2025明治安田J1リーグ第13節の計8試合が、4月29日に各地で行われた。同リーグ12位の湘南ベルマーレは、本拠地レモンガススタジアム平塚にて同5位アビスパ福岡と対戦。
就任1シーズン目の金明輝監督のもとで、多彩な戦術を身に付けた福岡を相手に勝ち点1をもぎ取った湘南。特に前半は福岡の隊形変化に対応しきれず防戦一方となったものの、GK上福元直人の好セーブや鈴木淳之介、大岩一貴、大野和成のDF陣(3センターバック)の好守で耐え忍んだ。
ここではJ1リーグ第13節、湘南vs福岡の試合展開を振り返るとともに、湘南が今後突き詰めるべき課題に言及する。
湘南は1トップに据えられたFW根本凌、FW小田裕太郎とMF池田昌生の2シャドーを起点に福岡のパス回しの妨害を試みたが、前半11分には秋野から松岡への縦パスが繋がっている(図A)。この場面では味方センターバックの手前でボールを保持した秋野にプレスがかかっておらず、そのうえ松岡が根本と池田の背後で待ち構える形に。横並びになっていた根本と池田の間をボールが通過したことで、秋野から松岡への縦パスが成立してしまった。
こうした事態を防ぐには、マークすべき相手ボランチを自身の背後に置くのではなく、相手ボランチの背後から自身が寄せることを徹底するのが望ましい。先述のシーンでは根本と池田のどちらかが松岡を背後から捕まえたうえで、もうひとりが秋野に寄せるべきだった。
また、同じく前半11分に福岡の左サイドバック志知が自陣のタッチライン際でボールを受け、ここへ池田が寄せたものの、同選手の後ろに立っていた秋野へボールが渡ってしまっている(図B)。
相手のパス回しをサイドへ追い込んだ際に、相手ボランチを誰が捕捉するのか。この点が曖昧になるのが湘南のかねてからのウィークポイントであり、最終スコア0-3で敗れた第7節清水エスパルス戦でもこれが原因で失点を喫している。福岡のDF志知がタッチライン際でボールを受けた場面に話を戻すと、池田が志知に寄せるのであれば根本が秋野をマークする、もしくは湘南MF藤井智也(右ウイングバック)に志知へのアプローチを任せ、池田が秋野を捕まえる。このどちらかを実践すべきだった。
前半13分から14分にかけてのシーンでも、湘南は相手の2ボランチを捕まえきれず。秋野と松岡を経由するパス回しに晒されたうえ、最終的には福岡MF見木友哉のシュートを浴びている。GK上福元の好セーブで事なきを得たが、湘南としては失点に直結してもおかしくない場面だった。相手のパス回しを片方のサイドへ追い込む守備は今季序盤からできているだけに、今後は相手ボランチの捕捉を抜け漏れなく行いたいところだ。
前半16分の湘南の攻撃シーンがこの最たる例で、ここではセンターバックの大岩が自陣後方タッチライン際でボールを受けたため、福岡のMF見木に寄せられている。
上福元のパスを受けた大野(センターバック)がペナルティエリアの横幅からはみ出た位置、これに加えDF畑大雅(左ウイングバック)も自陣後方タッチライン際で福岡陣営のプレスを浴びたため、大野としては前方へのロングパスしか選択肢がない状態に。このロングボールを秋野に回収されたうえ、福岡のサイド攻撃を浴びた。
3センターバックがペナルティエリアの横幅に収まる立ち位置をとり、なおかつウイングバックが相手サイドハーフとサイドバックの間、もしくは相手ウイングバックの手前に立つようになった昨夏以降は湘南のパス回しが安定。センターバックが中央と左右、どの方面へもパスを出せる状況を常に作ることで、相手の守備の出足を鈍らせていた。ビルドアップが上手くいっていた昨夏以降の攻撃配置を思い出す。これこそ、湘南が今やるべきことだ。
サイドチェンジのパスを正確に繰り出せるMF鈴木雄斗が福岡戦でベンチスタートとなったため、この試合では特に相手のプレスを掻い潜るのに苦労している。同選手のロングパスや鈴木淳之介の力強いドリブルは湘南にとって強力な武器であるものの、同クラブがJ1残留争いの常連から脱却するためには、彼らのスキルに依存しないビルドアップを構築する必要がある。そのためにも、昨夏以降の攻撃配置を思い出したいところだ。
(※)本記事の試合時間は、1分以内の秒数を切り上げて表記。
最終スコア0-0で引き分けている。
就任1シーズン目の金明輝監督のもとで、多彩な戦術を身に付けた福岡を相手に勝ち点1をもぎ取った湘南。特に前半は福岡の隊形変化に対応しきれず防戦一方となったものの、GK上福元直人の好セーブや鈴木淳之介、大岩一貴、大野和成のDF陣(3センターバック)の好守で耐え忍んだ。
ここではJ1リーグ第13節、湘南vs福岡の試合展開を振り返るとともに、湘南が今後突き詰めるべき課題に言及する。

