それぞれが良い意味でも悪い意味でもサプライズを見せているが、ここでは、ここまでアウェイでしか戦えていないいわゆる「雪国クラブ」に焦点を当てたい。序盤のアウェイ連戦は例年通りでありクラブ側も慣れっこになっているとはいえ、リーグ開幕後にも関わらず、一部クラブは練習すら地元で出来ない“長期キャンプ状態”は、やはり公平性に欠けると言わざるを得ない。
2026/27シーズンからの秋春制が決定しているJリーグだが、果たしてこの状態を放置したまま移行を強行してしまっていいのか。数十年に一度のレベルの豪雪に見舞われたから今冬だからこそ表面化した様々な問題点を示し、「12月第2週から翌年2月第3週」に予定されているウインターブレイクは適当なのか、、リーグ側が出来るサポートはあるのか、などを示し、来る秋春制を展望していきたい。

雪国クラブの2025シーズン第3節までの戦績
まずは、雪国クラブの第3節までの戦績は以下の通りだ。J1:アルビレックス新潟
第1節:横浜F・マリノス(日産スタジアム)1-1△、第2節:清水エスパルス(IAIスタジアム日本平)0-2●、第3節:鹿島アントラーズ(カシマサッカースタジアム)1-2●
J2:北海道コンサドーレ札幌
第1節:大分トリニータ(クラサスドーム大分)0-2●、第2節:ロアッソ熊本(えがお健康スタジアム)0-3●、第3節:レノファ山口(維新みらいふスタジアム)0-2●
J3:ヴァンラーレ八戸
第1節:ツエーゲン金沢(プライフーズスタジアム)4/27に延期、第2節:FC岐阜(長良川競技場)1-0○、第3節:ガイナーレ鳥取(Axisバードスタジアム)1-1△
J2:ブラウブリッツ秋田
第1節:FC今治(アシックス里山スタジアム)1-0○、第2節:愛媛FC(ニンジニアスタジアム)2-1○、第3節:藤枝MYFC(藤枝総合運動公園サッカー場)1-2●
J2:モンテディオ山形
第1節:RB大宮アルディージャ(NACK5スタジアム大宮)1-2●、第2節:水戸ホーリーホック(ケーズデンキスタジアム水戸)0-1●、第3節:ジェフユナイテッド千葉(フクダ電子アリーナ)2-3●
J3:福島ユナイテッド
第1節:奈良クラブ(ロートフィールド奈良)2-2△、第2節:テゲバジャーロ宮崎(いちご宮崎新富サッカー場)1-3●、第3節:FC琉球(タピック県総ひやごんスタジアム)1-0○
J3:松本山雅
第1節:ギラヴァンツ北九州(ミクニワールドスタジアム北九州)※4/26に延期、第2節:アスルクラロ沼津(愛鷹広域公園多目的競技場)1-1△、第3節:奈良クラブ(ロートフィールド奈良)1-2●
J3:ツエーゲン金沢
第1節:ヴァンラーレ八戸(プライフーズスタジアム)※4/27に延期、第2節:鹿児島ユナイテッド(白波スタジアム)2-1○、第3節:カマタマーレ讃岐(Pikaraスタジアム)1-1△
キャンプ地の高知をベースに序盤戦を戦っているJ2ブラウブリッツ秋田の健闘が目立つものの、秋田以外で、開幕3戦で勝ち越したチームは1つもない。降格組のJ2北海道コンサドーレ札幌は、岩政大樹新監督を迎えて再スタートを切ったが、勝ち点どころか得点さえ生まれず開幕3連敗を喫し、同じく昇格候補の1つに挙げられていたモンテディオ山形も開幕3連敗だ。J3ヴァンラーレ八戸とツエーゲン金沢に至っては、開幕戦からいきなり「延期」となった。
秋田は4節(3月9日山形戦/NDソフトスタジアム山形)までアウェイ戦を強いられ、大半のクラブは開幕後も、関西や四国、九州のキャンプ地をベースに各スタジアムへ移動している。雪国クラブの選手は自宅に帰ることすらできないでいるのだ。家族に会うこともできないストレスは数値化できるものではないが、心理的負担は余りあるものだろうと思われる。
仮に2026/27シーズンからの秋春制で取り入れられる「12月第2週から翌年2月第3週」にわたるウインターブレイクがあったとしても、おそらくその前後はアウェイ連戦を強いられることは必至だろう。

