なぜこれほどまでに違いが生まれているのか。それぞれの現状を踏まえ、ともに新監督のもと戦う3クラブを分析する。

ジュビロ磐田の現状
今季からジョン・ハッチンソン氏が新指揮官に就任した磐田は、開幕戦で水戸ホーリーホックに3-2、第2節は鳥栖に1-0で勝利。スコアの推移は異なるものの前半をスコアレスで終え、後半に先手を奪って逃げ切るという形は共通している。それを可能にしているのが、人に対しタイトでアグレッシブな守備だ。DFラインを押し上げ、コンパクトな陣形で高い位置からプレスを敢行。相手のパスを寸断し流れに乗せない。相手からすれば背後を狙いたいところだが、フリーで蹴らせないためそれも容易ではない。
後半に入りややオープンな展開となると、左足の精度が抜群の右ウイングのMFジョルディ・クルークスを中心に速攻からゴールに迫り先制点を奪えている。細かな連携はまだ十分でないものの、守備と運動量をベースに、堅実に戦えているからこその2連勝だ。

サガン鳥栖の現状
小菊昭雄氏のセレッソ大阪でのキャリアは合計27年間にもわたる。アルバイトでの下部組織のコーチからスタートし、スカウトやトップチームのコーチを経て2021年8月からはC大阪で監督を務めた。そのため、同氏が鳥栖の新監督に就任したことは驚きだった。案の定、開幕戦ではベガルタ仙台に0-1、第2節は磐田に0-1といずれも敗戦。しかし、どちらも勝機がなかった訳ではない。全体のバランスを取りやすい4-4-2のシステムを採用し、ハードワークで拮抗した展開に持ち込んだ。
ただし、すべてをほぼ0から作り上げるにはあまりに準備期間が短かった。今怖いのは、結果が出ないために選手の自信が揺らぐこと。クラブはJ2優勝を掲げているだけに、メンタル的にも勝ち点的にも早期に1つ目の勝利を挙げられるかがカギを握りそうだ。

北海道コンサドーレ札幌の現状
岩政大樹氏が新監督となった札幌だが、ここまでは苦しい戦いが続いている。開幕戦では大分トリニータに0-2、第2節はロアッソ熊本に0-3と1点も奪えずに2連敗。ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督が築き上げた攻撃的なスタイルをさらに進化させるはずが、攻守ともに結果が付いてこない。それでも大分戦ではやりたいことは伝わった。
昨季までの主力の流出は比較的抑えられたものの、チームとしての核が明確でなく不調時に立ち返る場所もまだない。J2にはくせ者のチームが多く、自分たちのサッカーを高めるだけでなく相手の良さを消す工夫も必要となるだろう。

磐田と鳥栖・札幌の違いとは
昨季J1からの降格となった3クラブは、事情は違えどいずれも監督が交代となった。そのため、監督を継続したクラブとは序盤戦の完成度で差があるのは致し方ない。その中でどれだけ勝ち点を拾いつつ、順を追ってチーム作りを進められるかが求められる。すでに出来上がっている選手間の連携を役立てたり、個々の特長を発揮させ個の力で勝利をもぎ取ったりすることも必要だ。その点ではここまで、磐田のハッチンソン監督に分があったと言えるだろう。昨季の主力が多く残っているという強みはあるにせよ、FW佐藤凌我の運動量やMFクルークスの推進力とキック精度など、新戦力の個性を強みに勝ち点を積んでいる。
一方の鳥栖と札幌は一定の個を有しているはずが、チームにはめ込むなかで特長を発揮できているとは言い難い。また、起用法にも違いがある。磐田は勝てている影響もあるとはいえ、第1節と第2節は全く同じスタメンだ。戦術の浸透も進むだろう。鳥栖は磐田と同様に守備の整備を急ぎ、第1節と第2節でスタメンの変更は2人に抑えた。だが、昨季からあまりにチームが変わってしまった影響で連動性が欠けている。
札幌は主力の入れ替えは抑えられたものの、岩政監督の思い切った選手起用がここまでは裏目に出ているように思えてならない。また、サッカーは攻守が繋がっているため「良い攻撃は良い守備から」という先人の格言を守ることで、磐田のように勝ちながら戦術の浸透を図ることが可能になるのではないだろうか。