新型コロナウイルス感染拡大の影響から、実店舗の在り方が問われている。非常事態宣言により「STAY HOME」が求められ、多くの店舗の営業自粛が続く今、ファッションディレクターの山口壮大が手掛けるセレクトショップ「ハウス@ミキリハッシン」は、新たなセレクトショップの在り方を提案する。

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 神宮前5丁目の閑静な住宅街に店舗を構えるハウス@ミキリハッシンは、日本の日常に息づく様々な文化や思想から生み出されたファッションを"自分の生活服=ストリートウェア"として装うことを提案するコンセプトショップ。「アンリアレイジ(ANREALAGE)」「クリーナ(CLEANA)」「ハトラ(HATRA)」「フィンガリン(PHINGERIN)」「ポト(POTTO)」など気鋭ブランドを取り扱っている。

 実店舗営業を一時休業した同ショップは、今の生活に必要なルームウェアとマスクというアイテムをデザイナー及びユーザーと直接繋がりながらクリエイトするプラットフォーム=オンラインコミュニケーションショップをローンチ。飛田正浩が手掛ける「スポークン ワーズ プロジェクト(spoken words project)」とは、ユーザーの希望のメッセージ(10文字以内)と、 Zoomを介したコミュニケーションからパーソナルなエピソードをグラフィックとしてデザインし、 その場でライブプリントを行うオンライン×カスタムオーダー企画を実施した。「コトハヨコザワ(kotohayokozawa)」とは、過去の残布を活用したカスタムオーダーイベントを開催する予定。Zoomの無料版で利用出来る40分の制限時間内にユーザーが好みのテキスタイルを選び、ミキリハッシンスタッフがファッション専用の3Dモデルソフト「クロ(CLO)」を活用して確認用の3Dイメージを組み上げ、 デザイナー本人がその場で縫い上げるライブイベントを行う。

またデザイナーとの協業マスクプロジェクト第1弾として、「ブラックチェリー刺繍マスク」が2万いいねを集めるなど、 SNSで大きな反響を集めた「tanaka daisuke」デザイナーの田中大資がデザインしたオリジナルの刺繍図案を用いて、 福祉就労支援所「ウイアー」との協業により立体マスクを製作する予定だ。

 「社会におけるファッションの役割とは、現実から背伸びが出来る夢を提供することだと信じていて、ファッションにおけるショップの役割は、デザイナーが見る夢をユーザーにとっての現実へと導いていくことだと考えています」と山口。実店舗という現実で、夢のような体験の提供を目指してきたミキリハッシンが、オンラインでファッションをどのように表現するべきかに向き合った結果、ユーザーと共に未来を眺めることから始めたいという考えに至った。「Zoomを介して、先ずはどうでもいい話をする。そうすると次第に今抱えている想いがほころんできて、いつしか未来の話題に広がっていく。それを受け取ったデザイナーがファッションとして表現し、それを未来のユーザーが纏う。

明日が見えない今だからこそ、デザイナーと共にユーザーに寄り添い、明日着たい服を一緒に考えることからスタートできたら」とプロジェクト立ち上げの経緯について話している。

 またセレクトショップの在り方について、山口は今後大きく変わる必要があると強調。「実店舗が機能しないことで、セレクトショップと雑誌メディアに差が無くなっている今、ミキリハッシンでは接客に特化し、こだわっていきたいと考えています。ユーザーとどこでどのようにコミュニケーションしていけば夢を共に描けるのか、新しい接客の在り方を提案していきたい」とし、今後もその考えを反映させた様々な取り組みを行う予定だという。

■ハウス@ミキリハッシン