いわてグルージャ盛岡は2024シーズンの明治安田J3リーグを最下位で終え、JFL(ジャパンフットボールリーグ)への降格が決定。1年でのJ3復帰を掛けて2025シーズンを戦うこととなった。
今シーズンのJFLは、同じくJ3から降格したY.S.C.C.横浜や昨季の地域CL(全国地域チャンピオンズリーグ)で優勝し同リーグ初参入の飛鳥FCなど全16チームで争われる。

ここでは、J3復帰を懸けて戦う盛岡の2025シーズンについて考察していく。
※実質は「Jリーグからの退会および入会」であるが、記事内では「JFLへの降格、J3への昇格または復帰」と記述。

JFLから再スタート!いわてグルージャ盛岡の挑戦【2025】

避けられなかった主力の流出

JFLへの降格が決定した昨シーズン終了後、契約満了選手を次々と発表した盛岡。2024年夏に期限付き移籍しシーズン途中での加入ながら4得点を挙げたFW河辺駿太郎や2018シーズンから7シーズンにわたり盛岡でプレーしたDF宮市剛のほか、ベテランのFW都倉賢やDF高橋峻希らが退団。さらに昨季5ゴールを挙げたMFオタボー・ケネスが1月に契約更新するも2月14日に栃木SC(J3)へ完全移籍するなど主力選手の流出が相次いだ。降格したチームの選手が他クラブへ移籍することはよくあることだが、これら主力の退団はチームにとって大きな痛手となり編成を見直す必要があるだろう。

JFLから再スタート!いわてグルージャ盛岡の挑戦【2025】

経験豊富なベテラン選手への期待

避けては通れない主力選手の流出だが、一方で経験豊富なベテラン選手の奮起に期待したい。チーム最年長で元日本代表のDF西大伍(37歳)は1月に契約を更新。さらにJ1でのプレー経験もあるFW藤本憲明(35歳)や元日本代表で欧州など海外でのプレー経験もあるMF小林祐希(32歳)が加入した。なかでも藤本は、2012年から2015年まで当時JFLの佐川印刷SC(後のSP京都/2015シーズンでJFL退会)でプレーしており、JFLからJ1まで4つのカテゴリーでの経験を持っている。

JFLは人件費面で厳しい状況にあるクラブも多く、大物外国籍選手や日本代表候補に挙げられる若手選手の獲得は不可能に近い。また、アルバイトをしながら生計を立てる選手もおり恵まれた環境とは言えない。

2024年7月にJリーグが発表した各クラブの経営情報によると、盛岡の2023年度トップチーム人件費は2億5500万円。
JFLに降格した今年はさらに削減されることも十分に考えられる。限られた予算の中で若手選手やアマチュア契約選手、ベテラン選手がそれぞれ融合しチームの完成度を高めていく必要がある。西や小林、藤本といった経験豊富な選手たちにはピッチ内外で盛岡をJ3へと導く活躍を期待したい。

JFLから再スタート!いわてグルージャ盛岡の挑戦【2025】

観客動員数と入場料収入問題

改めてJFLからJ3への昇格条件に目を向けると「優勝クラブがJ3へ昇格」「2位クラブはJ3最下位(クラブライセンスなど他の要件あり)との入れ替え戦に勝利した場合に昇格」となっており、最低でも2位以内に入ることが昇格の必須条件と言える。

J3への復帰には成績以外にも「1試合当たりの平均観客動員数2000人以上かつ年間入場料収入1000万円以上」という条件がある。昨シーズン、盛岡の平均入場者数は1試合あたり1,362人でテゲバジャーロ宮崎の1,164人に続くワースト2位。降格により今季はさらなる落ち込みが懸念される。無料招待券の配布で集客を増やす方法もあるが、入場料収入の条件もあることから実際にチケットを購入してスタジアムに足を運んでもらう必要がある。

盛岡のチケット価格は、中学生以上の料金がS自由席1,000円、A自由席500円と比較的手頃な設定だ。地域に密着したクラブとして、いかに観客数を増やすか。ホームタウン活動やスポンサー獲得に向けた取り組みなど広い意味での戦略が必要となるだろう。

JFLから再スタート!いわてグルージャ盛岡の挑戦【2025】

侮れないJFLのレベル

アマチュアリーグとはいえ、JFLのレベルは決して侮ることはできない。過去最多優勝を誇るHonda FCや昨季までJ3のY.S.C.C.横浜など手強いライバルクラブも少なくない。
また、J1やJ2でのプレー経験を持つ選手も複数在籍しており、そのレベルはJ3と大きな差があるとまでは言えない。実際、過去には天皇杯(JFA全日本サッカー選手権大会)で、JFLクラブのHondaが浦和レッズや横浜F・マリノスなどJ1チームに勝利する”ジャイアントキリング”を何度も起こしている。

2022シーズンにはJ2に所属していた盛岡。これまでの実績から当然優勝候補に挙げられてもおかしくないが、容易に勝てるリーグとは言えないのも事実。オフシーズンには経験豊富なベテラン選手の加入もあったが、1月30日に行われた中京大学とのトレーニングマッチでは1対1の引き分けに終わっている。盛岡が再びJ3で戦うためには、JFLで2位以内が必須。ほかにも入場者数や入場料収入などの課題をクリアしなければならないが、果たしてクラブはどう立ち向かうのだろうか。3月8日に開幕する今シーズンのJFL。選手やチームスタッフ、サポーターが一丸となって戦う盛岡に注目したい。
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