レビュー

学んだ経営理論は現場で実践しなければ意味がない。だが実践となると「自社のヒト・モノ・カネのバランスはどうあるべきか」「新市場に挑むかどうかはどう判断すればいいのか」「攻めの姿勢はどこまで許されるのか」など、現実的なさじ加減を知りたいと私たちは思う。

業界の特色や時代背景、テクノロジーの環境などによって導き出す解は異なるだろうし、シナリオ通りに事が運ぶことなどほとんどないかもしれない。それでも、少しでも汎用的な判断基準を自分の中に持っておきたいと思うのだ。
そこで本書の登場である。本書は世にも珍しい世界の「倒産」図鑑だ。図鑑という名の通り、親しみやすいイラストで企業が擬人化(!)されて描かれ、倒産までの事業のアップダウンがグラフで示されている。25の倒産事例は系統別に分類され、わかりやすく解説してある。
過去を振り返りながら「なぜ倒産したのか」「どこで間違えたのか」を考察するので、現在の私たちからすると愚かな意思決定に見える事例も中にはある。しかし、当事者の立場に立って、その当時その環境下で自分は最善の解を導き出せたかをトレースしてみると、自らの意思決定の不確かさを認識することができるはずだ。これは失敗のケースだからこそできることだ。また、戦略の攻守バランスの取り方などは、ケーススタディだからこそ具体的に学べるポイントだといえるだろう。
当事者にとっては不名誉な図鑑に違いないが、ビジネスの現場にいる私たちにとってはこの上なく貴重で示唆に富む、座右に置くべき一冊である。

本書の要点

・好調時には経営の本質的な課題に気づきにくいが、そういう時にこそ失敗事例を通じて「水面下に潜む課題」に意識を向ける必要がある。


・戦略に問題があって倒産するケースのひとつとして、成功体験にとらわれて変化に対応できないということが挙げられる。重要なのは新技術を世に出しつつ新市場の可能性を「学習」する姿勢だ。
・マネジメントに問題があって倒産するケースのひとつとして、組織として機能不全に陥っていることが挙げられる。大勝負の決断をするときには、組織内部の意思疎通が十分できているかを確認することが大切である。



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