AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)2024/25のラウンド16第2戦が、3月11日と12日に各地で行われた。川崎フロンターレは12日、本拠地の等々力陸上競技場にて上海申花と対戦。
第2戦の結果を受け、ラウンド16の2試合合計スコアが4-1に。敵地での第1戦を0-1で落とした川崎Fが意地を見せ、ファイナルステージ(準々決勝)進出を決めた。
ここではACLE上海申花戦を振り返るとともに、川崎Fの勝因を論評する。現地取材で得た川崎FのFWエリソンの試合後コメントも、併せて紹介したい。
ー長谷部監督のもとで、守備の規律が確立されている印象があります。チーム全体のプレッシング(最前線からの守備)の完成度について、エリソン選手はどのように感じていらっしゃいますか。
「鬼木前監督の頃から、本当に素晴らしいチーム作りが行われています。正直、鬼木監督と長谷部監督とでは戦術的な部分で(色合いが)違うのかなと思います。鬼木監督の場合、より攻撃的な色合いが強かったのかなと。
ー今日の試合でも、エリソン選手は前線からの守備のスイッチを入れる役割を担っており、これが素晴らしかったと思います。改めて自己評価をお願いしたいです。
「(相手選手の)マークという部分では、今は凄くチームとしてフィットしていると思います。今日の試合でも、みんなが集中して戦えていました。プレスのところは、長谷部監督から日頃より口酸っぱく要求されていますし、自分としてもプレスをかけるのは凄く好きなので、それを今日のゲームでうまく表現できたと思います。ただ、現状に満足せず、より良い形を出せるようにもっと努力していきたいです」
この試合における両クラブの基本布陣は、川崎Fが[4-2-3-1]で上海申花が[4-3-2-1]。ホームチームは相手ボール時に最前線のエリソンとMF脇坂泰斗(トップ下)が横並びになり、[4-4-2]へ隊形変化。キックオフ直後から、エリソンと脇坂を起点とするハイプレスを仕掛けた。
上海申花がゴールキックからパスを回し、同クラブDFアイディ・フランシスが自陣ペナルティエリアでボールを受けた前半1分には、エリソンがここへ寄せている。これにより上海申花のパス回しをサイドへ追いやると、タッチライン際に立っていたアウェイチームのDFチャン・シンイチに川崎FのFW伊藤達哉(右サイドハーフ)、上海のMFウー・シーにホームチームのMF河原創がそれぞれアプローチ。最終的に河原がボールを回収し、ここから川崎Fのサイド攻撃が始まった。
エリソンと脇坂が相手最終ラインからのパス回しを片方のサイドへ追いやるやいなや、ボールサイドに味方が集まり、相手選手をひとり残らず捕捉する。この緻密なハイプレスを長谷部監督のもとで身につけた川崎Fが、試合の主導権を握っている。上海申花の両サイドバック、MFウィルソン・マナファとチャン・シンイチがタッチライン際で最終ラインからのパス回しに関わることが多かったため、川崎Fとしては相手のパスワークを片方のサイドへ追い込みやすかった。
ーお伺いしたいのは、フロンターレの前線からの守備についてです。チームとしての約束事がだいぶ明確だと感じました。だからこそ、大きなピンチを招くことなく今日の試合を終えられたと私は思っています。今日出場した選手たちの守備のクオリティーについて、監督の評価をお伺いしたいです。あと、前線からの守備のスイッチを入れる役割としての、エリソン選手と山内選手の評価もお願いします。
「チームとしての守備についてですが、今日はあまり良いプレーがなかったと思います。決して悪くはなかったとも思いますが、良いボールの取り方が少なかった。大ピンチはありませんでしたけど、ディフェンシブサード(自陣ペナルティエリア付近)まで押し込まれるシーンもありました。
「2トップへの評価は、(山内は)PKを獲得しましたし、(エリソンは)PKで得点しましたから、当然評価は良いものです。ただ、もう少しできたんじゃないかな、もう少しチャンスを広げられたんじゃないかなというふうに思っています」
守備面での物足りなさを指摘されたエリソンは、上海申花戦でハイプレスの起点として存在感を発揮。脇坂とともに相手センターバックや相手GKにプレスをかけ、上海申花のパス回しをサイドへ追いやるための初動を完遂した。
上海申花戦後の筆者の取材において、エリソンは長谷部監督から守備面で多くを求められることへの充実感を口にしている。チームへのコミットメントの高さが窺える発言だった。
