レビュー

本書には、ビズリーチの創業者南壮一郎氏本人をはじめ、楽天の三木谷浩史氏など多くの関係者が登場し、南氏やビズリーチに様々な角度から光が当てられている。その描写は極めて詳細にわたり、登場人物の多さもさることながら、各人への取材がいかに膨大且つ緻密だったかを物語っている。


サブタイトルにあるビズリーチの「挫折」「奮闘」「成長」の「軌跡」が手に取るように伝わってくる良書だ。またその取材の綿密さゆえに、軌跡にとどまらず、南氏や同社がどのような成長戦略を描いているかもうかがえ、その将来像は大変期待が持てる。あとがきにおいて、「取材をすべて調整してくれたビジョナル」に対する著者の感謝が綴られているが、その苦労が報われるであろう労作と言える。
ビズリーチ創業に向け、南氏が「とことんやってやる」とファミリーレストランのドリンクバーでコーラを補充しながら誓う場面など、南氏や関係者の発言、一挙手一投足が、無駄なく、要所要所で効果的にちりばめられている印象で、大変に読み応えがあった。
本書は8章から構成されるが、それぞれ起承転結がはっきりとしていて、ドラマチックな展開につい引き込まれてしまう。難局に直面するたび、南氏がどのように考え、乗り越えてきたか、周囲はどのように振る舞ったか、ノンフィクションでありながら、経済小説さながらの臨場感あふれる筆致だ。
志ある一個人が起業して上場に至るまでのストーリーは、起業家精神のある人はもちろん、多くのビジネスパーソンに響くはずだ。

本書の要点

・2021年4月、ビズリーチなどを展開するビジョナルが東証マザーズに上場した。創業者南壮一郎が起業を思い立った原点は、東北楽天イーグルスの立ち上げに携わった経験にある。
・楽天を退職後、南は多くのヘッドハンターと会う中で従来の転職市場に違和感を抱き、ビズリーチの事業構想を思いつく。人材に恵まれ、テレビCMも奏功して成長を遂げた。
・2020年、ビズリーチは社名をビジョナルに変え、グループ経営体制へと移行した。

新事業に挑戦し、問い続け、学び続けることでさらなる成長を目指す。



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