2月14日に明治安田J1リーグが、続いて15日に明治安田J2・J3リーグが開幕。各地で熱い戦いが始まっているが、その下部リーグに当たるJFL(日本フットボールリーグ)が3月8日に、関東サッカーリーグ1部が4月(詳細日程は2月末発表)に開幕する。


現在、東京都をホームとするJクラブはFC東京(東京ガスサッカー部として1935年創立)、東京ヴェルディ(読売クラブとして1969年創立)、FC町田ゼルビア(FC町田として1977年創立)の3クラブだが、Jリーグ入りを目指し「Jリーグ百年構想クラブ」として認定された3クラブ(Criacao Shinjuku、南葛SC、東京23FC)や、その他にも将来的にJ入りを目指すクラブが存在する。

これらのクラブがすべてJ入りを果たすのは先のことになるだろうが、実現すれば東京は、サッカーの母国、イギリスの首都ロンドン並みのサッカータウンとなる。そんな日を夢見つつ、東京23区におけるスモールクラブの現在地と今後の展望を、それぞれのクラブが持つカラーとともに検証したい。

東京23区内でJリーグ入りを目指す7クラブ。抜け出すのはどこか

Criacao Shinjuku(JFL)

J入りを目指す東京のクラブの中で一歩リードしているのは、2022年からJFLに所属し降格のピンチを凌ぎながらも今季4年目のシーズンを迎えるCriacao Shinjuku(クリアソン新宿)だろう。

2005年に、当時立教大学在学中だった代表の丸山和大氏が、「プロにならなかった、あるいはなれなかったプレーヤーに、本気でプレーできる場を提供したい」という思いで、東京にある大学のサッカー同好会OBから選抜されたサッカーサークルとして立ち上げたクラブだ。

新宿という街にとことん寄り添い、地域貢献活動もチーム活動の一環とし、Jクラブもうらやむほどのスポンサー数を獲得している。

問題があるとすれば、昨2024年のJ3ライセンス取得に関する炎上騒ぎだろう。ホームスタジアムを定めず、建設計画も示されないまま、「東京23区というホームタウンの特性に鑑み」という理由で特例扱いされたのだ。これに対しては、同じく東京からJ入りを目指す他クラブのみならず、スタジアム基準を満たそうと奔走している地方クラブからも異論が上がった。

現在クリアソン新宿は、年2回、国立競技場でホーム戦を行っているが、なし崩し的に国立をホームスタジアムにしようとしているのではないかという疑念を抱かれているようだ。仮にJ3昇格を果たし国立をホームと定めるようなことがあれば、東京をホームとする他クラブ、特にFC東京、東京ヴェルディと摩擦を起こすことは必至だろう。

実力をつけ1つでも順位を上げることはもちろんだが、いつ昇格できてもいいようにスタジアム問題を決着させることが求められている。

東京23区内でJリーグ入りを目指す7クラブ。抜け出すのはどこか

南葛SC(関東サッカーリーグ1部)

葛飾区をホームタウンとし、サッカー漫画の不朽の名作『キャプテン翼』の主人公(大空翼)が所属するクラブと同じ名を冠したことで、全国的にその名を知られる南葛SC。オーナーは同作の著者、高橋陽一氏だ。


そのルーツは1983年、葛飾区立常盤中学校サッカー部OBを中心に結成された「常盤クラブ」であり、幾度かの改称を経て、現名称となっている。

2022シーズンから関東サッカーリーグ1部に昇格すると同時に、代表歴がある選手を次々と獲得するビッグネーム戦略を敢行。MF今野泰幸、MF稲本潤一(2024年引退)、FW関口訓充(現COEDO KAWAGOE FC)、DF伊野波雅彦(2022年引退)を加入させ話題を読んだ。現在の監督兼テクニカルダイレクターは川崎フロンターレ(2012-2016)や名古屋グランパス(2017-2019)でも指揮を執った風間八宏氏(セレッソ大阪アカデミー技術委員長と兼任)だ。

さらに2023年、JR新小岩駅近くに、J1スタジアム基準を満たす1万5,000人規模のスタジアムを建設する計画を発表。『キャプテン翼』のミュージアムも併設されるという。

