ビットコインの中央集権化はETFそのものでも起きている。ブラックロックをはじめETF発行会社の多くは現物のカストディアンとしてコインベースを利用しており、ETFに関連するビットコインの保管から取引、決済に至るまでをコインベースに依存する体制となっている。ブラックロックのiシェアーズ・ビットコイン・トラスト【IBIT】の運用資産額は発売からわずか1週間で10億ドルを超えているが、IBITの規模が大きくなるほどコインベースに現物の管理リスクが集中することになる。
またビットコインは金と同様に現物ETFで今から何倍もの価格に高騰することが期待されているが、それもまた中央集権化を促すと予想される。ビットコインは個人で自由に資産を管理・取引できることを理念に掲げている。
このようにビットコインの現物ETFは暗号資産界隈にとって手放しで喜べるものではない。もちろん、これによってWeb3が目指している分散型社会の発展にストップがかかるわけではないが、ビットコインをはじめ暗号資産が結局は金融市場の力を借りて大きく成長し、最終的にはそこに取り込まれるという不本意な未来が訪れるのかもしれない。
マネックス証券 暗号資産アナリスト 松嶋 真倫
(出所:1/22配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)