2024年11月3日、ジェフユナイテッド千葉(J2)は2024シーズンをもってFW高木俊幸が契約満了で退団することを発表した。東京ヴェルディの下部組織で育った高木は、高校3年次の2009年に2種登録選手としてJ2第45節の水戸ホーリーホック戦(2-0)でプロデビュー。
その後、清水エスパルス、浦和レッズ、セレッソ大阪を経て2022シーズンからジェフユナイテッド千葉でプレーしていた。

横浜ベイスターズ(※1)や日本ハムファイターズ(※2)で活躍した元プロ野球選手の高木豊氏を父に持つ高木だが、弟の善朗(アルビレックス新潟)、大輔(FC琉球)と共に三兄弟でサッカー選手の道を歩んできた。

12月11日には日本プロサッカー選手会が実施するトライアウトにも参加したが、1月24日にJ2より3カテゴリー下の関東リーグ1部・東京ユナイテッドへの加入が発表された。これまでと大きく環境を変えた高木に、16年間のプロ生活や東京ユナイテッド加入決断などについて訊いた。

※1:現在の横浜DeNAベイスターズ
※2:現在の北海道日本ハムファイターズ

【独占インタビュー】高木俊幸が語る16年のプロ生活と新天地に込めた想い

忘れられないデビュー戦

ー16年間のJリーグキャリアで最も印象に残っている出来事を教えてください。

高木:1つに絞るのは難しいですが、高校3年生の頃に東京ヴェルディに2種登録されて出場したプロデビュー戦ですかね。出場した時の緊張や感覚が今でも忘れられないです。「自分のプレーを観に来てくれたお客さんを喜ばせたい」そういう風に見られる立場になったんだなと、緊張感とワクワク感が入り混じって気持ちが高揚したことを覚えています。

あとは、初めて契約満了をクラブから通達された時ですかね。初めて言い渡されたのがセレッソ大阪に所属していた時だったんですけど、通達を受けたときは改めてプロとしてやっていく厳しさを感じました。プロである以上、お金をもらって(サッカーを)やっているわけなので、結果が出せないとこういう結果になってしまうんだなと。

【独占インタビュー】高木俊幸が語る16年のプロ生活と新天地に込めた想い

ルヴァンカップが転機となった浦和時代

ー浦和レッズ時代の2016年には、ルヴァンカップで得点王に輝いたほかAFCチャンピオンズリーグで優勝も経験されています。振り返って、どんなシーズンでしたか?

高木:(浦和に在籍して)1年目は途中出場が多い状況だったんですけど、2年目のこの年は最初はベンチにも入れない状態が続いていました。日本代表選手が代表ウィークで離脱した時に、普段のリーグ戦でサブにまわっている選手がルヴァンカップに出られるという状況だったんですが、ルヴァンカップで得点を重ねてからリーグ戦でもスタメン出場できるようになったので、それを機に自分の立ち位置が変わり、自分個人としてもプロキャリアで初めてタイトル獲得に貢献することが出来たなという手応えを感じたシーズンでした。


【独占インタビュー】高木俊幸が語る16年のプロ生活と新天地に込めた想い

セレッソ大阪時代に得た学び

ーセレッソ大阪時代は清武弘嗣選手や山口蛍選手、今年現役を引退した柿谷曜一朗氏のような代表クラスが揃っている中で活躍され、FUJI XEROX SUPER CUP(※)では決勝点でチームを優勝に導きました。怪我で苦しんだ中でも結果を残した時期から学んだことはありますか?

高木:セレッソに移籍した初年度、最初は怪我無く過ごせていたんですけど1年目の2018年が終わるころから色々な部分を怪我するようになって。最初に(腰椎)椎間板ヘルニアを発症してから1年半くらいは(ヘルニアを)引きずった状態でプレーしていました。身体を色々庇いながらプレーを続けていたので、その影響はあったのかなと思いますね。

その後、2020年に手術して完治するところまでは持っていけました。振り返るとセレッソ時代は食事や睡眠などに向きあえていなかったのかなと今となっては思います。逆に、怪我をしたからこそ「私生活を見直さないといけないな」と思った時期だったのかなと。

※現在のFUJIFILM SUPER CUP

【独占インタビュー】高木俊幸が語る16年のプロ生活と新天地に込めた想い

ジェフ千葉がJ1昇格を逃した理由

ー2022年から2024年までジェフユナイテッド千葉でプレーされていましたが、チームとしてJ1昇格を掲げていたものの達成できませんでした。昇格に届かなかった理由は何だと思いますか?

高木:率直に言うと、最後の緊張感ある瞬間になってくるほどちょっとした個の質の差がすごく大きく影響すると思いますし、そういったものが昇格したチームに比べるとどうしてもまだ差があるのかなと。チームとしてというよりは選手個々人の質が違ってくるのかなと思いますね。

ー今シーズンの千葉は現在J2を首位で独走しています。高木選手から見て昨シーズンとどのような違いがあると思いますか?