福岡の変幻自在な攻撃に苦戦
キックオフ直後の両クラブの基本布陣は、湘南が[3-4-2-1]で福岡が[4-2-3-1]。福岡は撤退守備時にFW岩崎悠人が最終ラインへ降り、[5-4-1]の隊形を敷く。攻撃時には志知孝明、安藤智哉、上島拓巳、前嶋洋太(4人ともDF登録)による4バックへ移行。秋野央樹と松岡大起の両MF(2ボランチ)も、最終ライン付近へ降りてパス回しに加わった。湘南は1トップに据えられたFW根本凌、FW小田裕太郎とMF池田昌生の2シャドーを起点に福岡のパス回しの妨害を試みたが、前半11分には秋野から松岡への縦パスが繋がっている(図A)。この場面では味方センターバックの手前でボールを保持した秋野にプレスがかかっておらず、そのうえ松岡が根本と池田の背後で待ち構える形に。横並びになっていた根本と池田の間をボールが通過したことで、秋野から松岡への縦パスが成立してしまった。

また、同じく前半11分に福岡の左サイドバック志知が自陣のタッチライン際でボールを受け、ここへ池田が寄せたものの、同選手の後ろに立っていた秋野へボールが渡ってしまっている(図B)。

前半13分から14分にかけてのシーンでも、湘南は相手の2ボランチを捕まえきれず。秋野と松岡を経由するパス回しに晒されたうえ、最終的には福岡MF見木友哉のシュートを浴びている。GK上福元の好セーブで事なきを得たが、湘南としては失点に直結してもおかしくない場面だった。相手のパス回しを片方のサイドへ追い込む守備は今季序盤からできているだけに、今後は相手ボランチの捕捉を抜け漏れなく行いたいところだ。

攻撃配置にも気になる点が
3センターバックの両脇の選手が自陣後方タッチライン際でボールを受ける、またはウイングバックの選手がこの位置へ降りてボールを受けたり、受けようとしたりする。これにより湘南のビルドアップ(GKや最終ラインからのパス回し)が淀むケースが一昨年から散見されており、この試合も例外ではなかった。前半16分の湘南の攻撃シーンがこの最たる例で、ここではセンターバックの大岩が自陣後方タッチライン際でボールを受けたため、福岡のMF見木に寄せられている。
これにより大岩は前方へのパスコースを失い、味方GK上福元へのバックパスを余儀なくされた。
上福元のパスを受けた大野(センターバック)がペナルティエリアの横幅からはみ出た位置、これに加えDF畑大雅(左ウイングバック)も自陣後方タッチライン際で福岡陣営のプレスを浴びたため、大野としては前方へのロングパスしか選択肢がない状態に。このロングボールを秋野に回収されたうえ、福岡のサイド攻撃を浴びた。
3センターバックがペナルティエリアの横幅に収まる立ち位置をとり、なおかつウイングバックが相手サイドハーフとサイドバックの間、もしくは相手ウイングバックの手前に立つようになった昨夏以降は湘南のパス回しが安定。センターバックが中央と左右、どの方面へもパスを出せる状況を常に作ることで、相手の守備の出足を鈍らせていた。ビルドアップが上手くいっていた昨夏以降の攻撃配置を思い出す。これこそ、湘南が今やるべきことだ。
サイドチェンジのパスを正確に繰り出せるMF鈴木雄斗が福岡戦でベンチスタートとなったため、この試合では特に相手のプレスを掻い潜るのに苦労している。同選手のロングパスや鈴木淳之介の力強いドリブルは湘南にとって強力な武器であるものの、同クラブがJ1残留争いの常連から脱却するためには、彼らのスキルに依存しないビルドアップを構築する必要がある。そのためにも、昨夏以降の攻撃配置を思い出したいところだ。
(※)本記事の試合時間は、1分以内の秒数を切り上げて表記。
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