1. 2023年12月期の業績概要
ユミルリンク<4372>の2023年12月期の業績は売上高が前期比6.1%増の2,315百万円(うちストック売上が2,254百万円、スポット売上が60百万円)、営業利益が同13.8%増の592百万円、経常利益が同13.8%増の592百万円、当期純利益が同13.9%増の409百万円となり、売上高に関しては9期連続、営業利益に関しては5期連続の過去最高更新となった。特定顧客の特需剥落などの影響を受け、「Cuenote(R) SMS」「Cuenote(R) Auth」の売上高が前期比13.6%減となったものの、主力サービスである「Cuenote(R) FC」が引き続き業績を牽引した。
サービス別の業績は、主力の「Cuenote(R) FC」の売上高が前期比9.6%増の1,992百万円に拡大した。オンラインシフトやアフターコロナ、DXの推進など外部環境の追い風がふくなか、解約率を低位安定(2023年度の月次平均解約率は0.43%)させながら新規顧客を獲得した。特に、サービスの処理性能や可用性・堅牢性・機密性が評価され、製造業、情報通信業、卸売・小売業、運輸業、金融・保険業など、同社がメインターゲットとするエンタープライズ顧客の新規獲得が順調に進んだ。また、デジタルマーケティングの普及に加えて、経済・社会活動がアフターコロナを前提に変化するなかで、メッセージの年間送信数が前期比14.9%増の860億通と順調に増加基調をたどったことも業績の拡大に寄与した。これらにより、契約あたりの平均利用額は前期比3.1%増の94千円、期末時点のMRRは前期末比10.0%増の170百万円、通期のストック売上は前期比9.2%増の1,935百万円とそれぞれの指標が順調に拡大した。
「Cuenote(R) SMS」「Cuenote(R) Auth」は、SMSの有用性が認識され、事業活動への導入が進むなど、事業環境自体は好調に推移したものの、特定顧客の特需剥落などの影響を受け、売上高は前期比13.6%減の264百万円となった。各指標に関しても、契約あたりの平均利用額は前期比38.1%減の85百万円、期末MRRは前期末比8.4%減の25百万円、通期ストック売上は前期比13.8%減の263百万円となった。ただ、SMSサービスに対するニーズが好調ななか、継続的な機能拡張やプロモーション強化により新規顧客の獲得は順調に進み、特定顧客を除いた売上高は前期比35%増と急伸した。本人認証、通知・連絡、販売促進、催促・督促などの様々な使用目的で、多くの業種への導入が進むなか、特に、行政・自治体向け「Cuenote(R) SMS for LGWAN」をリリースしたことを受け、自治体からの引き合いが好調だったという。
同社は定期的に顧客企業の導入事例を公開しているが、その中でも特に、非代替性トークン(NFT)、ウェブ3.0分野で事業を展開する米国LEVVELS Inc.にSMS配信サービスを導入した事例が注目される。LEVVELSは、仮想通貨取引所を運営する韓国Dunamu & Partners Inc.と、K-popアーティストが所属するHYBEの合弁会社として2022年1月に設立された。グローバルにビジネスを展開するなかでビジネス拡大の足がかりとして「Cuenote(R) SMS」の導入を決定したと言う。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)