■要約

霞ヶ関キャピタル<3498>は、不動産コンサルティング事業を展開する会社で、不動産開発を対象とした「投資プラットフォーム」を提供している。同社の強みは、激動期を乗り切る柔軟な戦略と、それを実現する豊富な人材や資金を有していることである。
社会の変化やニーズを的確にとらえることで、社会が必要とすることを事業化している。現在は主力の物流事業に加え、ホテル事業も順調に拡大し、ヘルスケア事業と海外事業が新たな成長エンジンとして加わった。この4つのエンジンにより、推進中の中期経営計画の達成を目指している。同社は、2023年10月には東京証券取引所(以下、東証)プライム市場への昇格を果たし、採用面、資金調達面、事業活動面でのメリットが期待される。

1. 2024年8月期第2四半期の業績概要
2024年8月期 第2四半期累計期間の連結業績は、売上高20,817百万円(前年同期比26.2%増)、営業利益1,991百万円(同38.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,292百万円(同58.2%増)と大幅な増収増益決算となり、過去最高の売上高・利益を達成した。好決算の理由は、物流事業とホテル事業が順調に拡大し、販売用不動産の売却が増加したことである。
また、海外事業で売却を計上したことも、増収増益に貢献した。公募増資の実施により、積極的に今後の成長につながる棚卸資産(販売用不動産と開発事業等支出金の合算値)を前期末比8,458百万円増の37,869百万円まで積み上げている。その結果、自己資本比率は40.9%(前期末比15.7ポイント増)と2023年3月期プライム市場不動産業平均の32.7%を大きく上回る高い安全性を確保し、また2023年8月期にはROA、ROEなど収益性指標も業界平均を上回っている。

2. 事業別の取り組み
同社は独自のビジネスモデルを展開するとともに、注力する事業分野を機動的に変更してきた。具体的には、今後の企業活動や人々の生活様式の変化を見据えて、2020年6月より立ち上げた物流事業では、中小規模の冷凍冷蔵倉庫をメインターゲットに物流施設開発を進めており、2024年8月期第2四半期累計期間には、SBSゼンツウ(株)と冷凍自動倉庫貸出の覚書を締結、またSREホールディングス<2980>と冷凍自動倉庫における冷凍保管サービスの提供及びシステム開発を目指してX NETWORK(株)(クロスネットワーク)を合弁会社として設立、さらに物流施設を主な投資対象とする上場リートの組成を目的に霞ヶ関リートアドバイザーズ(株)を100%子会社として設立するなど、順調に事業を進捗させている。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)から回復したホテル事業でも、同社開発ホテルの新ブランド「FAV LUX(ファブラックス)長崎」と「seven x seven(セブンバイセブン)糸島」を開業したほか、前期までに開業したホテルでは外部評価機関から高い評価を獲得するなど、順調に事業拡大を進めている。
2022年8月期に参入したヘルスケア事業も着実に成長しており、今後は施設開発のみに留まらず運営面まで一貫して行うことで既存のサービスとの差別化を図る目的でヘルスケア施設運営会社の株式を取得した。さらに、海外事業でも中東のドバイで案件を積み上げ、物件売却も進捗している。物流事業の進捗とホテル事業の拡大にヘルスケア事業と海外事業が加わったことで、プロジェクトパイプラインは着実に拡大し、今後のAUM(運用資産残高で、アセットマネジメントとプロジェクトマネジメントを行っている事業総額)の積上げと、収益貢献が期待される。

3. 2024年8月期の業績見通し
2024年8月期の連結業績予想は、期初の予想から変更はない。売上高60,000百万円(前期比60.9%増)、営業利益8,500百万円(同91.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,000百万円(同143.8%増)と大幅な増収増益を予想し、過去最高の売上高・利益の更新を見込んでいる。物流事業では、冷凍冷蔵倉庫に対する高い需要に支えられ、物流施設開発は活況を呈しており、中期的にもこのトレンドは継続すると見込まれる。
また、冷凍自動倉庫への取り組みは、人手不足問題や、2024年4月以降にトラックドライバーの時間外労働時間を制限する物流の2024年問題への対策としても有効であると想定している。また、ホテル関連市場において行動制限緩和や全国旅行支援、コロナ禍以前よりも円安に推移していることから、ホテル事業では国内旅行やインバウンド需要が一層拡大する見通しだ。さらに、ヘルスケア事業や海外事業も順調に拡大している。以上から、1株当たり配当金は同60.0円増配の120.0円と倍増を計画しているほか、2023年10月6日の東証グロース市場からプライム市場への市場変更を記念し50.0円の上場記念配当も予定、普通配当と合わせて年間170.0円とする予定だ。株主優待制度も続けるなど、株主還元にも十分に配慮している。通期予想に対する第2四半期累計期間の進捗率は、売上高34.7%、営業利益23.4%に留まるが、同社では予想達成に自信を持っている。
前期~上期中に積み上がった棚卸資産は平均6ヶ月で開発ファンドに売却する、同社のビジネスモデルから想定される無理のない売上高・利益である。また同社は例年期初には保守的で確度の高い業績予想を発表していることから、予想を達成する可能性は高いと弊社では見ている。

4. 中期経営計画
同社は、2021年に中期経営計画(2022年8月期~2026年8月期)を発表したが、2024年8月期まで計画を上回る実績を上げてきた。その理由は、第1にホテル需要が想定を上回る早さで回復したことだ。第2に、中計策定時には考慮していなかったヘルスケア事業を立ち上げたことだ。そして第3に、ヘルスケア事業と同様に中期経営計画策定時には考慮していなかった海外事業の収益が貢献する見込みであることだ。
以上から、最終年度の2026年8月期に営業利益200億円(2021年8月期は13.2億円)、親会社株主に帰属する当期純利益100億円(同7.9億円)を掲げていた5ヶ年計画を4ヶ年計画に変更し、1年前倒して2025年8月期に達成する計画に修正している。同社の事業ポートフォリオは、コロナ禍の3年弱はホテル事業が停滞し、物流事業が大きなけん引役となっていた。しかし、コロナ禍が明けた今では、ホテル事業も物流事業とともに2本柱として大きなエンジンとなっている。さらに、ヘルスケアと海外事業という新たな2つのエンジンも加わり、2024年8月期からは4つのエンジンで動き始めている。同社では、この4本柱でAUMを積み上げ、安定収益の拡充を加速させる計画であり、数値目標達成に邁進している。

■ Key Points
・不動産開発を対象とした「投資プラットフォーム」を提供するという独自のビジネスモデルを構築。
激動期を乗り切る柔軟な戦略と、それを実現する豊富な人材や資金が強み
・2024年8月期第2四半期は大幅な増収増益で過去最高を達成。業界平均を上回る高い安全性と収益性を確保
・2024年8月期業績も期初予想通り大幅増収増益を予想。物流事業とホテル事業を軸としつつ、他セグメントも成長力を強化。配当金の倍増を計画し、株主還元にも配慮
・中期経営計画では、5ヶ年計画を4ヶ年に短縮して達成する計画に修正し、2025年8月期に当期純利益100億円を目指す。物流事業に加え、ホテル需要の回復、ヘルスケア事業の成長、海外事業の収益貢献が寄与

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)