高木:やっているサッカーにはあまり違いが見られないですけど、より熟成しているのかなと。チーム全体として”やりたいサッカー”がしっかり体現できていますし、得点の取り方もやりたいことが顕著に出ているし、監督の(小林)慶行さんの目指すサッカーがより熟成されていることが現在J2の首位に立てている要因かなと感じます。

【独占インタビュー】高木俊幸が語る16年のプロ生活と新天地に込めた想い

天才肌、興梠慎三の存在

ーJリーガー時代に最も印象的だった選手を教えてください。

高木:1人ですか?(笑)1人となると(興梠)慎三さんですかね。
ちょっと別格ですし、持っているものが違う。

ー本能的な巧さを兼ね備えていますよね。

高木:はい。そう言ってしまうとそれ以上ないんですけど、正直何でもできてしまうんで、一緒にプレーしていてものすごくやりやすかったですね。慎三さんはFWなので始めはもう少しガツガツ点取りに行く貪欲な選手なのかなと思っていたんですが、結構味方にパスを出してくれたりと何でもできちゃいますよね。後は言い方が少し悪いですけど、8割くらいの力で常に脱力してサッカーをやっているような感じでしたね(笑)。特に普段ハードなトレーニングをしているわけではないんですけど、しっかり結果を残せるので、いわゆる天才って本当にいるんだなと感じました。

【独占インタビュー】高木俊幸が語る16年のプロ生活と新天地に込めた想い

東京ユナイテッド加入に至るまで

ー昨年末のトライアウトから多くのオファーがあったと思いますが、その中で東京ユナイテッドを選んだ決め手を教えてください。

高木:ありがたいことにJ3のチームからもオファーをいただいたんですけど、僕のサッカーキャリアの中でこの先の生活を考えた時に、いちサッカー選手として「あと何年ベストな状態でプレーできるのかな」と思いました。選択肢として社会人リーグを考え始めたときに、今のユナイテッドのチームメートの香西克哉(東京V下部組織時代に共にプレー)から連絡をもらって「福田(雅)監督と話だけでもしてみたら?」と言われました。

実際に福田さんと次のキャリアで思い描いているサッカー以外の部分を話したところ、すごく理解を示してくれました。自分としては社会人としてやってみたい仕事をしつつ、サッカーでもしっかり上を目指せるチームでプレーしたいなと思いユナイテッドに決めました。

ー実際に加入されて1か月が経ちますが、プロ時代と比べてどのような違いがありますか?

高木:みんな仕事しながらプレーしているので、朝6時半からの練習があったり、仕事が終わってから夜に練習があったりと時間帯の違いは大きいですかね。
あと、プロ時代は当たり前のようにサッカーをしている感覚で16年やらせていただきましたが、(練習や試合も)小石川運動場だったり、スポンサーの方々に力をお借りして用意していただいている部分や、遠征にも自分たちでお金を出したり交通費を払ったり、サッカーをするのにお金を使う。そういうところは改めて考えさせられましたね。

【独占インタビュー】高木俊幸が語る16年のプロ生活と新天地に込めた想い

新たな環境での挑戦

ー今年からサッカーと仕事を両立しながらの生活になると思いますが、差し支えなければ具体的にどのような仕事に就くのか教えていただけますか?

高木:JR水道橋駅から徒歩約5分のところに新しくできる『元町ウェルネスパーク』(東京都文京区)という施設で東京ユナイテッドがスポーツ事業を展開することになりました。その中で自分は女子サッカーのスクールと知的障害を持つ子どもたちのサッカースクール、デフサッカー(※)のスクールにコーチとして従事します。その中でも特にデフサッカーにすごく興味や関心を抱いているので力を入れていきたいと思っています。自分たちのスクールからデフサッカー日本代表を輩出できるような環境を作っていきたいです。

※聴覚障がいのある選手がプレーするサッカー競技

【独占インタビュー】高木俊幸が語る16年のプロ生活と新天地に込めた想い

「プレーで引っ張って自分の存在を示したい」

ー東京ユナイテッドではどのような役割を担っていきたいですか?

高木:チームを引っ張りたいなと。自分の持っている経験というのは間違いなく活かせると思いますし、自分は言葉を掛けたりとかチームを鼓舞する声掛けはあまり得意な方ではないので(笑)、そういう形ではないかもしれないですが、プレーで引っ張って自分の存在を示して行けたら良いのかなと思います。

ー今年の意気込みを教えてください。

高木:チームとしても掲げている「日本一、一択」を達成させたいです。やるからには目の前の試合は絶対に勝ちたいですし、ひとつひとつ勝って最終的に日本一、そしてJFL(日本フットボールリーグ)昇格を達成出来ればと思います。

ー最後にファンやサポーターの方々にメッセージをお願いします。

高木:とにかく試合を観に来てほしいですね。
プレーヤーである以上、人が観に来てくれる中でプレーする喜びがあるので、できるだけ観に来てくれると嬉しいです。
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