重要な局面を迎えた日本代表。過去苦しんだことも多いアジアの舞台で早々に突破を決められれば、戦術の整理や新戦力の発掘などにより多くの時間を割けるはず。その上で注目なのは、この3月シリーズの2試合(20日バーレーン戦、25日サウジアラビア戦)に臨む招集メンバーだ。
サウジアラビア戦は本大会出場が決定した後の試合となる可能性もあることから、これまで出場機会の少なかった選手あるいは未招集の選手を試す場にもなり得る。ここでは、そんな3月シリーズに向け招集に期待の開幕間もないJリーグで活躍する選手を、各ポジションごとに1名ずつ紹介していく。

GK小島亨介(柏レイソル)
昨季は最終17位で薄氷を踏む思いの残留となった柏レイソル。この冬には、チームの絶対的な支柱であったMFマテウス・サヴィオが浦和レッズに移籍するなど不安もあるなかで開幕を迎えていた。しかし、始まってみると開幕戦で今季初白星を挙げ、以降ここまで4戦負けなし。現在は得失点差でわずかに優位に立ち首位を走っている。そんな柏の好調要因の1つとして挙げられるのが、今冬新たに加わった選手たちの存在。即戦力を多数加え、それぞれが早速定位置を掴みチームにフィットし勢いをもたらしている。そのうちの一人、特にGK小島亨介を今回の代表に推したい。
日本代表では、最終予選が始まって以降GK鈴木彩艶(パルマ)が出場を続けている。一方で、その他の招集メンバーを見るとGK大迫敬介(サンフレッチェ広島)やGK谷晃生(町田ゼルビア)と小島にとって比較対象が国内組メインであることもプラスに捉えられる。新天地での活躍と所属クラブの好調ぶりから久々の招集はあるのか注目だ。

DF中野就斗(サンフレッチェ広島)
昨季サンフレッチェ広島でブレイクを果たしたDF中野就斗。今季も引き続きセンターバックや右サイドの主力として、開幕から3勝1分けと好調なチームを支えている。同チームには、いずれも日本代表として経験を持つDF佐々木翔やDF塩谷司、DF荒木隼人がおりハイレベルなポジション争いの中に身を置いていることも成長に作用していると言えよう。中央だけでなくサイドでもプレー可能なユーティリティ性が魅力。高い対人能力や豊富な運動量を活かした守備範囲の広さに加え、攻撃時には積極的に前に出て強烈なミドルシュートを放つなど、攻守に多くの武器を兼ね備えている。
現在の日本代表の守備陣は、センターバック、サイドバックともに欧州組が大半を占める。その上、3バックで臨んだ試合ではウイングバックにMF三笘薫(ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオン)やMF堂安律(SCフライブルク)といった攻撃的な選手を起用する場面も多く、国内組の付け入る隙がなかなかないのが現状だ。

MF田中聡(サンフレッチェ広島)
昨季は、優勝したヴィッセル神戸と勝ち点4差の2位でシーズンを終えたサンフレッチェ広島。直近3シーズンはいずれも3位以内と優勝まであと一歩に迫りながらも届かないもどかしさを払拭するため、今冬は数こそ多くはないものの即戦力をピンポイントで補強し開幕を迎えている。そんな新戦力のなかでも補強の目玉の1つに挙げられるのが湘南ベルマーレから加入したMF田中聡だ。昨年はパリ五輪のメンバー入りこそ叶わなかったものの、Jリーグでは年間を通して高いパフォーマンスを発揮。球際での強さを武器にボールを奪い取る能力に長け、また攻撃面でも積極的なシュートの姿勢を見せるなど存在感を発揮し5ゴール4アシストといずれも自己最多を更新する数字を残している。
新天地である広島でもここまで4試合すべてに出場しており、早くも信頼を勝ち得ていると言える。気がかりなのは、広島の主力選手すべてに言えることだが連戦続きによる疲労の蓄積。その点を除けば、今回の代表に招集されたとしても十分に活躍できる能力を持っていると言えよう。まだまだ22歳と伸び盛りの田中。日本代表デビューの日もそう遠くはないはずだ。

FW鈴木章斗(湘南ベルマーレ)
今季のJ1リーグでは、鹿島アントラーズのエースFW鈴木優磨やセレッソ大阪の新たな得点源として台頭しつつあるFW北野颯太、サンフレッチェ広島期待のルーキーFW中村草太など日本人FWの活躍が際立つ。昨季34試合に出場し10ゴールと自身初の二桁得点を挙げて湘南の残留に貢献した若手は、今季も開幕からスタメン出場を続けここまで3ゴールをマーク。得点力に加え前線で起点となる動きでもチームの攻撃を支え、昨季を超える活躍が大いに期待できるシーズン序盤を過ごしている。
湘南の点取り屋といえば、カタールW杯のメンバ―に選ばれ現在はドイツのホルシュタイン・キールでプレーするFW町野修斗や、昨年夏に欧州へ渡り11月には日本代表デビューも果たしたFW大橋祐紀(ブラックバーン・ローバーズ)が思い出される。21歳ながらもすでに二桁ゴールを挙げた実績を持ち、今季も引き続き代えの利かない存在として活躍を続ける鈴木は彼らと同じあるいはそれ以上のステージへ上る権利を十分に有していると言えよう。他のポジションと同様FWも比較されるのは欧州で活躍する選手ばかりだが、ポテンシャルの高さから早く代表で見てみたい選手の1人であることは間違いない。