レビュー
埼玉県川口市にある芝園団地。要約者はここからそう遠くない場所で生まれ育った。
芝園団地は現在、外国人住民が過半数を占める。その特徴からテレビでも取り上げられ、そこで行われている交流活動も注目を集めている。中国人住民が多い場所であることは、要約者も幼い頃から知っていた。団地住まいの中国人の子どもたちにも知り合いがいたし、父に連れられて入った敷地内の雰囲気も覚えている。数年前に足を踏み入れてみたら、いつのまにか中国・韓国系食料品店ができていて、いつも都内で買っていたものが近場で手に入ると喜んだこともあった。とはいえ団地外の人間からすると、その内実はなかなかうかがい知れないものだ。
本書は、実際に芝園団地に引っ越した著者・大島隆氏が、その内情を主観と客観を織り交ぜながら綴った体験記である。芝園団地の現実は、想像以上に「濃い」。そこには日本人と外国人だけでなく、古参と新参、高齢者と若年層などの二項対立からなる世界がある。そして交わりにくい両者の架け橋となるべく奔走する、大島氏を含む人々がいる。
1本の道路を挟んだ向こう側に自分の知らない世界があるとは、まさにこのことだ。
本書の要点
・埼玉県川口市にある芝園団地は、住民の過半数が外国人だ。その多くは中国人であり、団地内は小さなチャイナタウンの様相を呈している。
・同じ団地内に住みながらも、意識的に交流を持たなければ、日本人住民と外国人住民が交わる機会は少ない。両者間には「見えない壁」が存在しているようだ。
・移民受け入れには、多数派に痛みが伴う。その痛みを乗り越えるには、双方向からの働き方が必須である。
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