レビュー

経済学は難解だ。専門に学んだ人でもなければ、マルクスやケインズ、フリードマンといった名だたる経済学者の著書を読み解き、その真髄をつかむという「苦行」に挑んだ人は少ないだろう。

多くの人は教科書や解説書を読んで「労働力商品」「有効需要」「貨幣の中立性」といったキーワードを覚えて理解した気分になっているのではないだろうか。
本書は「お金のむこうに人がいる」というタイトルどおり、お金のむこうにいる、「働いて誰かを幸せにしている人」を中心に経済を読み解いている。すると、途端に経済はシンプルに考えられるようになるのだ。専門用語も予備知識も必要ない。それなのに、これまでピンと来なかったような経済の仕組みがすっと理解できる。著者のやさしい言葉づかいと、ユニークなたとえ話に導かれていくと、不思議と自分の頭で経済について考えられるようになってくる。
著者が提唱するのは、「お金中心の経済学」から「人中心の経済学」への転換だ。すべてのモノは「原価0円の天然資源」と「労働力」からつくられる。いくら紙幣を刷っても労働力不足やモノ不足は解消しない。経済をつきつめて考えると、「人」に行きつくのだという。著者のように、経済の目的が人を幸せにすることだと考えるのであれば、大事なのは「お金のむこう」にいる人だ。私たちはともに助け合って生きている。
単なる方便ではなく、そのことを実感させてくれる本書は、経済に苦手意識を持っている人にこそ読んでいただきたい一冊だ。

本書の要点

・お金を払えば、他の人に働いてもらえる。しかしコミュニケーションをお金に任せると、徐々に人が見えなくなってしまう。お金のむこうに人がいて、誰かを幸せにするために働いている。
・「お金には価値がある」というのは正確な言葉ではない。円貨幣が日本で普及し始めたのは、円貨幣で税金を納めないといけなくなったからだ。そのシステムにより、公務員などのみんなのために働く人が存在する。
・お金のむこうで誰かを幸せにするために働いている人がいることを思い出すと、経済をシンプルに理解することができる。



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