4.「3つのフル」
成長戦略の「3つのフル」は「フルカバー」「フルライン」「フル機能」のことで、「どこでも、何でも、どんなことでも対応する」という同社の意思表示であり、「3つのフル」を追求することで、ステークホルダーとともに栄えようという考え方に基づいている。
「フルカバー」は、得意先や仕入先とともに地域にネットワークを作り、県別体制で全国の需要に対応することを指す。
「フルライン」は、設備関連資材であれば何でもワンストップで対応することを指し、PCやタブレットでの商品閲覧も可能となっている。「フルライン」では、これまで仕入先口座数を着実に伸ばして取り扱いアイテム数を拡充してきたが、さらなる充実に加え、管材のみならず電材や建材、住宅設備、産業機械など新領域の商材を積極的に増やす計画である。新領域への拡大では中期計画期間中で50億円程度の売上高増加を目指すが、なかでも主力の管材とともに建築3資材を構成する電材と建材について一層積極的に取り組む方針である。
「フル機能」は、「対応、価格、在庫、配送、販促、研修、情報」の基本7機能、「事前の引合・受注・照会、当日の納入・施工・加工、事後のアフターメンテナンス・現調・取替」の工程9機能、「物流、施工、情報、システム、業務、サポート、教育、人材、金融」のソリューション9機能によって、どんなことにでも対応するということを指している。「フル機能」では、こうした基本7機能、工程9機能、ソリューション9機能を強化充実させることで、仕入口座を拡大しワンストップ体制の強化につなげている。これによりメーカーや販売店など取引先の利便性を向上し、受注システム「OPS」の利用実績を2024年3月期の月平均955社、35億円から着実に積み上げていく計画である。このため協力会社との取り組みをさらに強化し、施工力や物流機能の充実を図る。
「フルカバー」「フルライン」「フル機能」の効果を一層発揮するため、グループ企業も目標を明確に持って戦略展開している。
業界最大かつ最良のネットワーク
5.「みらい会活動」
同社はバリューチェーンづくりを「みらい会活動」と呼び、業界最大かつ最良のネットワークの構築を進めている。そこでは「売り手」と「買い手」という関係ではなく、人と人がつながることで互いにビジネスが向上する「ベストパートナー」の関係づくりを目指すとともに、業界のハブとしての有効性、エキスパート制度や次世代人材育成などによる経営の再現性、そして進化に取り組む経営の革新性にチャレンジすることで、業界全体の発展に貢献していく方針である。
「みらい会活動」の核となる「みらい会」は、販売店、仕入先メーカー、工事店、そして同社の各支店が「四位一体」となって構成されており(ほかに金融会員)、これまで順調に拡大、会員数26,352人、正会員500社、拠点数1,000という規模を誇っている(2024年3月期)。毎年4回以上開催される研修会では、参加者は互いに情報を持ち寄り、商材や経営などのノウハウの取得に取り組んでいる。様々に開催されるイベントでは、メーカーから販売先への情報伝達だけでなく、会員同士の情報交換や販売先からメーカーへのフィードバックも多く、参加者にとって有益な場となっている。同社もまた、研修やイベントを通じて会員の要望に応じている。なお、大手競合企業に対して同社の正会員数は500社程度とやや少ないが、末端売上高や営業の質などの面から同社の方が優れていると言うことができる。引き続き物流の強化や新領域への拡大、そして西日本で新規取引先を増やすことで、2028年3月期までに会員数50,000人、正会員1,000社、拠点数2,000へと「みらい会」を拡大し、こうした機能を持たない競合企業に対抗していく考えである。
「みらい会」では、会員相互の販促の場となる大イベント「みらい市」を開催している。
また「みらい会」会員に対し、販促、健康、研修、IT、分科会、イベント、物流、情報の8つのサービスからなる「みらいサービス」を提供している。なかでも様々なツールを使った情報発信や「みらい市」など大イベントの開催、経営幹部セミナー「橋本学校」など業界のプロ人材育成に向けて毎月開催する研修、ITを活用した24時間365日の発注やリアルタイムデータ連携など「OPS」の運営などで、一定以上の成果を上げている。こうした活動を行っている企業は同業他社にほとんどなく、大きな差別化ポイントとなっている。このため、引き続き情報発信機能や研修制度、イベントの充実などに注力する方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)