南国クラブの2025シーズン第3節までの戦績
一方、開幕3戦中2戦をホームで戦えることが“保証”されている「南国クラブ」の成績を以下に示す。J2:V・ファーレン長崎
第1節:ロアッソ熊本(PEACE STADIUM Connected by SoftBank)2-0○、第2節:レノファ山口(維新みらいふスタジアム)2-2△、第3節:ジュビロ磐田(PEACE STADIUM Connected by SoftBank)1-0○
J2:大分トリニータ
第1節:北海道コンサドーレ札幌(クラサスドーム大分)3-2○、第2節:いわきFC(クラサスドーム大分)0-0△、第3節:ベガルタ仙台(キューアンドエースタジアムみやぎ)0-2●
J2:サガン鳥栖
第1節:ベガルタ仙台(駅前不動産スタジアム)0-1●、第2節:ジュビロ磐田(ヤマハスタジアム)0-1●、第3節:FC今治(駅前不動産スタジアム)1-4●
J2:ロアッソ熊本
第1節:V・ファーレン長崎(PEACE STADIUM Connected by SoftBank)0-1●、第2節:北海道コンサドーレ札幌(えがお健康スタジアム)3-0○、第3節:RB大宮アルディージャ(えがお健康スタジアム)0-4●
J2:愛媛FC
第1節:カターレ富山(ニンジニアスタジアム)0-1●、第2節:ブラウブリッツ秋田(ニンジニアスタジアム)1-2●、第3節:水戸ホーリーホック(ケーズデンキスタジアム水戸)1-1△
J2:FC今治
第1節:ブラウブリッツ秋田(アシックス里山スタジアム)0-1●、第2節:藤枝MYFC(アシックス里山スタジアム)0-0△、第3節:サガン鳥栖(駅前不動産スタジアム)4-1○
J3:高知ユナイテッド
第1節:栃木SC(カンセキスタジアムとちぎ)0-1●、第2節:ガイナーレ鳥取(春野総合運動公園陸上競技場)0-0△、第3節:FC大阪(春野総合運動公園陸上競技場)1-2●
J3:テゲバジャーロ宮崎
第1節:長野パルセイロ(いちご宮崎新富サッカー場)0-1●、第2節:福島ユナイテッド(いちご宮崎新富サッカー場)3-1○、第3節:栃木SC(栃木県グリーンスタジアム)2-1○
J3:鹿児島ユナイテッド
第1節:SC相模原(白波スタジアム)カマタマーレ讃岐2-3●、第2節:ツエーゲン金沢(白波スタジアム)1-2●、第3節:栃木SC(相模原ギオンスタジアム)2-0●
J3:FC琉球
第1節:ザスパ群馬(正田醤油スタジアム群馬)0-0△、第2節:FC大阪(タピック県総ひやごんスタジアム)0-1●、第3節:福島ユナイテッド(タピック県総ひやごんスタジアム)0-1●
もちろん実力的な要因も大きいが、3戦無敗で乗り切っているJ2のV・ファーレン長崎と、開幕戦を落としたものの立て直して2連勝したJ3テゲバジャーロ宮崎以外は、日程的な“アドバンテージ”を生かし切れているとは言えない。降格組のJ2サガン鳥栖に至っては、開幕3連敗だ。
この歪な日程によって、逆に夏場のアウェイ連戦が待ち受けていることを考えれば、序盤で貯金を作っておきたいところだが、そう簡単には行かないようだ。雪国クラブに配慮したこの日程が、南国クラブにとっても悪影響を及ぼす可能性もある。
いずれにせよ、このままの状態で秋春制に突入すれば、不公平な日程となることは明らかだ。少しでも雪国クラブの負担を減らすにはどうすればいいのか。

「THE国立DAY」を雪国クラブのために適用しては?
Jリーグは、昨2024シーズンから「THE国立DAY」と称し、J1、J2合わせて13試合を国立競技場開催にしている。今2025シーズンも10試合が国立で開催される。この試みを、雪国クラブのために適用することはできないだろうか。「THE国立DAY」はもっぱらFC東京、東京ヴェルディ、町田ゼルビア、横浜F・マリノス、鹿島アントラーズ、さらにJ2のジェフユナイテッド市原・千葉といった関東のクラブのホームゲームとして開催される。しかし、ヴィッセル神戸や、昨2024シーズンはJ2だった清水エスパルスといった地方クラブがホームゲームを開催した例もある。
雪国クラブの立場に立てば、ホームゲームを中立地で開催されることへの抵抗は当然あるだろう。さらにJ2、J3でどれだけ集客できるのかという問題もある。しかしながら、普段は首都圏では見られない対戦を国立開催にすることで、新規ファンの開拓に繋がる可能性もあり、東京に暮らす雪国出身者にとって、応援するクラブを直接目にできるチャンスとも考えることもできよう。
さらにキャンプ地が首都圏であれば、選手が束の間のオフに帰宅することも可能となり、わずかではあるがストレスを減らすこともできるのではないだろうか。
人間がどれだけあがいても、自然現象に抗うことは不可能だ。そして秋春制導入以降、最大の敵となることも必定だろう。雪国クラブのホームスタジアムや練習場でのヒーティングシステムの設置が財政的に現実的でないならば、アイデアで乗り切るしかない。完全に「公平」な日程を組むことは不可能かもしれないが、「不公平感」をわずかでも減らすことはできるはずだ。
その中で、雪国クラブのホームゲームとして「THE国立DAY」を開催することは、アイデアの1つとして考え得ることができるのではないだろうか。