レビュー
本書は、「ディープメディスン」というコンセプトで、AI(人工知能)と医療のありたい未来の姿を描く。
ディープメディスン(深遠なる医療)はいくつかの要素からなるが、コアとなるのは、「患者と臨床医の間の、心の底からのディープな共感とつながり」である。
とはいえ、実際にAIへという順番が応用されているのはまだ医療の一部にとどまる。対象範囲を限定すれば抜群の精度と速度を達成するアルゴリズムであるが、人の体と病気はとんでもなく複雑である。医療制度というシステムも同様だ。本書は、そうした現状を冷静に、そしてていねいに描き出す。それができるのは、著者が現役の医師であり、AIをユーザーの立場から見ているからだろう。手段と目的という分け方をすれば、常に医療という目的から論考が進められている。技術用語や歴史も過不足なくまとめられており、AIについての一般的な知識は、本書のもので十分であろう。要約では省いたが、紹介されている多くの臨床ケースも理解を促進してくれる。
加えて、本書は今日の医療の現状が包括的に記述されており、現場の息吹もリアルに伝えてくれている。
本書の要点
・AIがもたらすディープメディスンは、個々の人間のディープな(細部にわたる)データ、ディープラーニング、患者と臨床医のディープな共感とつながりの、3つのディープからなる。
・新しい技術は、これまでデジタル化と民主化を医療にもたらしてきた。ディープラーニングはそれに続くものである。
・医学や個々の患者についてのデータはアルゴリズムに任せ、医師は患者と豊かな人間関係を築くこと、苦しみにしっかり目を向け、それを緩和することが主な仕事になるだろう。
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