J入りを目指すクラブがハード面の整備で苦戦する中、恵まれているといえるが、肝心の成績面が追いついておらず、関東1部リーグ4年目を迎える今季は一層の奮起が求められている。

東京ユナイテッドFC(関東リーグ1部)

「東大LB」と「慶應BRB」を源流に、2015年に創立された東京ユナイテッドFC。2021年から、横河武蔵野FCと合併する形で「東京武蔵野シティFC」に改称したものの、その2年後の2023年限りで合併を解消。2024年度から再び、J入りを目指し文京区をホームタウンに定めた「東京ユナイテッドFC」と、街クラブとしての道を選び武蔵野市を本拠地とする「横河武蔵野FC」に分かれた経緯がある。

トップチームは関東リーグ1部で“あと一歩”の好成績を続け、アマチュア部門の「東京ユナイテッドFC+Plus」、女子部門の「文京LBレディース」、ジュニアユース部門の「東京ユナイテッドソレイユFC」、さらにはバスケチームの「東京ユナイテッドバスケットボールクラブ」も抱えている。

ホーム戦を行う小石川運動場はJのスタジアム基準を満たしていないものの、実力的には申し分ない。プロ・アマチュア・アカデミーの3カテゴリーで形成される「三極体制」をモットーとし、胸スポンサーのみずほ銀行をはじめ、フクダ電子、文化シヤッター、講談社といった大企業のサポートも取り付け、その気にさえなれば、スタジアム問題も即座に解消されるのではないかという期待感もある。


東京23区内でJリーグ入りを目指す7クラブ。抜け出すのはどこか

東京23FC(関東リーグ1部)

2003年に「東京23SC」として創設され、2010年に現名称の「東京23FC」に改称した同クラブ。創立当初は2006年に解散した実業団クラブ「佐川急便東京SC」から退団した選手の受け皿として、「佐川東京23SC」と名乗っていたが、佐川急便側からの要望で改称したという歴史がある。

江戸川区をホームタウンに定め、スピアーズえどりくフィールド(江戸川区臨海球技場)をホームグラウンドとしている。Jリーグへの参入を目指すと同時に地域密着を方針とし、セカンドチーム、U-18、U-15、サッカースクールなど各年代のカテゴリーを展開している。

クラブ名にちなみ、毎月23日に選手・スタッフ総出で、地域住民とともに江戸川区で地域清掃活動「23クリーンプロジェクト」を行い、地域に根差した取り組みを行っている。

2016シーズンには羽中田昌監督の下、関東リーグ1部で優勝したものの、地域CL(全国地域サッカーチャンピオンズリーグ)で敗退し、惜しくもJFL昇格を逃した。その後、2021年には「Jリーグ百年構想クラブ」に認定されたものの優勝に届くことなく、昨2024シーズンも2位に終わった。

しかしながら他のクラブに先駆け、あくまでも東京23区にこだわり、ゆくゆくは「世界に通用するクラブになる」ことを目標に掲げている同クラブ。その経営姿勢は、東京23区内で活動するクラブの道標となっている。

エリース豊島FC(関東リーグ1部)

エリース豊島FCは、1970年、立教高校(現立教新座高校)サッカー部OBを中心に創立された。チーム発足時期の星座である牡羊座(aries)に因んで命名されたという。昨2024シーズンまで「エリース東京FC」という名称だったが、2024年12月に豊島区と「豊島区ホームタウン連携協定」を締結したことで、今季からクラブ名も改めた。

1995シーズンに関東リーグに初昇格。その後、関東2部、東京都1部への降格も経験したが、関東1部に復帰した昨2024シーズンは7位という成績を残し、残留に成功。
今年クラブ創設55周年の節目を迎え、創設年だけで言えばこれら各クラブの中で最も古い。

ジュニアユースチームを持つ一方、セカンドチームの「エリースラムズ」、エリースFCを引退したOBによる30代中心の「エリース東京クラシック」、40代から50代中心の「エリースゴールドカード」といったシニア年代のクラブが充実している点がこのクラブの特長でもある。

しかしながら、ホームゲームは清瀬内山運動公園やAGFフィールド、味の素フィールド西が丘などを転々としている現状で、スタジアム建設計画もないことから、現状ではクラブとしての基礎を築いている段階といっていいだろう。