ーセントラルコースト・マリナーズ戦の後、エリソン選手の守備について長谷部監督にお訊きしました。そのときは「もう少しやれたのではないか」と監督が仰っていて、この評価を踏まえつつ今日の試合を拝見したところ、エリソン選手のプレスがより鋭くなったように見えました。やはり、長谷部監督から守備面の要求が多かったですか。
「監督が変わって(川崎Fの)ゲームスタイルも変わりましたので、監督のスタイルに早くフィットできるように日頃から意識して取り組んでいます。ただ、今シーズンは(現時点で)プレーする時間がそれほど多くなく、ゲーム感が少し欠けていたのかなと思います」
「ただ、今はフィジカル面の状態が良くなっていますし、ファーストディフェンダー(守備の起点)としての役割が重要であることも理解しています。監督から要求されるのは自分にとって嫌なことではないですし、逆に自分が良い状態だからこそ要求されているのかなと思います」
迎えた前半24分、河原のパスに反応したDF佐々木旭が右サイドを駆け上がり、ペナルティエリアの手前で左足を振る。このミドルシュートが相手ゴール右隅に突き刺さった。
2戦合計スコアを前半のうちに同点(1-1)にした川崎Fは、後半も整然とした守備からリズムを掴む。後半19分にも佐々木が右サイドを駆け上がり、相手最終ラインの背後へ浮き球を送ると、これにエリソンが反応。守備面で気を吐いていたブラジル人FWが、右足でのダイレクトシュートでゴールを挙げてみせた。
後半23分には敵陣左サイドでのパスワークに脇坂やMF大島僚太が絡み、大島のパスを受けたマルシーニョがペナルティエリア左隅へ侵入。マルシーニョのラストパスに伊藤達哉が合わせ追加点を挙げると、アディショナルタイムにも敵陣右サイドから始まった速攻をマルシーニョが結実させる。第2戦で華麗なゴールショーを披露した川崎Fが、サウジアラビアにて行われるACLEファイナルステージへ駒を進めた。
(※)本記事の試合時間は、1分以内の秒数を切り上げて表記。
最終スコア4-0で勝利している。
第2戦の結果を受け、ラウンド16の2試合合計スコアが4-1に。敵地での第1戦を0-1で落とした川崎Fが意地を見せ、ファイナルステージ(準々決勝)進出を決めた。
ここではACLE上海申花戦を振り返るとともに、川崎Fの勝因を論評する。現地取材で得た川崎FのFWエリソンの試合後コメントも、併せて紹介したい。

「守備面が整理されている」
長期政権を築いた鬼木達前監督(現鹿島アントラーズ)の退任に伴い、2025年から長谷部茂利監督(前アビスパ福岡)のもとでACLEを戦う川崎F。組織的な守備の構築に定評がある新監督のもとで、同クラブの最前線からの守備(プレッシング)が進化している。上海申花戦終了後に筆者の取材に応じたエリソンも、自軍の戦術アップデートへの手応えを口にした。ー長谷部監督のもとで、守備の規律が確立されている印象があります。チーム全体のプレッシング(最前線からの守備)の完成度について、エリソン選手はどのように感じていらっしゃいますか。
「鬼木前監督の頃から、本当に素晴らしいチーム作りが行われています。正直、鬼木監督と長谷部監督とでは戦術的な部分で(色合いが)違うのかなと思います。鬼木監督の場合、より攻撃的な色合いが強かったのかなと。
自分たちの特長は攻撃だと思うんですけど、今回監督が変わって、今のところ守備面が整理されている印象があります」
ー今日の試合でも、エリソン選手は前線からの守備のスイッチを入れる役割を担っており、これが素晴らしかったと思います。改めて自己評価をお願いしたいです。
「(相手選手の)マークという部分では、今は凄くチームとしてフィットしていると思います。今日の試合でも、みんなが集中して戦えていました。プレスのところは、長谷部監督から日頃より口酸っぱく要求されていますし、自分としてもプレスをかけるのは凄く好きなので、それを今日のゲームでうまく表現できたと思います。ただ、現状に満足せず、より良い形を出せるようにもっと努力していきたいです」

サイドへの追い込み守備が機能
練度の高いプレッシングで、試合を掌握。この“長谷部イズム”が上海申花との第2戦でも遺憾無く体現されていた。この試合における両クラブの基本布陣は、川崎Fが[4-2-3-1]で上海申花が[4-3-2-1]。ホームチームは相手ボール時に最前線のエリソンとMF脇坂泰斗(トップ下)が横並びになり、[4-4-2]へ隊形変化。キックオフ直後から、エリソンと脇坂を起点とするハイプレスを仕掛けた。
