ベガルタ仙台MF道渕諒平(現FKスメデレヴォ1924/セルビア)による女性への暴力が発覚し、いずれも逮捕され契約解除に至った不祥事が続発。当時のJリーグチェアマン村井満氏(現日本バドミントン協会会長)は、全クラブに対しコンプライアンスの遵守を徹底させるよう異例の声明を出すに至った。
福田は2022年に古巣の鳥栖に復帰すると中心選手として活躍。しかしチームは2024シーズン、J1最下位の20位で、初昇格から12年間守り続けてきたJ1から初降格。今季1年でのJ1復帰を目指して小菊昭雄新監督を迎え、2月15日のJ2開幕戦・ベガルタ仙台戦(駅前不動産スタジアム)へ向けて総仕上げとなる大事な時期に水を差された格好だ。
今年5月に33歳を迎える福田。
“再犯”とあって、福田が日本国内でサッカー選手として活動することはほぼ不可能だろう。前述の道渕は事件後、韓国2部の忠南牙山FCに活躍の場を求めたが、現地の女性団体が抗議デモを行い、クラブもこれに屈する形でたった3か月で退団となった。
“札付き”となった福田の獲得に動く海外クラブがすぐに現れるとも思えず、現実的に考えて福田が選手を続けるには、相当なマイナー国への移籍を覚悟しなければならないだろう。もちろん、福田がしたことは許されるものではない。今回の中絶トラブルも、湘南在籍時のセクハラ行為も女性蔑視を通り越して、その性癖は気持ち悪さすら感じさせ、もはや“つける薬無し”といった印象だ。

プロ野球界の女性スキャンダルと対応
福田の報道とほぼ同時期に、元乃木坂46の衛藤美彩を妻に持つプロ野球・西武ライオンズの源田壮亮内野手の不倫疑惑が『週刊文春』により報じられた(小学館の媒体から発せられたニュースが発端だった)。源田はキャンプ入りを前にした1月12日に謝罪会見を行い、自らの不倫を認めるとともに謝罪。これに対し球団側は、「家庭内での問題」としお咎めなしとした。
昨年末から今年にかけ、源田に加え、横浜DeNAベイスターズの東克樹投手、広島東洋カープの田中広輔内野手、東北楽天ゴールデンイーグルスの小深田大翔内野手が、次々と“文春砲”を浴び不倫を暴露されている。しかし、何らかの処分が下されたという話は聞かない。何事もなかったかのように、キャンプに参加しグラウンドに立ち続けている。
2023年、当時西武ライオンズの主砲だった山川穂高内野手に至っては、強制性交容疑で書類送検され球団側も無期限の出場停止処分を科したが、嫌疑不十分で不起訴となるとすぐに処分を解かれた。
程度の差こそあれ、これらは全て女性スキャンダルであり、山川に至っては性犯罪だ。福田の件に比べて、プロ野球界はなぜこれほどまでに甘いのだろうか。

出版社とプロ野球球団の関係
メディアは「報道の自由」を免罪符とし、有名人のスキャンダルを暴いている。その賛否は別として、そこには「報じる自由」と同様に「報じない自由」も含まれている。どういう意味か。例えば西武ライオンズと小学館の関係は深い。数多くのコラボイベントを開催し、小学館の人気漫画雑誌『コロコロコミック』とのコラボポスターなどが製作された上、2012年には女性向けファッション誌『Domani』に栗山巧外野手と片岡易之内野手(当時)がモデルとして登場した。
仮にその時点で小学館発行の『週刊ポスト』や『女性セブン』の記者が西武ナインのスキャンダルを掴んでいたとしても、共にビジネスパートナーであることから、記事化にはストップがかかっていただろう。出版社とて一営利企業だ。利害関係のあるステークホルダーも存在する。関係を維持することが、一選手の私生活を暴くことよりも優先されるのは企業の論理からすれば当然である。
なにもJリーガーがプロ野球選手のように、スキャンダルから守られるべきだと言っているわけでない。そもそも侍ジャパン(野球日本代表)クラスでも不貞行為をはたらく選手がゴロゴロいることは異常なのだ。
さらに言えば、プロ野球球団は不祥事を起こした選手が報道によって危うい立場に立たされれば、「出入り禁止(取材拒否)」という強硬手段に打って出ることもある。これは総合スポーツ誌『Sports Graphic Number』を発行している文藝春秋や、『Sportiva』を発行している集英社、数々のスポーツ書籍を発行している小学館などに対しては効果的な対処法となっている。

協会からも所属クラブからも守られないJリーガー
福田のケースは論外として、日本サッカー界は“スキャンダル慣れ”していないが故に、誰からも守られることなく選手が矢面に立たされることになる。2024年、『週刊新潮』で性加害疑惑が報じられた日本代表FW伊東純也(スタッド・ランス)のケースでも、クラブは伊東を信じ守ったが、日本サッカー協会はAFCアジアカップの真っ最中にも関わらず伊東を代表チームから追放。その後、不起訴処分が出たにも関わらず、7か月もの間代表招集を見送った。
また、ブンデスリーガのマインツに所属するMF佐野海舟は同じく2024年、鹿島アントラーズから移籍するタイミングで、不同意性交罪で逮捕された。仮に起訴されていれば初犯でも実刑の可能性があったのだが、不起訴処分となった。理由は明らかにされていないが、かなりハードな示談交渉があったのだろうと予想できる。そして彼を信じ見守ったマインツで、レギュラーとして大車輪の活躍を見せている。
しかし、2023年のW杯アジア2次予選と2024年のアジアカップで日本代表に選出された佐野だが、“ワケあり”の選手を敬遠する森保一監督に再び招集される可能性は限りなく低いだろう。
文春砲を浴びてもノーダメージでプレーを続けることが許されるプロ野球選手と比較すると、あまりにも不条理に思えるが、それが日本サッカー界の常識となっている。「推定無罪」の原則に則り、仮に犯罪を犯したとしても、罪を報い改心した選手に対しセカンドチャンスを与える欧州クラブと比べても、対照的な対応だ。
協会からも所属クラブからも守られないJリーガーにとって、不祥事は自身の選手生命に直結する。そして週刊誌にとって、地方クラブの1選手を社会的に抹殺することなど赤子の手をひねるようなものだ。
福田の度重なる淫行は許されることではないし、その処分も見合ったものだろう。しかしながら、プロ野球界との比較という視点で見ると、その差に愕然とさせられる。職を奪われた福田の立場に立てば、恨み節の1つも言いたくなるのではないだろうか。