◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「戦略的提携とグローバル・パートナーシップが拓く、 台湾CPTPP加盟への道 PartIV(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

8.結論
包括的経済統合を目指す台湾の壮大な旅を描いたタペストリーにおいて、戦略的提携関係とイニシアチブは決定的な役割を担っている。
この果てしない旅によって、駆け引き、経済分野における優れた能力、先見性のあるリーダーシップという糸は、CPTPP加盟への道を進むための真摯な取り組みという一つの絵柄へと織りあげられる。

台湾はシンガポール、ニュージーランド、日本、オーストラリア、カナダ、メキシコ、ベトナム、マレーシアなどの国々と切れることのない絆を結び、価値観ならびに繁栄の共有を土台にした提携関係を構築している。このようなパートナーシップの中で、ダイナミックなバランス感覚と適応力を足掛かりに、様々な難題やチャンスに巧みに対処する台湾の手腕が光っている。

台湾の戦略の中心にあるのは、グローバルな動態が奏でるリズムの変化に調子を合わせることのできる、ダイナミックな流動性である。様々に形を変えながら変化する世界において、台湾はそうした変化を、経済的アプローチを洗練させるチャンスとして受け入れている。こうした順応性は、経済統合を学習、成長、そして絶え間ない革新が続く長い航海と捉えている国家のまさに真骨頂である。


『鏡の国のアリス』(原題:Through the Looking-Glass, and What Alice Found There)に登場する「赤の女王」による喩えは、経済という世界の旅路を行く台湾の様子を的確にとらえている。同じ場所にとどまるため、アリスが2倍の速さで走らなくてはならなかったように、戦略的提携に向けた台湾の取り組みは、競合他国を出し抜き、激しい競争が繰り広げられる国際貿易の世界で地位を確保せざるを得ない台湾の事情を反映している。

この物語に触発されているかのように、経済統合を追求する台湾の姿はまさに、赤の女王の忠告そのままだ。各国が先を争うなかで、台湾は参加するだけでなく、他を大きく突き放している。この物語は、経済統合への道には、絶え間ない前進と環境の変化への迅速な適応が求められることを強調しているのだ。

CPTPP加盟に向けた道のりは複雑な地形景観のなかを進むものであるが、台湾が採用する戦略的提携は、包括性、繁栄の共有、そして賢明な経済慣行を約束するものとして、行く道を照らしている。
こうした変幻自在のアプローチは、駆け引き、イノベーション、持続性を調和させたものこそが戦略的パートナーシップである、という理解を反映したものとなっている。

調和化をめぐる展望:主権と経済成長の両立
戦略的提携が盛り上がりを見せるなか、複雑に絡み合う状況であるとか国家主権に対する影響について、懸念を表明する者が現れる可能性はある。だが、台湾はバランスの取れたほどよい対応を維持しており、制約を課すものとしてではなく、経済成長の手段として同盟を利用しつつ、巧みなダンスを披露している。こうした同盟は台湾に譲歩を強いるものではなく、強化のための手段であり、本質的なものは守りつつも、複雑さを呈する世界状況における舵取りを可能にしている。

台湾による先見の明あるアプローチは、世界との調和を実現するだけでなく、台湾がさらなる高みへと上るためのものだ。戦略的提携関係がもたらす相互作用を見れば、台湾が自らの自主性を損なうことなく経済統合の舵を切る能力を持つことが容易に見て取れる。
台湾はこうした同盟関係を通じて、国益を最優先させつつも経済的展望を確立し、地位向上のための道を切り開いている。

台湾の主権を守りながらも、世界における地位向上を目指して慎重に統合を進めるこのバランス感覚は、まさに芸術的である。世界情勢が奏でる交響曲において、台湾は名指揮者として登場し、戦略的パートナーシップによるハーモニーを巧みに指揮し、経済発展と自律を主題にした大曲を作り上げている。このように、台湾の戦略的提携が描きだす壮大な図柄は、国家間の複雑な相互作用だけでなく、今後何世代も続く地域経済統合の輪郭を改めて描き直して、回復力、先見性、そして統治者の洞察力が織りなすタペストリーを浮かび上がらせてくれる。

写真: AP Photo/Esteban Felix

(※1)https://grici.or.jp/