上海申花がゴールキックからパスを回し、同クラブDFアイディ・フランシスが自陣ペナルティエリアでボールを受けた前半1分には、エリソンがここへ寄せている。これにより上海申花のパス回しをサイドへ追いやると、タッチライン際に立っていたアウェイチームのDFチャン・シンイチに川崎FのFW伊藤達哉(右サイドハーフ)、上海のMFウー・シーにホームチームのMF河原創がそれぞれアプローチ。最終的に河原がボールを回収し、ここから川崎Fのサイド攻撃が始まった。


エリソンが守備面で気を吐く
2月18日のACLEリーグステージ第8節、セントラルコースト・マリナーズ戦では相手センターバックにボールを簡単に運ばれる場面が散見された川崎F。この試合後の会見で、長谷部監督は筆者の質問に答えており、エリソンとMF山内日向汰の2トップの守備に注文をつけている。ーお伺いしたいのは、フロンターレの前線からの守備についてです。チームとしての約束事がだいぶ明確だと感じました。だからこそ、大きなピンチを招くことなく今日の試合を終えられたと私は思っています。今日出場した選手たちの守備のクオリティーについて、監督の評価をお伺いしたいです。あと、前線からの守備のスイッチを入れる役割としての、エリソン選手と山内選手の評価もお願いします。
「チームとしての守備についてですが、今日はあまり良いプレーがなかったと思います。決して悪くはなかったとも思いますが、良いボールの取り方が少なかった。大ピンチはありませんでしたけど、ディフェンシブサード(自陣ペナルティエリア付近)まで押し込まれるシーンもありました。
そういう意味で、チームとしては今ひとつだったと、タッチライン際(監督が戦況を見守るテクニカルエリア)では感じていました」
「2トップへの評価は、(山内は)PKを獲得しましたし、(エリソンは)PKで得点しましたから、当然評価は良いものです。ただ、もう少しできたんじゃないかな、もう少しチャンスを広げられたんじゃないかなというふうに思っています」
守備面での物足りなさを指摘されたエリソンは、上海申花戦でハイプレスの起点として存在感を発揮。脇坂とともに相手センターバックや相手GKにプレスをかけ、上海申花のパス回しをサイドへ追いやるための初動を完遂した。
上海申花戦後の筆者の取材において、エリソンは長谷部監督から守備面で多くを求められることへの充実感を口にしている。チームへのコミットメントの高さが窺える発言だった。
ーセントラルコースト・マリナーズ戦の後、エリソン選手の守備について長谷部監督にお訊きしました。そのときは「もう少しやれたのではないか」と監督が仰っていて、この評価を踏まえつつ今日の試合を拝見したところ、エリソン選手のプレスがより鋭くなったように見えました。やはり、長谷部監督から守備面の要求が多かったですか。
「監督が変わって(川崎Fの)ゲームスタイルも変わりましたので、監督のスタイルに早くフィットできるように日頃から意識して取り組んでいます。ただ、今シーズンは(現時点で)プレーする時間がそれほど多くなく、ゲーム感が少し欠けていたのかなと思います」
「ただ、今はフィジカル面の状態が良くなっていますし、ファーストディフェンダー(守備の起点)としての役割が重要であることも理解しています。監督から要求されるのは自分にとって嫌なことではないですし、逆に自分が良い状態だからこそ要求されているのかなと思います」

華やかなゴールショーでファイナルステージへ
前半途中から上海申花が[4-4-2]の守備隊形を敷いたものの、最終ライン、中盤、最前線が間延びしていたため、川崎Fとしては自由にパスを回せる状況に。両軍のプレッシングの練度や緻密さには、歴然とした差があった。迎えた前半24分、河原のパスに反応したDF佐々木旭が右サイドを駆け上がり、ペナルティエリアの手前で左足を振る。このミドルシュートが相手ゴール右隅に突き刺さった。
2戦合計スコアを前半のうちに同点(1-1)にした川崎Fは、後半も整然とした守備からリズムを掴む。後半19分にも佐々木が右サイドを駆け上がり、相手最終ラインの背後へ浮き球を送ると、これにエリソンが反応。守備面で気を吐いていたブラジル人FWが、右足でのダイレクトシュートでゴールを挙げてみせた。
後半23分には敵陣左サイドでのパスワークに脇坂やMF大島僚太が絡み、大島のパスを受けたマルシーニョがペナルティエリア左隅へ侵入。マルシーニョのラストパスに伊藤達哉が合わせ追加点を挙げると、アディショナルタイムにも敵陣右サイドから始まった速攻をマルシーニョが結実させる。第2戦で華麗なゴールショーを披露した川崎Fが、サウジアラビアにて行われるACLEファイナルステージへ駒を進めた。
(※)本記事の試合時間は、1分以内の秒数を切り上げて表記。
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