1. 2024年12月期第3四半期の業績概要
2024年12月期第3四半期(1~9月)の連結業績は、売上高14,856百万円(前年同期比20.4%増)、営業利益3,079百万円(同115.2%増)、経常利益3,155百万円(同67.6%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,162百万円(同16.3%減)となった。2024年12月期中間期決算と同時に連結業績予想の上方修正も発表しており、修正後業績予想に対する第3四半期の進捗率は、売上高75.0%、営業利益97.9%、経常利益96.3%、親会社株主に帰属する四半期純利益は53.0%と、売上面は堅調に推移し、営業利益・経常利益は大きく進捗した。
なお、「地球の絆創膏事業」については、工業製品として販売するフェーズから研究開発フェーズに引き戻すことを決定したことを受けて、当面の販売は見込まず、淡路ベースは、開発・製造拠点から開発拠点に用途変更を実施する。これにより、開発拠点に用途変更を行った淡路ベースについて、固定資産の帳簿価格を回収可能価額まで減額し、2024年12月期第3四半期連結会計期間において事業再構築費用910百万円を計上しており、2024年12月期中間期の同費用249百万円との累計で1,159百万円を計上した。
四半期ごとの推移を見ると、第3四半期は「オパルス」「オパスキ」とも出荷が回復し、光学シート事業の売上高は第2四半期比4.9%増、そのうちノートパソコン・タブレット向けの売上高は同8.3%増と回復が見えてきた。利益率の高い光学シート事業で売上が積み上がったこともあり、第3四半期のセグメント利益は第2四半期から5.4%増の2,040百万円と、全体の営業利益伸長に寄与した。
2. セグメント別の業績
(1) 光学シート事業
2024年12月期第3四半期(1~9月)の光学シート事業の売上高は11,840百万円(前年同期比27.1%増)、セグメント利益は5,688百万円(同52.8%増)となった。
一方、スマートフォン向けについては「オパルス」の売上が引き続き減少した。業界では液晶の有機EL化が進んでいることもあり、同社では期初の業績予想において、この影響を織り込み済である。モニター・他/高機能フィルム向けでは、車載向けの販売促進に努めた結果、「オパルス」に加え「オパスキ」の売上が増加した。車載用光学フィルムは前年同期比で1.4倍、偏光制御フィルムは同1.8倍と伸びており、スマートフォン向けの売上減少を補った。車載向けは車体内でのディスプレイの搭載箇所や面積が増加しており、ほかにも様々な業界で進んでいるVR化により、モニター及びゴーグル型端末向けの需要増加が期待でき、今後の成長分野になり得ると弊社では見ている。利益面では増収効果に加え、円安も利益率の改善に寄与した。セグメント利益率は8.0ポイント向上し、円安効果を除いても4.3ポイント増となり、利益率の改善が進んだ。
(2) 生活・環境イノベーション事業
2024年12月期第3四半期(1~9月)の生活・環境イノベーション事業の売上高は2,864百万円(前年同期比2.9%減)、セグメント利益は143百万円(同43.8%減)と減収減益となった。
(3) 地球の絆創膏事業
2024年12月期第3四半期(1~9月)の地球の絆創膏事業の売上高は151百万円(前年同期比105.9%増)、セグメント損失は330百万円(前年同期は320百万円の損失)となった。方針変更に従い、KYOZIN Re-Roofの自主点検を行い、抽出された課題に対して検査と再試験等を進めた。これにより、第3四半期(7~9月)の売上高は20百万円に留まっている。一般住宅向けに関しては提供する製品と消費者の求めるニーズとの間に乖離がある。企業向けに関しては、中長期的な視点で事業や製品・サービスの見直しを進めることとし、屋根の種類に合わせた施工方法の改良や生産設備の改善を優先するため、「独立組織」から「社内組織」に組み入れて、事業の再構築を進める。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)