*12:20JST 日経平均は小幅に3日続伸、先高観変わらず「循環物色」
 日経平均は小幅に3日続伸。47.72円高の28186.75円(出来高概算7億1000万株)で前場の取引を終えている。


 11日の米株式市場でNYダウは5日ぶりに反落し、89ドル安となった。先週の連邦議会議事堂への乱入事件を受け、民主党はトランプ大統領の弾劾訴追案を下院に提出。政局混乱が警戒され、寄り付き後に下落した。SNS運営企業によるトランプ氏のアカウント凍結措置などから主要ハイテク株が下落したことも重しとなった。連休明けの日経平均はこうした流れを引き継いで134円安からスタートすると、寄り付き直後には一時27899.45円(239.58円安)まで下落。ただ、米長期金利の上昇を受けて金融株などが買われたほか、決算が好感された小売株や新型コロナウイルス関連の材料が観測された医薬品株の一角が急伸し、日経平均は前場中ごろに28287.37円(148.34円高)まで上昇する場面があった。


 個別では、ソフトバンクG、任天堂、ソニー、東エレクが小じっかり。リウマチ治療薬が新型コロナにも有効と伝わった中外薬は7%超、米モデルナ製ワクチンの国内治験を20日にも始めると報じられた武田薬は3%超の上昇となっている。決算発表銘柄では第1四半期が大幅増益となった良品計画が9%の上昇となり、ローソンは9-11月期の改善が好感されて4%近い上昇。また、今期大幅増益見通しのFブラザーズはストップ高水準での買い気配が続いている。一方、米金利上昇を受けてエムスリーやキーエンスといったグロース(成長)株の一角がさえない。ファーストリテは小幅に下落。
ウエルシアHDは堅調な決算ながら材料出尽くし感から売りがかさんでいる。

 セクターでは、石油・石炭製品、医薬品、空運業などが上昇率上位。半面、パルプ・紙、証券、サービス業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の41%、対して値下がり銘柄は55%となっている。

 週明け11日の米国株がハイテク関連を中心に下落した流れを引き継ぎ、本日の日経平均は寄り付き直後に一時200円超下落した。ただ、その後プラスに切り返し、取引時間中のバブル崩壊後高値を連日で更新している。
構成銘柄を見ると、中外薬が1銘柄で約42円の押し上げ要因となっているほか、信越化やダイキンといった値がさ株の上昇が貢献している印象。一方、東証1部全体としては値下がり銘柄の方が多く、東証株価指数(TOPIX)は0.05%の下落で前場を折り返している。さすがに日経平均が直近2日だけで1000円超上昇し、節目の28000円を回復した後だけあって、全体としてはやや利益確定売りが優勢か。とはいえ相場全体の先高観は変わらず、循環物色の流れとなっている

 日経平均への直接的な影響は小さいが、メガバンク株のしっかりした値動きは相場全体のムードを明るくさせるだろう。米国の長期金利上昇やハイテク株安を受けてグロース株の一角が軟調だが、エムスリーなどは直近2日の上昇が大きかっただけに想定内の調整と言える。また、レノバなどの環境関連銘柄が利益確定売りに押される一方、信越化やSUMCO、ルネサスといった半導体関連の堅調ぶりが目立つ。


 米アトランタ連銀のボスティック総裁が11日、「早ければ2022年の中ごろに利上げがあり得る」と語ったなどと報じられているが、その前提として年内に資産購入プログラムを正常化するのは難しいとの指摘もある。先週末8日の当欄でも触れたとおり、米長期金利の先行きに対する見方はなお割れている。また、新型コロナを巡っては関西3府県にも緊急事態宣言が発令される見通しとなるなどなお予断を許さない状況だが、中外薬や武田薬のように治療・予防に向けた明るい材料も出てきている。米ジョンソン・エンド・ジョンソンは1度の接種で済むワクチンを開発中で、近く最終治験の結果を公表すると伝わっている。

 こうした様々な材料が入り交じる状況を踏まえると、目先の物色動向は循環的なものとなりそうだ。日経平均はこうした動きに支えられしっかりした展開になると見込まれるが、米政治情勢などには注意を払っておきたい。
(小林大純)


《AK》