レビュー
人生100年時代を迎え、日本でも学び直し、リカレント教育という言葉が話題になってきている。だが、実際に、社会人として働きながら大学に通っている人や、日々何かしらの勉強を行っている人は、そこまで多数派ではない。
ビジネスパーソンは、義務教育で受ける教育時間のおよそ5倍もの時間を「職場」での仕事に費やす。しかし、著者は、企業組織を扱う経営学と、学習の問題を扱う教育学の間にぽっかりと空いた学問分野が存在していることを危惧していた。そこで「職場における人々の学習」にアプローチすることを試みる。本書では、経験論でしか語られてこなかった職場の学習に影響を与える要因を、多くのサンプリングデータと詳細な分析によって解明していく。2010年に出版された作品の新装版であるが、その内容は色あせないどころか、アンラーニング(学びほぐし)が重要とされる今こそ真価を発揮する内容だ。
学習や成長の単位は、あくまでも「個」である。この「個」を認め、「独立した個として人とつながること」の重要性を説く著者の主張は、今もその力強さを失ってはいない。組織のリーダーはもちろん、職場を学習の場から遠くに位置づけていた方にぜひお読みいただきたい一冊だ。人材育成、社内コミュニケーションのあり方を問い直されるにちがいない。
本書の要点
・職場で受けられる支援は、精神支援・業務支援・内省支援の3つに分類できる。「職場における他者とのつがなり」を回復させることで、職場のさまざまな人から支援を受け、能力を向上させられる。
・職場内の立場によって効果的な支援は異なる。職場における人材育成は、職場の人々が分散して担い、ネットワークとして取り組むほうが効果的である。
・職場における「互酬性規範」を高める試みがなされれば、「内省支援」が進む可能性がある。
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