レビュー

読書を嗜む人であれば、静かな書斎に籠もり、一日中書物と向き合って思索を深め、文章をしたためるような生活に憧れを抱くだろう。「知的生活」という言葉からは、そのようなイメージが湧き上がる。

しかし、日々の生活に追われ、目まぐるしい変化への対応に急き立てられる現代社会では、なかなかそのような静かな生活を送るのは難しいと感じられるかもしれない。
本書の著者は、19世紀イギリスでその名をよく知られた文筆家である。時代背景が異なるため、本書で提示されるような「知的生活」も、現代では難しい優雅なものと思われることだろう。しかし、実践的な考え方や習慣の身につけ方が指南されている本書の記述は、今でも古びていない。例えば、本書は「知的生活」を論じる本なのに、まず身体の健康維持のための睡眠や食事、運動の大切さが主張されている。経験的な知見に基づくそれらの記述は、現代の科学的な知見に基づく知識に通ずる内容だ。「知的生活」とは、態度や価値観の問題だけでなく、実践的な問題でもあるのだ。他にも、時間の作り方や本の読み方、勉強の習慣づけの方法など、現代でも応用できるものがたくさんある。
カントやゲーテなど、過去の偉人のエピソードなども豊富に紹介されている。本書を読むこと自体も、教養を身につけるための一つの里程標となるだろう。

本書の要点

・知的生活の真髄は、科学的であるとか、表現方法が完璧かとかではなく、常に程度の低い思考より高度な思考のほうを採ることにある。このような態度は、必ずしも知識量の多さに比例しない。


・知的生活のためには、睡眠や食事に気を配った規則正しい生活習慣や、適度な運動で身体を動かすこと、休暇や娯楽で精神を休めることが必要である。
・忙しい日々の中でも、自分にとって本当に必要な研究対象や本を取捨選択し、毎日2時間、規則正しく読書に集中することが、知的生活のために必要な時間活用術である。



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