東京23区内でJリーグ入りを目指す7クラブ。抜け出すのはどこか

SHIBUYA CITY FC(関東リーグ2部)

SHIBUYA CITY FC(渋谷シティFC)は、2014年、スポーツコンテンツプロデュース会社の株式会社dscマーケッターである山内一樹氏が代表を務め、SNSで出資者を募り、トークン(暗号資産)を活用した資金調達を実施する異色のクラブ。

創立当初は「TOKYO CITY FC」という名称で、2015シーズンから東京都4部9ブロック(世田谷区など)からスタートし、翌2015年東京都リーグに加盟。4部から年々カテゴリーを上げ、2019年に2部に昇格すると同時に運営会社、株式会社PLAYNEWを創業。株式会社サイバーエージェント出身の実業家である小泉翔氏が代表取締役CEOに就任し、元日本代表DF阿部翔平をクラブ史上初のプロ契約で獲得した。

「渋谷からJリーグを目指す」と宣言し、2021年にクラブ名を現在の名称に変更。渋谷区に本社を置く東急や伊藤園など220社を超える企業とスポンサー契約を締結し、翌2022年には元日本代表MF戸田和幸氏をテクニカルダイレクター(TD)兼コーチに招聘(戸田氏のSC相模原監督就任により1シーズンのみで退任)、2023年には現在JFA Proライセンスを受講している元U-21日本代表DF増嶋竜也氏を監督に招聘。昨2024シーズン、東京都1部リーグで2位に食い込み、今2025シーズンは関東リーグ2部で戦うことが決まっている。

元松本山雅FCのFW渡邉千真、元柏レイソルのMF三原雅俊といった元Jリーガーを積極的に獲得し、クラブ立ち上げから10年ほどで急成長を見せている。

2021年には代々木公園内に4万人規模のサッカースタジアムが建設される計画が報じられ、2030年までの完成へ向け、既に官民一体となって動き出しているという。この代々木スタジアムについては、FC東京、東京Vに加え、町田ゼルビアも本拠地移転を狙っていると噂されている。


スタジアム完成の暁には、この新スタジアムに見合うクラブになっている必要がある渋谷シティFC。いかにも渋谷らしい新たなアプローチでJ入りを目指す同クラブの今後に注目したい。

東京23区内でJリーグ入りを目指す7クラブ。抜け出すのはどこか

EDO ALL UNITED(関東リーグ2部)

昨2024シーズンの東京都1部リーグで優勝。関東圏の都道府県リーグ1部で上位に入った全16クラブがトーナメントで対戦する関東社会人サッカー大会決勝で渋谷シティFCに敗れたものの、JFLからの降格クラブがなかったため、今2025シーズン関東リーグ2部への昇格が決まったEDO ALL UNITED(江戸オールユナイテッド)。

クラブ名よりも、元日本代表MF本田圭佑を発起人に誕生したクラブと言った方が分かりやすいかも知れない。2020年、「全員参加型のリアルサカつく(セガのサッカークラブ経営シミュレーションゲーム『プロサッカークラブをつくろう!』)」をコンセプトとして発足した。

クラブ運営は月会費1万~5万円の会費を払えば誰でもなれる「オーナー」が担い、重要な決議事案の提案から決定まで、すべてオーナーの投票で決まるという斬新な経営スタイルを採用している。立ち上げからわずか1年で会員数は200人超え。ゼネラルマネジャー(GM)には作家の乙武洋匡氏、監督にはタレントの武井壮氏を起用し話題を呼んだだけではなく、月9ドルを支払い公式ファンクラブに入会すれば、経営内容のレポートを見ることができるという“サポーター参加型”のクラブだ。

関東リーグ2部を戦う今2025シーズンへ向け、元Jリーガーの14人もの新戦力が加入。戦力アップにも抜かりはない。

渋谷シティFC同様に、これまでの常識に囚われない経営スタイルを取るクラブだが、この方針でどこまで上に行けるか。
FC東京、東京V、町田ゼルビアといった既存のJクラブに相対していけるか。そして23区内にJクラブが誕生するのか。楽しみは尽きない。
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